無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年07月05日(土) 同情でもいいから少しはくれ(T∇T)/DVD『山村浩二作品集』/『沈夫人の料理人』1巻(深巳琳子)ほか

 朝っぱらと言うか、真夜中にいきなりしげ、鴉丸穣を連れて帰宅。
 私は当然寝こいていたのだが、折悪しく素っ裸であった。
 いや、風呂あがりでそのまま寝ちゃったんでそういう状態だったのである。慌てて居間から寝室に逃げ込んだのでナニを見られはせなんだが。
 鴉丸嬢、「イイ男なら『きゃあ、セクハラ♪』ですむけど、中年オヤジじゃただの痴漢だよねー」と身もフタもないことを言う。別にナニも見せとらんだろうが(-_-;)。
 「男だって、若い女の裸と、中年デブ女の裸とだったら、若い方がいいでしょ?」
 そりゃそうかもしれんが、だから私ゃワザと見せてるわけじゃないだろうが。セクハラも痴漢もしとらんぞ。

 しげがなんでまたいきなり予告もなく鴉丸嬢を連れてきたかっていうと、部屋の掃除のためなのであった。実際、部屋の中にゴミ袋が十数個溜まっていたのである。
 日頃から自分で片付けておけばいいものを、何かと言い訳ばかりしてサボっているからこんなふうに人に頼ることになるのである。一体何人の犠牲者を巻き込めば気がすむのか。たいがいでやめろと言い聞かせていたのにまた性懲りもなく同じ失敗を繰り返しているのである。
 以前、結局片付けを手伝わされたときに、「もう今後は一切、掃除は手伝わないぞ」と言明してあるので、ひと片付けできるまでは隣室で待機する。つーか、裸なんで出ていけないのだが(-_-;)。
 しげに「着替え持ってこいよ!」と言っても無視される。明らかなイヤガラセで、むかっ腹が立つ。鴉丸嬢が浴衣を見つけてきて寝室に投げこんでくれたので、ようやく着替えられて居間に出られるが、睡眠中にいきなり起こされたので、体調も芳しくない。どっちにしろ片付けを手伝える状況ではなく、しげと鴉丸嬢がゴミ袋をえっちらおっちら運んでいくのを横目で見ながらウツラウツラ。

 ようやく片付けが終わったあと、さて、鴉丸嬢を車で送って行こうか、という段になって、今度はしげが落ちる。あまり寝てないのかもしれないが、おかげで鴉丸嬢、帰るに帰れない。仕方がないので、しげが起きるまで、鴉丸嬢とホームページの原稿の話などして時間稼ぎ。
 鴉丸嬢がクトゥルーのファンだったとはつい先日まで知らなかった。もっとも彼女も『退魔針』でその存在を知った、ということだから、ラブクラフトのこともあまり知らないのである。
 だもんで、ついまた悪いクセで要らぬウンチクなどを披露したりする。
 「小説は読みにくいものもあるから、映像から入った方がいいかもしれないけど、クトゥルーの映画化って、ロクなのがなくってねえ、『ダンウィッチの怪』なんて怪物の造詣がダサイし、『ネクロノミコン』もねえ……。『インスマウスの影』なんて、主演が佐野史郎だし」
 こんな調子である。なんか、思い返すだに恥ずかしいな。
 いろいろ説明するより原典にあたってもらった方がいいよな、どこかに国書刊行会の『真・ク・リトル・リトル神話体系』が転がってたはずだがと探してみるが見つからず、『幻想文学』のバックナンバーも書庫の奥に埋まっていて取り出せない。ようやく見つけたのが創元推理文庫の『ラブクラフト全集』の5・6巻と、矢野健太郎の『邪神伝説シリーズ』(^_^;)であった。これだけでも少しは面白いかと思ってお貸しする(文庫は寄贈した)。いや、ほかにも某K女史の『魔○○○伝』というのもあったんだが、クトゥルーのファンになってもらうのにこれほど不適当なものもあるまい(^o^)。
 とりあえず5巻には『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』や『ダニッチの怪』などが収録されてるから、つまんないということはないと思う。ホントは『インスマウス』や『クトゥルフの呼び声』も読んでほしかったんだが。

