永遠の1/2
まりあ



 【月の裏側】逢瀬5

彼と実際に逢った時間は2時間くらいだった
外に出てしまえば、少し離れて・・・
駅へ向かう
遠くに離れるために


時刻表を見て、待ち時間を紛らすために
自販機でジュースを買って
ちょっと広い外で話す

外で話すのが彼らしくって

川でも海でも滝でも山でも
何にもせずぼーっと見ていられるって言ってた彼は
街に住んでいるけれど、きっと「自然体」で生きる事を
よく知ってる人

気負いもなく、すっと力を抜いて生きてる
それが人からは、ふざけて見えたりするけれど・・・
私は、何より彼のそんな所が好き


音もなく時間が来る
シンデレラじゃないけれど
私は現実に戻る為、新幹線に乗る

改札抜けて
何度も振り返りながら
見送りはしないで貰った
もしも泣いても嫌だし、それを最後の別れにしたくない


ホームについて、新幹線が入ってくるまでの間
一瞬に過ぎていった時間を思い出す

ふと、さっき外で話したのはどこだったんだろう?
と思い、周りを見渡す
真下に在来線が交差してるのに気づく

在来線のホームに手を振る人

彼がそこにいた

とっさに携帯をかける
ざわめく駅の騒音が、携帯の向こうから少し遅れて聞こえてくる

「気がついた?」
「びっくりした!」
「なんかドラマみたいだね」

別れが寂しいと思うはずなのに
笑いながら話せる
神様が全部準備してくれたみたいに
今も4年近く経つのに、綺麗に思い返せる


ベルがけたたましくなり
彼の立つホームに電車が流れ込んできた
「じゃあ、またね」
と携帯を切る

電車が去った後は、もう彼はいない
電車は彼を乗せて、彼の現実に帰っていった



それが

私と彼が 一緒に過ごした 唯一の現実の時間のお話






↑エンピツ投票ボタン
My追加





2005年03月04日(金)
初日 最新 目次 MAIL


My追加
エンピツ