無責任賛歌
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2004年06月16日(水) |
演劇とマンガと映画と。 |
なんだか一日、「もわっ」とした日。 風も涼しいし、気温も真夏日に比べればそう高くはないのだけれど、何だか気色が悪いのである。かと言って湿度がすごく高いというわけでもない。汗がかけそうでかけない、全身の毛穴が詰まっているような、そんな気持ちの悪さだ。具合が悪いとまではいかないのだが、確実に頭痛はしてくる。同僚もみんなダルそうで、元気なのは、飼ってる亀くらいのものである。 今朝もしげは体調を崩していて、車で送ってはもらえなかったのだが、この気候のせいもあるかもしれない。クーラーをつけてないと気持ちが悪いし、つけたらつけたでしげには寒いのである。 私も夕べは熟睡できず、何度か寝ては起きを繰り返していて、朝方、頭痛と吐き気がしていたのだが、これくらいでは仕事は休めない。まあ、動いているうちに何とかなるだろうと高を括っていたが、結局、一日頭痛に悩まされた。ケイレンが起きないときは頭痛なんて、難儀なことである。
しげ、帰りはなんとか迎えに来る。帰り道にどこかに寄る元気はないので、家に直帰。晩飯は買い置きの肉でまた牛丼。けれど、昨日はあとで作ったほうが「味が落ちた」とか言われたので、今度はモヤシ以外にも千切り大根やニンジン、菜っ葉を炒めて混ぜて、昨日よりは豪華にしてみる。とりあえず山盛り飯をコメツブ一つ残さずにペロリと平らげたから、不味くはなかったのだろう。
食事を終えて、先日WOWOWで放送された舞台『カメレオンズ・リップ』を見始めたのだが、やはりかなりくたびれていたのだろう、まだ宵の口だというのに、意識がふっと遠のいて落ちてしまい、半分も見られなかった。
寝ちゃったせいで、今日読んだ本は少ない。鳥飼玖美子『歴史をかえた誤訳』に、雑誌『ダ・ヴィンチ』7月号。明日はもちょっと本を読もう。
雑誌『國文学』七月号の『演劇回廊』で、大笹吉雄さんが、新国立劇場で4月に公演されたアリエル・ドーフマン作『THE OTHER SIDE/線のむこう側』について、「画期的」と批評している。何が画期的かと言うと、この芝居、世界的に有名なチリの劇作家であるドーフマンの、既成の作品をコヤにかけたわけではなく、わざわざこの「新国立劇場」のために依頼し、演じられたピカピカの「新作」だということなのだ。 これまでにも日本人が海外で演劇公演を行った例はあるが、海外の作家に新作を書かせ、日本を演劇情報の発信地としたのは、これが初めてだとか。しかも演出は韓国のソン・ジンチェク。このインターナショナルな布陣を組んだのが芸術監督の栗山民也である。 「画期的」と言われても、役者にしてみれば、新作だろうが旧作だろうが、演じる点では変わりがない。観客だって、出会う芝居が外国の新作か本邦の旧作か、それが第一の基準になって芝居を見に行っているわけではなかろう。その「新しさ」に専ら反応するのは、ヘタすりゃ権威主義的な演劇スノッブだけ、ということにだってなりかねない。もちろん、この試みに演劇シーンの拡大という意義を見出さないわけではないが、それが一度きりで終わってしまえば結局はたいした意味はない、ということになってしまう。「国境を超える」とはどういうことなのか、戯曲、演技、演出、その一つ一つに果たして民族を越えた普遍性がありえるのか、その視点が常に意識されていないと、「やってみました」という事実しか残らない。当たり前のことだけれども、「要は中身」なのである。 ――長い戦争状態にあると某国。国境近くの小屋で、老夫婦のアトム(品川徹)とレヴァーナ(岸田今日子)は、戦死者の身元確認作業をしている。若い男の死体を見るたびに失踪した息子(千葉哲也)ではと探るレヴァーナ。そして、待ち望んだ停戦の知らせが流れるが、国境警備隊が小屋を二つに分断し新たな国境を作ると言い出して……。というのが『線の向こう側』のあらすじだ。どこの国ともしれない場所を設定したのは、この国家と人間の関係の不条理が、まさしく「どこの国でもありえること」という普遍性を持って観客に訴えかけられているからにほかならない。 ああ、そういう芝居なら、見てみたかったなあ、東京に住んでないのは悔しいなあ、と思えるのはこういう時である。求心力を持った演劇というのは、インターナショナルな面を特に喧伝せずとも、自然にそういうものになっているのではないだろうか(宣伝が不必要と言いたいわけではないので念のため)。
