無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年10月03日(金) 追加日記2/『二十面相の娘』1巻(小原愼司)ほか

 しげに誘われて、仕事帰りに箱崎の「ゆめタウン」まで。何を思い立ったか、しげが私に「抱き枕」を買ってくれると言うのである。
 しげは時々思い立ったように、こういう「プレゼント」を衝動買いするのだが、私の方は甚だ無愛想で、どんなに嬉しくても「ああ、いいねえ、これ」くらいの反応しかしない。別にトシを食ったからそうだというのではなくて、昔からそうなのである。
 「カバーはどれがいい?」としげに聞かれても、ビニールに包まれているのでは肌触りが解らないし、色合いだって好みはないので返事ができない。適当に「これがいいかな」と選ぶが、しげはいかにも「もっと喜んでくれてもいいのに」顔である。期待に答えられないのは申し訳ないが、これでも心の中ではすごく喜んでいるのである。男の照れというものをもう少し見抜いて頂きたいと思うのは期待のしすぎかもしれないが。

 そのあと、映画を見にキャナルシティに回る。開始までにはまだ時間があるので、福家書店で本を買い、スターバックスで時間を潰す。「高いわりに量が少ない」と叩かれることの多いスタバであるが、頻繁に利用しなけりゃ、ボラれる感も少ないんじゃなかろうか。スタバファンは世間に結構いるらしいけれど、ちょっとお洒落な感じがしていても、結局はチェーン店なんで、ブランド感がするほどではない。どうしてそんなにハマる人がいるのかよく分からんのである。


 映画は『28日後……』(“28 DAYS LATER”)。
 『ザ・ビーチ』のアレックス・ガーランド脚本、『トレインスポッティング』のダニー・ボイル監督によるSFパニック映画。

 ロンドン市内の病院のベッドで目覚めたジム(ギリアン・マーフィ)は、周囲に人間の影が全く見えなくなっていることに気がつく。彼は交通事故でひと月以上も昏睡状態に陥っていたのだ。フラフラと街に出たジムは、ロンドンの街全体から人の姿が消えていることに愕然とする。ジムの「ハロー!」の呼びかけに答えるのは谺だけ。
 人を求めて入りこんだ礼拝堂で、腐敗した死体の山を見てジムは驚愕するが、そこに現れた神父は、牙を剥き奇声を上げ、狂気に駆られたように彼に襲いかかってきた。間一髪でジムを助けたのは、マーク(ノア・ハントレー)とセリーナ(ナオミ・ハリス)。二人は研究所から伝染したウィルスが、人間を凶暴化したのだと説明する。
 三人はジムの生家に向かうが、彼の両親は来るべき未来を悲観して自殺していた。しかも襲いかかってきた「感染者」にマークが噛まれ、発狂する寸前にセリーナに殺されてしまう。
 落胆し、街をさ迷う二人は、高層アパートの上階で光が明滅しているのに気がつく。そこにはフランク(ブレンダン・グリーソン)とハナ(ミーガン・バーンズ)という親娘の生存者がいた。フランクは、ラジオから流れる自動録音が、マンチェスターに駐留している軍隊が「感染者」対策を発見したと繰り返していることを教える。
 四人はその放送に唯一の希望を見出し、フランクのタクシーに乗って一路マンチェスターを目指す。その先にどんな運命が待ち受けているかも知らず……。

 あまりネタバレさせるわけにはいかないけれど、これだけは突っ込んでおきたい。軍隊が放送を流してた理由が、「女を呼び寄せるため」というのはいくらなんでもトホホ過ぎるんちゃうか。セリーナはともかく、ハナなんてまだ10代前半だぞ。追いつめられた男はナニしか考えなくなるってのには説得力はあるのかもしれないけれど、ドラマのテンションは盛り下がりますがな。
 そのあたりの描写を除けば、映像もキッチリしているし、役者の演技もよく、特に欠点というものも見当たらないのだけれど、面白いという感想も浮かんで来ない。脚本家も『トリフィドの日』に影響を受けた、と語っている通り、SF作品を見慣れている眼には、アイデアがありふれていて引っかかるものがあまりないのである。取り残された集団の間で争いが起こるってパターンも、ゴールディングの『蝿の王』がトドメ刺してるしなあ。時期的に同趣の『ドラゴンヘッド』とかぶってるんで見比べてみたかったが、こちらの方はしげが全く興味を示さなかった。両作を見た人は、どんな感想を抱いたんだろうか。
 本編が終わってスタッフロールが流れたあと、「もう一つの28日後」として、第2の結末が示される。どちらでもお好きな方を、という趣向なのだろうが、これがまた二つともありふれている。40年前にこの映画を見てたら感動したかもしれないけれど、今更これはないよなあ、としか思えない。もっとも、小学校高学年くらいの子供に見せて、トラウマを持ってもらうのにはちょうどいいかもしれない。
 ミーガン・バーンズの凛とした少女らしさが本作の一番の魅力でしょうか(^_^;)。


