無責任賛歌
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2004年03月06日(土) |
爺さんの見る映画とオタクの見る映画 |
しげは夕べも仕事だったので、朝から爆睡。私はと言えば、前売券を買っちゃってるので、「シネテリエ天神」まで『真実のマレーネ・ディートリッヒ』を見に行かねばならないのである。福岡では上映してるのもここだけ、しかも朝10時から1回のみの上映なんで、遅刻するわけにはいかない。『リリー・マルレーン』は私のフェイバリット・ソングの一つであるし、ディートリッヒが主演した『情婦』は、フェイバリット・ミステリ映画の一つでもあるからだ(実際に見てみたら、『情婦』への言及は全くなかった。なんでだ)。 けど、この映画館、あの悪名高き親不幸通りにあるのである(親富孝と字面を変えたが、実際に行ってみると未だに「親不幸」のカンバンがあちこちにある)。繁華街には違いないのだが、怪しい店やいかがわしい店が並んでいて、漂う空気も不穏である。映画館自体も地下に降りたところにある秘密クラブっぽい雰囲気の劇場で(当然画面サイズも学校や公民館の視聴覚教室なみである)、封切館の感じがまるでしない。そんなわけで、夕方以降は特に、ここは通りにくいったらないのである。まだ麻薬の取り引きとかやってねえだろうな(10年くらい前、この通りで学生が検挙されたことがある)。今日は朝だから、人通りも少なくていいけど。 小さいところだけれど、上映回数が少ないせいか、10人くらいはお客さんが来ている。でも見事に爺さん婆さんばかり。だいたい『モロッコ』とかに感涙した世代って、リアルタイムだったら若くても八十過ぎてるはずだものなあ。映画は『嘆きの天使』のカメリハとか、家族で海水浴に行った時のプライベートフィルムとか、秘蔵映像がいくつか見られたのはよかったけれど、全体的には『知ってるつもり』なんかを見せられている感じでした。 帰りがけ、階段ですれ違ったお婆さんが、「『マレーネ・ディートリッヒ』はもうやってないんですか」とカウンターの姉ちゃんに残念そうに喋りかけていた。時間を確かめてなかった婆ちゃんがよくないと言えばその通りなんだけど、裏の上映室かどこかで、見せてあげられないものかねえ。
映画が終わってしげに電話を入れたら、まだ寝ていた。もう昼だってのに。キャナルシティで今度は『イノセンス』を見るので待ち合わせをすることになってたのである。30分後に会うことにして、私は徒歩でキャナルに向かう。しげの足だと天神からキャナルのある住吉まで1時間弱はかかっちまうが、私の足なら20分ほどである。途中、福家書店に寄って、昨日買い損ねていたマンガなどを購入。それでも時間通りにAMCの前に着いた。 初日だから客が多いかと思ったが、2回目の上映なので(オタクは第1回に拘る)、4、50人ほど。見たところさっきの客層とは全く違って、いいトシした大人は殆どいない。学生か、若いカップルである。押井守にして、中高年からはそっぽ向かれるか。アニメの市民権はまだまだ得られてないねえ。でも、前作の『攻殻機動隊』が、中洲大洋のやっぱり視聴覚教室なみのちっちぇ映画館で、オタク鮨詰めの汗臭い中で見なきゃならなかった時に比べれば、AMCの大画面で見られるようになろうとは、状況はかなりマシになってるんである。 映画見た客の反応は「シーン」。声も出ないほど何を感じてるんだかねえ。映画の出来はって言うと、もう、押井守に駄作なしだから(^o^)。押井さんならではの、いつもと同じ実存主義的な映画を作ってるように見せて、実はいつもと違う地平を切り開いてるとこに私は戦慄すら感じたんだけど、この感覚を共有できない人とはあまり喋りたくないなあ、とまで思ってしまうのである。 半可通な映画ファンはすぐ押井さんのことを「観念を弄んでる」とか「無意味に難解」とか貶すけどさ、押井さんはこれまでだって映画で難しいことなんて一切言ってないぞ。映画のセオリー通りにキチッと作って、エンタテインメントの王道をまっしぐらに来ている(ルーカスやスピルバーグを王道なんて思っちゃわないように。あんなに構成力のないデタラメな映画造りをする人たちもいないぞ)。観念的な言説を難解と捉えるのは単に自分が何も考えてないことを露呈してるだけなんだけどね。
帰宅して、ホームページの原稿だの、いろいろ書き物。テレビやDVDもちょこちょこ見たけど、当然そんなの感想まで描く時間はないのである。でも深夜『チャンネルNECO』見てたら、横山博人監督の『眠れる美女』をやってたのみて、仰天。タイトル見てあれ? と思って、筋見てギャギャッと唸っちゃったのだが、これ、川端康成の『眠れる美女』だったのか、「大西結花が脱いだやつ」としか認識してなかった。
2003年03月06日(木) 御乱心!……って、マジなんですけど/『オタクの迷い道』(岡田斗司夫)ほか 2002年03月06日(水) 夢のビル・ゲイツ/『金田一耕助の新冒険』(横溝正史) 2001年03月06日(火) 優しい夫ごっこ/『真・無責任艦長タイラー2 奮闘編』(吉岡平)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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