無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年05月16日(月) 世界で一番の石野真子!/舞台『Shuffle(シャッフル)』

 昨日の日記の訂正。つか追加説明。『仮面ライダー響鬼』のヒビキたち鬼の本名、もう番組中に出てたんですね。複数の方から指摘を頂いたのですが、結構番組丹念に見てたつもりだけど、ちーとも気が付きませんでした。
 響鬼→日高仁志
 威吹鬼→和泉伊織
 裁鬼→佐伯 栄
 弾鬼→段田大輔
 これに轟鬼の戸田山登己蔵が加わるわけか。全員イニシャルが一致してるってのはちょっと出来過ぎ。鬼になるにはそういう「コトダマ」が必要ってな条件でもあるのかね? けどそうなると斬鬼が初め「今日からお前が斬鬼だ」って戸田山に言ったのは冗談だったのか、とか、天美あきらは将来イニシャルAの男と結婚しないと鬼になれないのかとか、疑問がいろいろ湧いてくるんだけど。いやまあちょっとした脚本家の遊びなんだろうけどね。だからこれで安達明日夢が即、鬼になる資格あり、と断定するのはまだ早かろうと思うのである。
 こんなふうに日記を書いてすぐに反応があるというのは嬉しいことなのだけれど、こうなると更新遅らせられないなあと、ちょっと責任を感じてしまう。「無責任賛歌」なのに(笑)。

 「腐女子批判」については劇団メンバーから文句が出るんじゃないかと内心ビクビクものだったのだけれど、まあこれまでにも何度も似たようなこと書いてるんで見逃してもらえたようである(笑)。だいたい、いくら批判されようが、「好きなもんは好き」でビクともしないんだから、ちょっとくらい罵倒したって構わねえだろ。今やマイノリティなのはオールドタイプの我々なのだ。
 お気に入りの日記さんで、「『SEED』が受けてるのは女子だけじゃないのでは」というご指摘もあったが、もちろん「男のファンがいない」なんて一言も書いちゃいない。『アニメージュ』の読者の大半が小・中学生の女子に移っちゃってるのは編集部も認めている事実であって、そのためにグランプリの票に偏りが生じていることを指摘しているだけなのに、なんか勘違いしているのである、
 総じて私の日記を読んで批判する人って、例外なく文章を読もうとしてないので、説明も反論もしようがなくて困るのだな。


 また監禁事件ですと。
 もう詳述する気も起こらないが、今度は奈良での事件。またもや出会い系サイトで知り合った女子高生(17歳)を誘い出して、手錠を掛けるなどして22日間自宅で監禁した露天商手伝いの川本隆之容疑者(29歳)(新聞によっては「鄭隆之」とある。こっちが本名なんだろう)が逮捕された。逃げ出して交番に駆け込んだ女子高生を追いかけて、自分も交番に駆け込んで逮捕されたっていうんだから、まったくもって真性の阿呆。
 もう犯人の幼児性とか短絡思考とか既知外ぶりとか親の監督不行き届きとか、それはもういくらでも言えるんだけれども、女の子の方にもねえ、いい加減で「出会い系サイトにやって来る男に対して夢を求めるの、やめようよ」って言いたいよ。そもそも「出会い系」に来てる時点で、身の回りの女性にまるで相手にされてないか、逆に食いまくってるかのどっちかだってこと、前提として知っとかなきゃ。
 男はさあ、「出会い系」に来る女なんて、世間知らずの馬鹿女か、インランな痴女のどっちかだから、どんなに蹂躙したってかまわないと思ってるんだよ。罪悪感ないやつのところにノコノコ出かけて行くな。「脅されたから仕方なく」なんて言い訳にもならんわ。引っ掛ける方も引っ掛かる方も阿呆で、どっちもどっちと判断されたら、世間の風潮は「勝手に監禁でも何でもされとけ」ってな具合に「馬鹿な女の方が悪い」って方向に傾きかねないぞ。


