繋がらぬ電話。 届かぬメール。
自身の状況すら伝える事を許されず、 途方に暮れる。
次々に届くメール。 次々にかかる電話。
友人や親類からの便りは在れど、 貴女の声は無い。
焦りと共に、 貴女が錯乱してやしないか、 不安感も高まる。
何度も何度も接続を試みて。
「無事です。」
僅か五文字の文を、 漸く貴女の元に届けた時。
俺の周囲で起きた物事を、 貴女は頭の片隅にも置いていなかった。
貴女から、 貴女の家から、 俺の携帯に電話しろと指示して。
現状を把握して、 少しでも可能性の高い方法を、 貴女に指示して。
「地震大丈夫だったの?」 「無事だよ。」
「揺れなかった?」 「揺れた。」
「大きかったよね。」 「荷物は全部崩れ落ちた。」
やっとの想いで、 貴女の声と束の間の安心感と幸せを、 手に入れたけれど。
其処まで俺は、 貴女を想う必要もなかったのか。
崩れ散乱した荷物の山を、 片付けながら。
漠然と浮かび来る寂寥感を、 どうしても消せない。 |