 駄弁っているうちに、なぜか鴉丸嬢と「政治」の話になる。
 といっても、鴉丸嬢の疑問は「世の中のオトナって、どうして悪いことばかりするの?」という子供っぽいものである。
 ハタチを過ぎた女性がこういうことを言い出すこと自体、どうかという批判は簡単なんだが、人にはそれぞれ事情というものがある。
 単純な二項対立の中に自分を置いて自らを「善人」に規定する意識は、私の一番忌み嫌うところであるが、それなくしては自らの行動を規定しえない人もいることも事実ではあるのだ。彼女のプライバシーをここで明かすことはしないが、彼女がともすれば極めてステロタイプな「正義」にすがる傾向があるのは仕方のない面はある、ということなのである。
 「政治家がおカネ儲けばかり考えてるのっておかしいじゃない。政治家って、みんなのためにいるんだから、おカネなんて要らないって人がなるべきじゃないの?」
 「そんなやついねーよ」
 笑って否定してしまったが、鴉丸嬢のような理想主義者には、世の中というものはいつの時代でも生きにくいものだ。いや、彼女自身もそれには気づいていて、わざと悪人になろうとしている面もないではないのだが、どうしてもそうなりきれないのは、「悪を許す」心情が、彼女の場合、ヘタをすれば自我崩壊に繋がりかねない事情があるからだ。
 彼女のような子にはホントに幸せになってほしいんだけどなあ、難しいよなあ、其ノ他君がもうちょっとしっかりしてるといいんだけどなあ。


 2時間ほどしてしげが目覚めるが、起きるなり「腹が減った」。
 自分の腹具合のことより、鴉丸嬢を待たせたことの方を悪いと思わんかな、こいつは。
 鴉丸嬢を送って行くときに、「アンタも食事する?」と聞く。
 ああ、しげは忘れているのだ。今日は私の通院の日だということを。当然、尿検査、血液検査があるのだが、そのためには朝メシ抜きで行かなきゃならないのだ。夫の体調よりも自分の食欲の方が優先するやつだとはわかっちゃいたけど、どうにもやりきれない。
 文句を言ってやろうかとも思ったが、もしかしてギリギリで気がつくかもしれない、と一縷の期待をかけて、一緒に付いていく。
 もちろん、しげにそんな期待をするほうがバカなので、鴉丸嬢を送り届けたあと、ロイヤルホストに入っても、しげは脳天気に「何食べる?」と聞くのであった。
 「食べれるわけないじゃん。今日検査だし。先週から言っといたろ?」
 「……じゃあ、店出る?」
 またなんでそんな言い方をするのか。ここで一言「ごめん」と言えれば、コトはすむのだ。会話するのもイヤになって、あとは無言。


 日が昇った頃に、内科と眼科をハシゴ。イヤなハシゴである。
 病院への行きがけはしげに送ってもらったのだが、そのまましげは練習に直行するので、帰りは一人で帰るしかない。となると、両目とも点眼してしまっては前が見えなくなってしまう。だもんで、今日の検査は右目だけにしてもらうつもり。
 本当は左目の状況も確認してもらおうかと思っていたのだが、しげはやっぱり自分のことだけで頭がいっぱい、私の状況なんて何も考えちゃいない。
 こちらもいちいちしげに期待するのはムダだとわかっちゃいるので、今日は右目でこの次は左目と交代で見てもらうしかない。
 しげにそのことを告げたら、またヒステリーを起こして、「練習休んで付き添えばいいやろ!」とか言い出す。こういうのが一番迷惑なんである。血の巡りが悪くて人のコトを気遣えないのは仕方がないとしても、そのことを指摘されて逆ギレするのは最大級のバカである。こうなると「お前には何も期待しないよ」としか言えないし、顔も見たくなくなる。
 病院の近くの信号で停車した時に、無言で勝手に降りる。案の定、しげはそのまま練習に行く。だったら、最初から付き添ってやろう、なんてことを口にするものではない。腹が立つよりも、もうすっかり気が抜けてしまっている。