 夜、福岡市民会館で、パルコ・プロデュースの舞台『Shuffle』。
 筋の説明とか芝居の批評とか、そういうの全部抜きにして、まず、これだけは言わせてくれ。
 石野真子はいい!!!!!!!
 ……ハイ、すっきりしました。

 後藤ひろひと作・演出による、本人曰く、「『Midsummer Carol ガマ王子vsザリガニ魔人』に続く『ブレイン・トラブル・シリーズ』第二弾」なんだそうな。でも前作とはうって変わって、お涙頂戴なんかクソクラエのナンセンス・コメディに仕上がっている。
 主人公の刑事・乾利貴(伊原剛志)は、墜落事故で認知障碍を起こして目の前の相手が別人に見えてしまうようになる(相貌失認と言うそうな)。例えばAさんがBさんに、BさんがCさんに、CさんがDさんに、DさんがEさんに見えてしまうのである。せっかく怪盗団の正体を目撃したのに、果たして乾は事件を解決できるのか? 迫り来る怪盗団の魔の手にも彼は気が付くことができない……というスジ。
 この、「別の人間に見える」っての、似たようなネタを前にどこかで見たか聞いたかしたような気がするんだけど、思い出せないんだなあ。「視覚と聴覚が入れ替えられる」ってのは『虎よ!虎よ!』のネタだったけど、それじゃなくてもっとストレートに似てる作品があった気がしてならないんだけど。多分、吾妻ひでおのマンガかなんかだ。
 面白いのはもちろん乾の目の前の人物が全く「噛みあわない」言動をするシーンなのだが、そこにたどり着くまでの展開が少々もたつく。怪盗団チップス三人組(風花舞・山内圭哉・松谷賢示)の登場シーンなど、恐らくはわざとアドリブで場つなぎをさせてるようなのだが、これがあまり面白くない。繰り返しのギャグがしつこすぎて、笑えないのだ(でもほかの地方の公演では面白かったのかもしれないが)。
 けれど、警察医の賽野目(鹿内孝)から、相貌失認であることを知らされてから、物語はどんどん転がり始める。上司の剣女史(平田敦子)が同僚の梶野(三上市朗)に見えてしまい、鼻をつまんでどやされるくらいは序の口で、チビ・メガネ・ブス・博多の田舎者(笑)と三拍子揃った警備員の三つ葉幸子(奥菜恵)が、20年来の大ファンである石野真子に見えてしまうに至っては、実態と外見のギャップに引き裂かれて乾は身もだえする。
 それにしても、アイドルは星の数ほどあれど、石野真子に白羽の矢を立てた後藤ひろひとさんのセンスの良さよ! うん、これは「今のアイドル」には絶対こなせない役だ。それどころか、かつての同年代のアイドルたち、大場久美子や榊原郁恵にもムリな役だ。彼女たちでは庶民的に過ぎる。どこか現実との距離を感じさせるあのキャンディー・ボイス、彼氏を狼だの首領(ドン)だのジュリー(沢田研二)だのに見立てる“いったい君はナニモノだ”という石野真子だからこそ、「幻想ヒロイン」が演じられるのである。今のアイドルでギリギリ石野真子に近いスタンスで売られているのは小倉優子かとも思うが、石野真子はあんなただの馬鹿ではない。石野真子の前に石野真子はなく、石野真子の後に石野真子はないのである。後藤さん、あんたはエライ!(←小松政夫風)
 石野真子の話ばかりしてもなんなので、ほかの役者さんについて。タイトルロールの乾“シャッフル”刑事を演じる伊原剛志、石野真子の皮をかぶった(アイドル衣装がまだ似合う脅威!)奥菜“ドブス”恵を前にして「近づきたいけど近づきたくなくてでも近づきたいような」ってクネクネする演技、がやたら可笑しい。長身の伊原さんが演じているだけに、『オズの魔法使』のカカシを彷彿とさせるのである。しかも、乾の脳内シャッフル、“一度だけではない”のだ。奥菜恵は博多弁を喋っているのだが(長浜ラーメンの兄ちゃんに特訓受けたそうである)、これが石野真子の口に“移って”流暢に流れて来ると、もうかわいらしいったらないのよ! 奥菜恵ももちろんかわいいんだけど、石野真子はもっと……いかん、また石野真子に話が戻ってしまった(笑)。
