無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年01月06日(木) 触んなきゃできない演技指導なんてない/『金魚屋古書店』1巻(吉崎せいむ)ほか

 昨日に続いて、下痢、咳が止まらず、仕事休み。明日は何とか出勤しないとなあ。
 そんなわけで、今日もテレビ見て本読んで寝て過ごす1日だったのだけれども、感想全部書いてたらキリないので簡単に。

 昨日(つか今朝)WOWOWで再放送してた『伊東四朗一座 熱海迷宮事件』を録画して再見。前に録画してたのはアナログ放送分だったので、今回はデジタルで。何がどう変わってるのかは実はよく分かってないのだが。
 ギャグはかなり古く、それは実はあえてそうしていることなのだけれども、今の若い人が見るのにはかなりつらい部分がないだろうか。いや、ギャグの古さと言うよりは、三宅裕司のセリフ回しのヘタクソさがギャグの古さを際立たせているのである。もうかなり前から私は三宅裕司はコメディやる以前に役者の勉強した方がいいんじゃないかと思ってるんだけれども、ホントにいつまで経っても芝居が上達しない人である。伊東四朗の使い方にしても、三谷幸喜の方がはるかに上手い。

 デジタル放送に切り替えたおかげで見られるようになったテレ朝チャンネルで、『家政婦は見た2 エリート家庭の浮気の秘密 “みだれて…”』を放映。
 第1作だった『熱い空気』は松本清張原作なので、実質上のシリーズ第1作はこの『2』の方になる。市原悦子の「石崎秋子」という役名もこの第2作から(第1作のときは「河野信子」)。でもそのフォーマットはちゃんと松本清張の原作に則っていて、家政婦が覗き見た事実のウラに更にもう一つの真実があったというミステリー的どんでん返し、また、最後に覗き見の罰として手痛いしっぺ返しを家政婦が受ける結末も第1作と共通していることなので、『2』以降の作品にもちゃんと原案者としての清張さんの名前をあげとかなきゃいけないんじゃないかと思う。
 今じゃとてもやれないだろうが、働き先の中学生と石崎秋子が妖しい関係になりかけるというのは、そう言えば市原悦子って、昔は“そういう役”が多かったんだよなあと感慨深い。娘役で、初代「地球防衛少女イコちゃん」の磯崎亜紀子が出演しているのもポイント高し。って金沢碧や梶芽衣子のラブシーンよりそっちの方に目が行っちゃうってのは、昨今の世情を考えるとチトマズイか(^_^;)。

 夜はWOWOWの蜷川幸雄特週で、『魔性の夏』と『嗤う伊右衛門』の2本。
 舞台の蜷川さんの、その場の空気を凍らせるような演出も、映像だとそこまでは行かない。そこそこ出来がいいだけに、「この程度の作品で蜷川幸雄を評価してもらっちゃ困る」との思いがどうしてもしてしまうのである。総じて舞台演出家の映像作品は、舞台と比べると数段落ちるものになってしまっているが、蜷川さんはもっとすごいものを作れるはずだから、せめてもう1、2本は映画を作ってほしいと思ってるんだけれども。


 マンガ、吉崎せいむ『金魚屋古書店』1巻。
 第1巻だけれども、『金魚屋古書店出納帳』シリーズ2巻の続編。実在のマンガを題材にして、マンガへの熱い思いを語るこのシリーズ、好きは好きなんだけれども、「今の若い人はここに紹介してるマンガの殆どを知らないんだろうなあ」と思うと寂しくもなるのである。『ビリー・パック』などは私が生まれる前のマンガだが、それでも復刻や雑誌掲載などで一部を読んだことはあるし、我々の世代までの人間の多くが過去の作品だって渉猟することに何の苦労も感じてなかったんだが。
 つかねえ、このマンガで紹介してるマンガって、「知る人ぞ知る」ようなマニアックなものじゃなくて、60年代〜80年代に生きてた一般人なら誰でも読んでたような超有名なマンガばかりで、オタク臭いのは殆どないんだから、今の人だって、少しは昔のマンガに目を向けてもらいたいと思うのだが。21世紀に入って、『Dr.スランプ』を読んだことがない若い人がゴマンといるって事実がもう悲しくて仕方がないのである。
 特におススメなのは、『お江戸でござる』の杉浦日向子女史による『百日紅』。画狂老人葛飾北斎と、その娘お栄の日常を描いた、表面上は静かな、しかしその内面は愛憎渦巻いているトンデモない傑作。マンガ家志望の人なら、一度は読んでおくべきマンガである。