 内科での検査結果は相変わらず悪い。
 体重が落ちてきているおかげか、血糖値自体は少し下がっているのだが、目の状況を考えると、一気に落とし過ぎてもよくないのだそうだ。薬の効果も今一つないようならば、次回から量を増やそうかと言われる。イヤとは言えんがホントにクスリづけの生活になりそうなんだなあ。
 眼科の方も、毎週通院して瞳孔開かされて光を当てられまくるのは結構苦痛なのだが、明日、目がどうなるかわからんのだからこれも仕方がない。
 相変わらず右眼に紐はぶら下がってるままだし、何だか視界の下の方に影みたいなものが見えるときもある。主治医の話によればこの影がだんだんとせり上がってくる感じになるそうだが、さて、その進行をどれだけ食いとめられるものなのか。
 「とりあえず進行は止まっているようですね」
と医者は言うのだが、その舌先で「でももう少しレーザー治療をしておきましょう」と言う。進行が止まってるならどうして再治療の必要があるのか。
 で、また何発打たれるのかなあ、と漫然と数えてたら336発である。先週より百発多いんだけど、どうしてですか。いや、実際に聞いたりできないけど。
 しげのこともあるので、終始沈んだ調子で治療を受けていたのだが、医者はどうもそれを勘違いしたようだ。なにしろ、少しは痛みを感じてたはずなのに、私はずっと無言だったのである。特に聞きもしなかったのに、「先週の続きですから、改めてレーザーの治療費は取りません」と言う。
 いや、オカネの心配をして沈んでたんじゃないんですけど(-_-;)。
 ただ、もし請求されても唯々諾々と払ってた可能性はあるので、そう言ってもらえて安心はした。
 実際は治療後右眼の奥がズキズキ痛むので、眼帯を受付でもらう。これも無料サービスなんだけど、これくらいのことでもありがたいなあ、と感じてしまうのは、それだけしげの愛情のウスさに、心が疲れてしまっているからであろう。

 そのまま帰宅しようかとも思ったが、先週天神に行き損なっていたので、眼帯を着けたまま、ベスト電機LIMBや福家書店、ジュンク堂を回る。たまに「この人なに?」という感じで眼を逸らす人がいるが、眼帯くらいで不審人物扱いされるのはいやなものである。もっとも、素でもそんな眼で見られることがあるのはもっと業腹なんだが(~_~;)。
 福家書店のブックカバー、ずっと手塚治虫シリーズなのだが、『ブラック・ジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』に続いて、新しいのは『ぼくの孫悟空』である。黄色い地にアニメキャラの孫悟空の顔が線画でどでかく載っている。映画公開に合わせてるためだろうが、これは原作の絵柄でやってほしかったな。裏表紙が映画のポスターそのまんまなのもちょっとジャマだけど、全体的なセンスは悪くない。もうマンガの方は持ってるんだけど、このカバーをつけて全集版で揃えたいって気にはなる。映画自体は上映繰上げとかで、宣伝もロクにされてないようだけど、ヒットしますかね。
 食事もついでにしようかと、天神コアの食堂街に行ってみたら、こないだしげと食事したランチバイキングの店が潰れて普通のレストランに代わっている。って、開店してそんなに時間経ってなかったと思うけど。これだから、「いつかこの店に行こう」じゃなくて、思い立ったときに行っといた方がいいのである。


 夕方、父から電話。
 なにごとかと思ったら、「お前、網膜剥離はどげんや?(=どうなんだ)」
 実は父には眼のことは全く話していなかった。話したところで何がどうなるものでもないし、心配をかけるだけだからである。一瞬、医者が父に伝えたのかなあ、と思って(父も同じくそこに通院しているのである)聞いた。
 「なんで知っとうん?」
 「しげさんから聞いたったい」
 また、しげか(-_-;)。
 そう言えば、こないだ、しげから「父ちゃんには目のこと言わんと?」と聞かれた時に、「言わんよ」とだけ答えていたのだが、その時ハッキリと「親父には眼のことは話すなよ」と口止めしておくべきだったか。
 私が悪いのかもしれないが、普通、こんなことは言わなくてもわかってくれそうなものである。……という常識が通用しないのがしげなんだよなあ。いったいあれがどこまで馬鹿なのか、もうとても私の想像力の追い付くところではない。
 しげが私のことを心配して、父に眼のことを話したんだろう、などと好意的に考えるのは間違いである。アレにそんな気遣いをする能力はない。全くない。状況を面白がって言ったのに決まっているのだ。
 父はともかく「何で言わんやったとや」と責めたてるので、弁明にこれ努める。
 「別に隠しとらんて。治療が一応すんでから言おうと思っとったんよ。治れば別に何ちゃないやん。レーザーで剥離抑えてもらったけん、もう治っとう」
 「ああ、レーザーか、そりゃよかったたい」
 なんだかレーザーが万能であるように父は思っているようである。それで納得してくれるなら、特に問題はない。


 帰宅したしげに、「なんでオヤジに眼のこと話したとや?」と聞いたら、「だって話題がないし」と答えやがった。
 なんかもう言葉もない。
 しげを嫌ってるわけではないから、何か聞かれりゃ答えはするけど、私の方から積極的に会話する気が失せていくのはどうしようもないことである。


