かたほうだけのパンプス
敦子



 「セプテンバー」

9月、ラジオで何回かかったのだろう?
アース・ウインド・アンド・ファイヤーの「セプテンバー」

この曲は、9月の定番ソングのようだが、
詩の内容は、今は12月で9月に想いをはせたという意味合いの曲らしい。

なーんだ。意味がみえてくるとなんかしらけてしまう。

何も知らずに考えずに聴いていたときは、肌とか、空気とか、雨音とかが9月の気分に一瞬に変わったようで魔法みたいなおかしさがあった。

けれどもう知ってしまったことで気分ではなく理屈の領域でこの曲を感じることのつまらなさ。


2013年10月06日(日)



 バー「じたんだ」

叔母の友達のバーは、まだあるそうだ。

店の奥行きは狭く、ドラマのセットのように書き割りで、ママはもと宝石の加工の仕事をしていた。

貯めた金で女独りこの先、生きていくためにバーを開いた。

かの女の店に行ったことを思い出した。

かの女は、腕組みをしてタバコをくゆらせていた。

隣に夫が座っていたが、夫は私との会話よりは、普段会うことがないここで出会った人とばかり話し、私の横をつまらない勢いの風が吹いていた。

隣にちょっと若い洒落た服装の男2名がひさしぶり、元気だったか?おう、元気だよというペースで会話をはじめていた。

手持ち無沙汰な私は、男たちの会話の中に割って入ろうと話のとっかかりのタイミングをうかかがった。

ママが突然「わたし、子宮筋腫があるの。手術しなくちゃいけないの」と言った。

そういえば叔母がそんなようなことを言っていたことを思い出した。

妊娠、出産経験のない女は、身体に溜まったものを出すことができないので、ソフトボール大くらいの塊になってしまう場合もあるそうだと。

頭の中を手術、ソフトボール大の血色の糸球のイメージがかき乱し、目の前の発泡がゆるく上っていくビールの金色の奥に不安げなママの顔を見た。

どことなく子宮をかばう意味なのか横腹に手を置き話すママ。

でも子宮は全然違う部位にあって、ママは2本目のタバコに火をつける。

私は、気になるドイツのバンドのことを隣の若い男たちに聞いた。するとあっさり、もう解散したよと言われた。

ママのほかにタバコを吸い始めた客の煙りに視界がさえぎられはじめたので夫に肘で合図をして店を出た。


2013年10月05日(土)



 婦人科検診

今までのとは変えた、彼女らにとっては斬新な、私たち民間慣れした者にとっては、冴えない順番待ちの設定に嫌気がさした市の婦人科検診。に出掛けた。

あまり乗り気でなかったが昨年、ガンではないが専門医受診をススメられたので、去年のこともあり経過も気になっていたので行ったさ。

去年は「これは、子宮頸がん検診なので、病院行ってー」とその場ではそれだけ言われ不安だけを持ち帰った。

その後間を空けずに婦人科を受診した。
「出血多いとか、貧血とかないんでしょ。なら、大丈夫、大丈夫」と言われ
追い出される勢いだった。

そういういきさつを問診の順番が回ってきたときに告げた。

「わかりやすく書いてあるわー」と市の
保健婦スタッフは言うとティッシュや検診を促すパンフレットをたんまり持たせられ問診は次の人に番がまわる。

わかったのは、人は自分の状況説明が相手になかなかうまく伝えきれないということ。

特に女性は「痛いのー」とか「変なの」とか感覚を単純で稚拙な語の羅列で済まして、相手からの慈しみを求めるのだ。

小さな子供ならそうかもしれない。でも成人している、ましてや婦人科検診に来ているようなアダルトなら、自分をうまく相手に伝えられなければらちがあかないかもしれない。

受診は1分で、待つのは1時間半待ち。
待つために行ったみたいで終わった後、何だったのだろうという虚無感。
秋の乾いた空気とぼとっと落ちている花がレクイエムみたいな道を通って帰宅。

この道通るんじゃなかった。落ちている花、椿かなー?
椿って咲くのはいつ?今の時期か不明?と思うとどっと疲れが増した。

帰ってからの時間は何かをするには中途半端な時間量で結局ろくにナニもしない時間消費に時間と労を費やした。
はー、疲れなかった。良かったじゃない、それで。


2013年10月02日(水)