 マンガ、駒井悠『そんな奴ぁいねえ!』10巻。しげが惰性で買ってるマンガなんで特に感想はなし。キャラクターの区別がつきにくい4コマは見ててツライ。



 アメリカの映画TV情報サイト“Zap2it”が、先月31日、2004年のベスト映画とワースト映画を発表している。以下はそのリストだけれど、これもやはり日本人の感覚とはかなり差異があるのであった。

Zap2it's Best of 2004 List
1. "Phantom of the Opera" 『オペラ座の怪人』
2. "Kinsey"
3. "Finding Neverland"『ネバーランド』
4. "Motorcycle Diaries" 『モーターサイクル・ダイアリーズ』
5. "Eternal Sunshine of the Spotless Mind"『エターナル・サンシャイン』
6. "Hotel Rwanda"
7. "The Merchant of Venice"『ヴェニスの商人』
8. "The Incredibles"『Mr.インクレディブル』
9. "The Aviator"『アビエイター』
10. "Alexander" 『アレキサンダー』

Zap2it's Worst of the Year List
From the most to the least offensive--
1. "Around the World in 80 Days"『80デイズ』
2. "Brown Bunny"『ブラウン・バニー』
3. "Yu-Gi-Oh!" 『遊戯王』
4. "Welcome to Mooseport"
5. "Alfie"
6. "Twentynine Palms"
7. "Laws of Attraction"
8. "Soul Plane"
9. "The Forgotten"
10. "A Love Song for Bobby Long"

 さすがにワーストには日本未公開のものが多いね。ベストも今年日本公開のものが多いから、これからが楽しみといところだろうか。
 ファン投票によるものなので、批評家賞であるゴールデングローブ賞のノミネート作品ともかなりズレがある。特に『オペラ座の怪人』などはその乖離が激しい。批評家からは散々酷評されているので、見に行くかどうか迷ってしまうのである。
 『80デイズ』がワースト、というのは、ジャッキー・チェンが主演になっていることの反発が強かったのではなかろうか。確かにどこから見ても中国人のジャッキーにフランス人のパスパルトゥーを演じさせるというのはムリがあるし、ヴェルヌの原作を無視して設定を改変、中国のシーンを大幅に増やしたことに腹を立てた人もいただろうことは予想はつくが、だからと言ってワーストに置くことはない。第一、中国でのカンフーシーンはジャッキー自身は撮影することを渋っていたのだ。ワースト評価に人種偏見の匂いを感じ取るのは穿ちすぎだろうか。