 帰宅して、アニメ新番『巷説百物語』第1話「小豆とぎ」を見る。
 製作は『ルパン三世』のトムス・エンタテインメント。監督は『サイレントメビウス(TV版)』『ルパン三世 1$マネーウォーズ』『同 アルカトラズコネクション』の殿勝秀樹氏。期待していいのかどうか、見る前から微妙なセンだね(^_^;)。

 豪雨の中、峠を越えようとしていた考物(かんがえもの)の百介は、崖から滑り落ちそうになったところを一人の御行(おんぎょう)、又市に命を助けられる。その異形な風体に惹かれた百介は、又市のあとを追うが、更に強くなる雨足の中、その姿を見失ってしまう。
 百介は同じく道に迷っている僧、円海と連れになり、「備中屋」という看板を掲げた屋敷で雨宿りをする。そこには又市や、妖艶な女・おぎん、徳右衛門と名乗る商人が居合わせていた。徳右衛門は夜明かしのすさびにと、「備中屋」の因縁話、十年前に殺された丁稚が妖怪「小豆洗い」として化けて出る顛末を語り始めるが、百介は、話が進むに連れて円海の表情が次第に硬くなり、額にびっしりと汗が浮かび始めているのに気付いた……。

 原作は短編だけれども、まともに映像化すれば1時間はかかるものなので、30分に収めるのには到底ムリがある。しかも、原作ではあまり出番のなかった山岡百介を前面に出してきたものだから、本来の主役である円海の描写が浅くなり、ミステリーとしての要素が随分薄くなってしまったのは残念に思う。
 宮繁之氏によるキャラクターデザインは、心配していたほどに悪くはなかったが、宮野隆氏の美術がまるで江戸期の『画図百鬼夜行』などの妖怪画を彷彿とさせるほどの出来映えだったために、その上に乗せられていると、どうしても浮いて見えて、やっぱりアニメ絵だなあ、という印象を与えてしまっている。今更言っても仕方ないけれど、森野達弥さんじゃダメだったのかねえ。最初から視野に入ってなかったのか、イマドキあの水木しげる調の絵柄じゃ売れないという判断なのか、『鬼太郎』なんかとの差別化を図ったのか、そもそもアニメートする技術がトムスにはないということなのか。森野版の『巷説』アニメ版もスペシャルで一本作ってほしいと願ってるのは私だけじゃないと思う。
 又市の声は中尾隆聖氏。声作りにも力が入っていて熱演である。そのおかげでバイキンマンやフリーザを連想しこそしないのだけれど、やっぱり聞いた途端に中尾さんだとわかっちゃうのは如何ともし難い。おぎんの小林沙苗さんはまあまあってところか。


 マンガ、森永あい『山田一家ものがたり ゴージャス』(角川書店/アスカコミックスデラックス・903円)。
 超短編が五つしか収録されてない超薄型の単行本。で、なんでこの値段かって言うと、台湾でドラマ化されたDVDつきなのである。でもこのDVDの方はあまり見る気がしないんだなあ。
 マンガの方も、本編シリーズが終わって時間が随分経ってるので、誰が誰やら忘れてしまってました(^_^;)。あまり続ける意味はなかったんじゃないかって思うけどねえ。


 マンガ、小原愼司『二十面相の娘』1巻(メディアファクトリー・MFコミックス・540円)
 小原愼司って、『菫画報』の人だったんだね。気になってはいた人なんだけれど、本格的に読んだのはこれが初めて。
 正直な話、『金田一少年』やら何やら、安易な「子孫もの」には腹が立つのだけれども(『ルパン三世』だって原作ファンにしてみれば噴飯ものだろう)、これは何とちゃんと江戸川乱歩の遺族に許可を貰っているのである。実際に読んでみると、なかなか練られている。正統な続編とは言えないが、パスティーシュの一つとしては充分に好感が持てる。
 主人公は両親を無くした少女チコ。もともと怪人二十面相とは全く血の繋がりがない。遺産目当てでチコを引き取った後見人の伯父夫妻に毒殺されかけたところを、二十面相に救い出されて、そのまま二十面相の一味に加わり、「娘」を名乗るという設定。
 本当の父娘にしなかったところや、明智小五郎が“まだ”登場しないあたりは、作者が原作を心の底から好きで、尊重している姿勢が見てとれてよい。決して上手いとは言えない絵柄も、かえって物語に深みを与えているように思う。

2002年10月03日(木) 何が最悪?/アニメ『NARUTO ナルト』第1話/『愛人(あいするひと)』2巻(吉原由起)/『番外社員』(藤子不二雄A)
2001年10月03日(水) 新番2弾!/『X』第1話/『女刑事音道貴子 花散る頃の殺人』(乃南アサ)ほか
2000年10月03日(火) 博多はよか、よかァ/映画『博多ムービー ちんちろまい』ほか



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