 群馬でひとり生きるのは(掌編小説)

おんなが独りで生き続けるのはたへんなことよ。

あのコの考えていることは不幸なことなのよ。

あのコって、玉村町子のことよ。

伊勢崎君のことを振り切って高崎君に猛アタックをしているのよ。

だけど高崎君は、玉村町子だけを無視して、群馬町子や新町子や箕郷町子や

倉渕町子、榛名町子たち、多野郡家からの養子縁組みを相次いでやったのよ。

玉村町子は、食い下がったけどだめだったのよ。

今もあのコは、思いをあきらめられなくて

「実現させよう!高崎市合併を」

っていう立て看を虚しく立てつづけているのよ。

それは、愛よ。

伊勢崎君は、言ったのよ

「君のことを全面的に受け入れるよ。

君が過去にあいつ(高崎市)に熱だったとことなんて

気にしないさ、僕はそれでも君を守るよ!」

でも玉村町子は、伊勢崎君のことを振ったのよ。

そんなことないさ、あっ、突然語り手変わりました。

俺、玉村町子に振られた伊勢崎です。

結局、境町子も俺もガキいたから、

平成の合同結婚式(平成の大合併)のとき、

入籍したんすよ。

えっ、玉村町子のことですか。

そりゃあ惚れていましたよ。

女子大(県立女子大)も持ってるし、

ヘリポートとか持ってるしねー。魅力ありましたよ。

でも、いーんすよ、今んとこ境町子と暮らして

あ、実は子供たちは、お互い連れ子いるんですよ。

俺の長男「伊勢崎東男」っていうんですけど

境町子は、「境女子」って子を連れてきたんですけど

昨今の事情で子供部屋を共同で使えって言って

男の子と女の子ですが一部屋しか与えなかったんですよ。

でもなかよくあの子たちは新しい「伊勢崎」って

苗字を素直に名乗ってくれていますよ。

結婚って理屈じゃありませんよ。

最初のうちはね、どうなるか検討つきませんでしたよ。

子供たちは個性強いですし、東村子との愛人関係もずるずると

結局一緒に暮らすことになりましたし、赤堀子とは、昔からの

関係もありまして、商工会議所なんかも

面倒みてやっていましてね、大所帯で生活スタートさせたんですよ。

玉村町子のことは、もう言わんでください。やっと忘れたんですから。

いや、ローカルFMラジオの関係でたまに顔つきあわすこともありますけど

でも、お互い大人ですから。

えらいわね、玉村町子とのことをそういう風に。

大人の恋愛っていろいろあるじゃない、川場村子が遠距離恋愛しているの

それは愛人関係なのよ。

東京都家の23人男兄弟のお坊ちゃんの世田谷区男よ。

世田谷区男は、山梨県家の河口子(湖)ともつきあっているし

神奈川県家の三浦ともつきあっているのよ。

三浦って市だから男なのよ。えっ、じゃあ世田谷区男って

バイなの?知らないわー。

23人兄弟で全員、生涯未婚って決まっている一族よ。

八王子男や多摩男や日野男や兄貴たちはみんなちゃんと

所帯をもったのに。

東京都家のよその家のことはいいのよ。

太田市男は、新田町子と結婚したじゃない。

やっぱり責任感じたのかしら。

ううん、好きだったのよ。

広いでしょ工場や商業地誘致で法人税財産持っていたし、

豊満な肉体農地があって、男性は好きじゃないのよ。

でもさ、どうするのかしら?

嬬恋子とか草津町子、長野原町子、中之条町子、高山村子とか

東吾妻町子さんたちは生涯独身で終わるのかしら?

婚活すれば?

それこそ東京都家の23人兄弟なんかと。

だめよ、所詮結婚しないオラオラ系の奴なんて。

場合によっては新潟県家に嫁にいくことだって考えられるわよ。

そういえば知ってたー?

伊勢崎君て、本庄市男とも深谷市男とも複雑な関係だったてっ。

親の関係で。昔の台風の関係で、利根川がたいへんなことになって。

そういえばみどり市男、桐生市男とも複雑な関係になっているのよ。

みどりは、最近ここ10年くらいかな、結婚したのは。

二人で暮らしたいって(2人じゃなかったと思うけど)。

で、結局、玉村町子だけがひとりぼっちなわけね。


2013年10月01日(火)
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