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■ バー「じたんだ」
叔母の友達のバーは、まだあるそうだ。
店の奥行きは狭く、ドラマのセットのように書き割りで、ママはもと宝石の加工の仕事をしていた。
貯めた金で女独りこの先、生きていくためにバーを開いた。
かの女の店に行ったことを思い出した。
かの女は、腕組みをしてタバコをくゆらせていた。
隣に夫が座っていたが、夫は私との会話よりは、普段会うことがないここで出会った人とばかり話し、私の横をつまらない勢いの風が吹いていた。
隣にちょっと若い洒落た服装の男2名がひさしぶり、元気だったか?おう、元気だよというペースで会話をはじめていた。
手持ち無沙汰な私は、男たちの会話の中に割って入ろうと話のとっかかりのタイミングをうかかがった。
ママが突然「わたし、子宮筋腫があるの。手術しなくちゃいけないの」と言った。
そういえば叔母がそんなようなことを言っていたことを思い出した。
妊娠、出産経験のない女は、身体に溜まったものを出すことができないので、ソフトボール大くらいの塊になってしまう場合もあるそうだと。
頭の中を手術、ソフトボール大の血色の糸球のイメージがかき乱し、目の前の発泡がゆるく上っていくビールの金色の奥に不安げなママの顔を見た。
どことなく子宮をかばう意味なのか横腹に手を置き話すママ。
でも子宮は全然違う部位にあって、ママは2本目のタバコに火をつける。
私は、気になるドイツのバンドのことを隣の若い男たちに聞いた。するとあっさり、もう解散したよと言われた。
ママのほかにタバコを吸い始めた客の煙りに視界がさえぎられはじめたので夫に肘で合図をして店を出た。
2013年10月05日(土)
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