 次回の『ゴジラ』のヒロインが吉岡美穂になったとか。
 グラビアで見かける程度で、動いてる彼女は『逮捕しちゃうぞ』くらいしか見てない。だもんでどの程度演技ができる人なのかよくは分らないけど、『ゴジラ』シリーズはもう私の中では「全く期待しないで見にいったら少しは楽しめる」レベルにまで下落はてるから、誰がヒロインやろうとどうでもいいや。


 DVD『山村浩二作品集』。
 予約してたのに、LIMB、取り置きを忘れてやんの。現物が店頭にまだあったからいいけど。これが多いから、だんだん紀伊國屋の方ばかり利用するようになるのだ、しっかりしろよ。
 ようやくアヌシーグランプリの『頭山』(英題はどんなかなあ、と思っていたがまんま「Mt.HEAD」であった)を見ることができたわけだが、「落語の映像化」という点ではこりゃどうかな、という面もないわけではない。
 もともと「映像化できない語り」のナンセンス性にこそあの落語の魅力はあるのである。最初あの落語を聞いた時には私は笑うより先に呆気に取られた。「頭の上の花見」ってどうやって? オチなんて、どんな絵か浮かばねーよ、普通。仮に私が笑ったとしても、それは脳を揺さぶられた結果の狂気的な笑いになっていたことだろう。
 しかも語りは三味線の国本武春。落語の語りとは似て非なるもの。「落語」を期待すれば多分肩透かしを食らう人も出てくるだろう。
 立川談志あたりは「なんだあんなもん」と言うんじゃないかな。『幕末太陽傅』も「落語じゃねえ」と言い切った人だし。そう言えば立川志らくは『キネ旬』で微妙な誉め方してたなあ。「すばらしいけど、ほかにも映像化したい落語はいっぱいある」とかなんとか。
 けれど「アニメーション作品」として見た場合、これはやはり第一級の作品である。花見客がミニサイズになっちゃう絵は原作を知ってると陳腐だが、初めてこの話を見る観客にはそれだけで充分ショッキングだろうし、オチの映像化はまさしく「映画」になっている。ああ、アレを流用したか、と映画ファンならすぐに見当がつくけど、その流用の仕方が卓抜なのである。
 所詮は原作の「解釈」にすぎない、という批判も可能だが、その解釈がまた別の想像力を観客に喚起する効果は確かににあるから、これはこれで成功作と言っていいのではないか。


 DVD『サイボーグ009 第2章 地上より永遠に6』。
 今巻から『地下帝国ヨミ編』。
 封入パンフを見てたら、設定の中に「赤面するバン・ボグート」があったんで笑う。そんなシーン、どこかにあったっけ。そう言えばこないだ『快傑ハリマオ』を読み返してたら、しっかりボグートが出て来てやっぱり悪役を演じていた。まあ全ての石森作品を読んでるわけではないのでなんとも言えないが、少なくともギルモア(ドンゴロスの松)とボグートは少なくとも二度、戦っているわけである。
 本放映時から完成度は高かったので、リテイク部分はあまりなさそうな印象。ああ、このクォリティで全話が制作されてたらなあ……。


 マンガ、深巳琳子『沈夫人の料理人』1巻(小学館/ビッグコミックス・530円)。
 中身についてはオビの惹句をそのまま引用(手抜き)。
 「中華料理の一皿に立ちのぼる妖艶なる主従関係! 美食のエロス! この世の何よりも食べることの好きな奥様・沈夫人と、この家に買われてきた天才料理人・李三。時は明代中国。奥様は退屈していた。『私に何を食べさせてくれるの?』」
 つまり『妖異金瓶梅』料理版って感じですね。沈鳳仙夫人が藩金蓮で、李三が応伯爵の役回り。才能があるのに苛められる李三が健気ながら哀れを誘う。もちろんその哀れっぷりがおかしいんだけど。
 この高飛車なお嬢様・お姫様なんかに翻弄されるって物語のパターンも随分昔からあると思うけれど、これを精錬した傑作が谷崎潤一郎の『痴人の愛』だったり沼正三の『家畜人ヤプー』だったりする。もちろんこのマンガがそこまでどぎつくなることはないのだけれど、そういう「匂い」がこのマンガをして他の凡百の料理マンガと一線を画する結果になっていると思う。
 まあ、苛められないと伸びない才能ってのもあるわな(^o^)。

2002年07月05日(金) 金曜で〜とだ。一応/映画『マジェスティック』/『気になるヨメさん』1巻(星里もちる)/『クロノアイズ』6巻(長谷川裕一)
2001年07月05日(木) 疲れてるとかえって饒舌/DVD『アリオン』ほか



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