椎名高志さんの新作『絶対可憐チルドレン』が、週刊少年サンデー39号(8月25日発売)から、4号連続で短期集中連載が決定。 ……待たすだけ待たせておいて、短期集中? どれくらいヤキモキしつつ待たされたかというのは、椎名さんのホームページの日記を、この「半年」読み続けていたファンの方にはご理解頂けようが、ご本人が「自称漫画家の中年」と自嘲するくらい、作品載せてもらえなかったのである。……生活できてたの、『GS美神』の印税だけだったんじゃないのかなあ。 サンデーも随分「保険」をかけることだなあと思うのだけれど(どうも日記の文面から察するに、サンデーに載るかどうかも怪しかった感じである)、マンガバブルの時期はとうに過ぎて、ベテラン作家さんだろうと、確実に「売れる」ものじゃない限り、出版社は二の足を踏むものなのだろう。それくらい、「連載」の二文字はとてつもなく重いのである。
その椎名さんがプッシュしてるマンガが、田中保左奈(ほさな)作『暗号名はBF(こーどねーむはベビーフェイス)』。お話は「フツーの中学生・七海団(ななみだん)が、ひとたび世界の危機が訪れた途端、スーパースパイ“BF〜ベイビーフェイス〜”として大活躍! スパイ産出国王家の末裔である団は、SOMAという薬品を注射されると、77分7秒間だけ大人のスパイに変身できるのだ」という、「魔女ッ子もの+スパイアクション」という、「なんじゃそりゃ!?」的な組み合わせ。「注射で変身」と聞いて、手塚治虫の『ビッグX』を連想した人はもう初老(^_^;)。でも、こんなふうに話がどう転んで行くか見当がつかないマンガというのは、「化ける」可能性を秘めてるので、ちょっと期待したいのである。6月、7月と1・2巻が連続発売されるそうだけれど、初版部数が「えらく少ない」らしいので、ファンの人は予約をお忘れずに。 最近、以前ほどには少年マンガ誌の立ち読みもしなくなってきたし、どちらかと言うと青年マンガの方に興味が移っていて、少年ものには距離置くようになっちゃったかなあ、と感じていたので、こういうハジケてるマンガが出てくれると嬉しい。
フカキョン主演の映画『下妻物語』のヒットが続いている。当初は40館規模での公開予定だったものが、156館での拡大公開、公開三週目でも動員数が落ちていないという驚異的なものである。見に行ってるのはやっぱりヤンキーが多いのかなあ、つか、イマドキの若い連中はみんな半ヤンキーだからなあ。おかげで怖くて私は見に行けないのだけれども。 『ハニー』は完全に圏外に沈んじゃってるからなあ。オタクはゴタクは並べるけれども、結局は映画館に足運ばないしね。それでいて「もっと面白い作品を」とか抜かしてるんだから、客としては殆ど「ひやかし」である。だからオタクがエリート意識ふりかざしただけのスノッブになってちゃ、世間から引かれるだけだって。『CASSHERN』や『下妻』のヒットを認められないのは、頑固とか意固地を通りこして、自分自身の目の低さを露呈しているだけである。ヤンキーの方が律義って、それどうかと思うんだけど。 それどころか『下妻物語』、世界上映までほぼ決定となった。先月のカンヌ国際映画祭のフィルム・マーケットで、英語字幕版を上映したところ、アメリカ、イタリア、中国、韓国など7カ国の配給会社からオファーが舞い込んだとか。特にヨーロッパの映画関係者からは「個性あふれる衣装や美術だけでも、十分配給の価値がある」との太鼓判を押されて、スイスのロカルノ、チェコのカルロビバリ、ベルギーのフランダースなど、6つの映画祭での招待上映も決定。こうなるとまさに「破竹の勢い」という表現がピッタリしてくる。 でもねえ、見てない映画について内容はとやかく言えないんだけど、英語タイトルが『カミカゼ・ガールズ』ってのはさすがにどうかとは思いませんか(^_^;)。いやまあ、それくらい「ねらわなきゃ」ってことなんだろうけどね。
2003年06月16日(月) 書くことない日はない/『Holy Brownie ホーリープラウニー』2巻(六道神士) 2002年06月16日(日) 悪態つくのは照れ隠し/『おしのび倶楽部』(横山えいじ)ほか 2001年06月16日(土) 通産12時間睡眠/『QUIZ』下巻(浅田寅ヲ)
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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