 今回、「美女ヒロイン」が、奥菜恵、風花舞、澤田郁子、そして石野真子と四人もいるのだが、この四人に揃いも揃って「チンピラ情報屋」を演じさせるセンスというのがすばらしく楽しい悪ふざけである。さらには、申し訳ないが美女の系列からは外れてしまう(失礼)平田敦子は、もう絶品としかいいようのない「山内圭哉のマネ」を披露してくれる。……って、平田敦子と山内圭哉を知らないとこれがどれだけものすごいか、コトバじゃ全然わかんないねえ(超オデブな女性がつるっぱげの関西ヤクザを演じていると思ってください)。
 女優陣はそれぞれ実に個性的なのだが、やはり三つ葉幸子を演じている奥菜恵が「新境地」と言ってもいい、いかにも後藤ひろひと脚本らしい「変身ヒロイン」を演じている。
 奥菜恵はこれまで『弟切草』と言い『呪音』と言い、誰が演じても構わないような役どころばかりで損をしていたと思うが、伊原剛志との見た目40センチは慎重差があるんじゃないかというコントラスト、そのチビっぷり(多分150センチそこそこだ)が際立って、まるで「地下鉄のザジ」のように溌剌でかわいらしく見える。しかもそのかわいらしさは「ブスメイク」ゆえなのだ。もちろん物語の途中でブスメイクを落として素顔の「美女」になるシーンはあるのだが、後藤ひろひとの慧眼は、この子は「ブスにした方がかわいい」という点に気づいたことである。整った美人って、かえってキャラとしては立てにくいんだよね。美女になるのは一瞬で、ホントにほぼ全編、ブスメイクのままってのが素晴らしい。
 そして、やっぱり最後に言わせてほしい「幻想ヒロイン石野真子」を演じた石野真子。もう最強である。ラストはついに「生石野真子」として『ハートで勝負』を熱唱。青春の若き日、朝目覚めれば真子のことを思い、昼飯を食いながら真子のことを慕い、夜の夢に真子を見ることを願い毎日を過ごしていたころの憧れが再び胸に込み上げてくる。……そうだよ、隣の女房そっちのけで手拍子打ってたの、俺だよ。もちろん石野真子のたどってきた人生のアレやコレやを思いながら泣いてたともさ、悪いか(向かいの県立美術館ではちょうど長渕剛展やってやがった。けっ)。
 けれど、芝居がはねて出口に向かう客は一様に「石野真子がよかった」「すごいね石野真子」「やったね石野真子」と「真子が」「真子が」と、みんなミコになったかのように(←古くて分かりにくいギャグ)石野真子をたたえていたのである。そうだよ、『BIG BIZ』がシナトラを称えるための舞台だったとすれば、これは石野真子至上主義を高らかに宣言した舞台なのだ。ちょっとくらいダレ場があったって、真子がその全てをカバーして余りある感激と興奮と陶酔とを味合わせてくれたのだ。これほどの至福、これほどの福音、またとあろうか。
 DVD絶対に出せよ、パルコ。

2004年05月16日(日) 「替え歌」の方しか知らないってこと、あるよな。
2003年05月16日(金) すっ飛ばし日記/魔界な男たち
2002年05月16日(木) で・じゃ・ぶぅ/DVD『アードマン・コレクション』
2001年05月16日(水) 鳥頭の女/『文鳥様と私』2巻(今市子)



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