 巷のニュースに関して、最近はあまりコメントはして来なかったけれど、気になるのがいくつかあったのでコメント。
 女優志望の中学三年の女の子に、「演技指導」と偽って、ワイセツ行為をしたとして、劇団「テアトル・ド・パラード」主宰の演出家、三村創こと岩窪多摩緒と芸能プロダクション「銀の船」経営、宮沢久美子の二容疑者が逮捕された。取り調べに対して、二人はあくまで「演技の指導だった」と容疑を否認しているそうだけれども、被害者の女の子には「これからする行為は他言しない」という内容の同意書に署名させてたそうだから、公明正大に演技指導してるんだったら、そんな念書を書かせる必要はなかったはずである。だいたい、「ベッドに寝かせ、下着を脱がせて胸を触った」「足を開かせて……」なんて演技指導があってたまるか。
 私も演劇関係者のハシクレであるから、世間一般の人が「演出家とかが演技指導の名のもとに女の子のカラダに触ることって多いんじゃないか」とか誤解したらいけないということで注釈を付けさせて頂く。
 確かに、指導者が演技者の腹筋の様子を見るために、発声中の役者の腹やワキに触れるということはある。姿勢が悪ければ、肩や背中を押したりして矯正させることもないわけではない。しかし、それは練習着の上から行えることで、裸にする必要は全くない(それどころか裸にすれば触らなくても腹が動いてるかどうかは見て分かるってば)。別に指導者が触らなくても、腹筋の動きは役者自身が自分で手を当てて確認することができるものだし、たとえ初心者で自分の腹筋が動いているかどうかよく分からない場合であっても、オトコに触ってもらわなきゃならないものではないのだ。他の女性の劇団員に確認してもらえばよいことなのに、その「テアトルなんたら」には女性劇団員が一人もいなかったとでも言うのであろうか。姿勢の矯正の指示などは口頭で充分で、いわんや胸を触ったり足を開かせたり、なんて演技指導はありえない。
 ネットでもう少し情報を調べてみると、そもそもこの劇団の存在そのものがかなり胡散臭い存在であったことが分かる。結成が2003年1月とそう昔ではないのだが、第1回公演の時点で既にトラブルを起こしている。代表世話人に迎えたある女優さんと演劇に関する方向性の違いから袂を分かっているのだが、ホームページ(現在は閉鎖)上ではその女優さんが未だに劇団に所属しているかのように写真を無断で掲載し続けていたのである。どうやら「代表世話人」という肩書きもその女優さんにとっては予想外のことで、劇団の指導も2ヶ月に1回程度、発声指導をしに行っていただけで、三村容疑者ともここ一年ほどは全く音信不通の状態だったようだ。
 小さな劇団の主宰者が、劇団存続のためのハク付けとして、有名人の威を借りたくなった心情も分らないではないのだが、役者や劇団自体に実力、あるいはそれを要請しようという基盤がなければ、結局は何をどうしたところで「未来」は生まれない。客を呼ぶための努力を否定するわけではないが、自らの表現者としての意義を忘れ、劇団の存続自体を目的としてしまうのは本末転倒である。いったい「テアトルなんたら」には、演劇を通して自分たちを表現したい何があったというのだろう。劇団を隠れ蓑にワイセツ行為をしたかったただけじゃないのか。
 「芸のためなら女房も泣かす」ではないが、役者、必ずしも道徳者であるとは限らない。「浮気は芸のコヤシ」というような不道徳を賞揚する感覚を残している役者は今でも決して少なくはない。具体的な人名を挙げることは避けるが、浮気事件が発覚して、マスコミに吊るし上げられた途端に堂々と開き直ってそう主張していたアノ俳優、コノ俳優を想起していただきたいのだ。だが、果たして彼らは、本気で自分の芸を磨くためにあえて不道徳に身を置いていたのだろうか? 私にはとてもそうは思えないのだが。
 ハッキリ言うが、役者本人が道徳的な人間かそうでないか、そんなことと彼の演技とは何の関係もない。演技は役者の「想像」の産物である。極端な話、童貞の男が百戦錬磨のプレイボーイを、男漁りの女が処女を演じられなければ、それは到底「演技」として認められない。『藤十郎の恋』はヘタな役者の言い訳に過ぎないのだ。
 そんな演技の基本も分らない役者モドキが跋扈している現実を思えば、残念ながら今回の事件が氷山の一角に過ぎない可能性も否定はできない。軽いセクハラなら、あちこちの劇団で起こっているのかもしれない。弱小劇団の主宰者が「私に逆らうと役に付けないよ」なんて言って脅迫するのは何様のつもりってなもので笑止ではあるが、本当に有名な俳優から強要されたら、断われないで泣き寝入りしてしまう例はありえることなのではなかろうか。多分、そういう連中から見れば、今回の事件も「女の子に触りたきゃフーゾクでガマンしときゃよかったのに」程度の感覚で捉えられてしまっているんじゃないかと、暗澹たる気分になる。
 多くの役者が、自分の仕事をスケベエを正当化し行使するために利用しているのなら、また世間もそのように役者全体を見ているのなら、こんなに腹立たしいことはない。誓って言うが、ウチの劇団じゃこんなことは全くないぞ。女から男への逆セクハラはやたらあってるような気もするが(^_^;)。

2003年01月06日(月) 食えないモノを食う話/『名探偵コナン 揺れる警視庁1200万人の人質』/『ジャイアントロボ誕生編』(伊達憲星・冨士原昌幸)ほか
2002年01月06日(日) 言えない話と男の優しさと英語落語と/『西岸良平名作集 蜃気郎』1巻(西岸良平)ほか
2001年01月06日(土) ああ、今日は土曜か。今気づいた(^_^;)。/映画『ビッグムービー』



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