無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年06月23日(月) 暗い話二題/『鉄腕バーディー』1巻(ゆうきまさみ)/『金色のガッシュ!!』11巻(雷句誠)

 朝起きたら、右目の前がどうもモヤモヤする。
 よく見ると、黒い、糸のようなものがぶら下がっているのである。ゴミでもついてるのかと右目の前に手をかざしてみるが、指先に引っかかるものは何もない。
 ああ、アレだ、明るいところで空なんかを見ると、糸クズみたいなのが見えるやつ。「飛蚊症(ひぶんしょう)」と呼ばれてるが、これはよく見える人と見えない人がいるらしい。私の場合、子供の頃からこれがやたら多かった。カエルの卵みたいに、ブツブツと点と線の続いた糸クズが、視界一面、雪になって降りしきる。見ようによっては美しいと見えなくもないが、鬱陶しく感じることも多かった。
 これは、眼球の中の硝子体に生じている“濁り”の影が網膜に映り、眼球の動きとともに揺れ動いて見えるものである。この“濁り”はほとんどの場合、生理的な原因によるもので、普通、心配は要らない。母体内で胎児の眼球がつくられる最中には存在していた血管が、生まれたのちも硝子体に残存すると、これが“濁り”となって飛蚊症の症状を生み出す。恐らく、これまでのちらつきは全てこれだったのだと思う。
 けれど、糖尿病や高血圧、外傷などの原因で眼底出血が起こり、その血液が硝子体に入って飛蚊症の症状を呈することもあるのだ。
 今度の糸クズは、右目の上に引っかかったまま、ぶらぶら揺れて視界から消えることがない。今まで、こんなヘンな見え方をした“濁り”はなかった。やはり以前の健康診断で見られた出血はあったのではないか。面倒臭いが、また眼科に行かねばならないかもしれない。
 糸クズはずっと揺れ続けている。その先端は、よく見ると、輪になっている。そしてその輪のところどころに黒い、血がたまりのような点が見える。まるで人を縊り殺した直後の絞首台の吊り紐のようだ。随分丈夫な紐で、いつまで経っても、どんなに揺れても千切れないのである。やだなあ。


 ときおりこの日記に書いてきた職場でのトラブル、ちょっとシャレにならない状況になってきた。
 上司と、同僚の女性との関係が険悪になっていて、板ばさみにあっていることを書いたが、その女性の心のコワレ具合がだんだん激しくなってきたのだ。
 今日、上司がパソコンからあるデータを取り出そうとして、そのデータを管理している彼女にその旨を伝えた。彼女は露骨にそれを拒否した。
 「今、忙しくてできません。ご自分でマニュアルを見てやってください」
 困惑した上司が、私のところにやってきて、「藤原さん、あなたから、聞いてくれませんか」と頼んできたのだ。そんなこと言われたって、私だって困る。
 「私が聞いてもして下さるかどうか分かりませんが」
 「けれど、私では無視されてしまいますから」
 ちょっと待てや(-_-;)。問題はまさにそこにあるので、“もしも彼女が私には親切にしたら”、上司と彼女の関係、ますます溝が深まっちゃうではないの。で、その原因を私に作らせようってのかい。
 でも、断れないから、おずおずと、彼女のところに行って聞くのである。
 「あの、すみません、コレコレナニナニのデータについてなんですけど……」
 「あ、出し方ですか? こうすればいいんですよ」
 そんなん簡単に教えるなああああ!
 もちろん出したデータは、上司のところに持って行きましたよ。すげえ緊張したけど。
 上司も心の広い人なので、怒りはしなかった。怒りはしなかったが、苦笑して、「出してくれたの、あの人」と言って、データを受け取って、あとは何も言わなかった。こういう人を彼女はどうしてあそこまで憎むことになったのか。全くわからない。わからないけれど、人と人とのすれ違いなんて、こんなものなのだろう。……って達観なんてしてられねーんだよう(T∇T)。
 この話、読んでる方もハラハラするばかりで面白くないとは思うのだが、私の今後の身の振り方に密接に関係してくる可能性が大なので、書かずにごまかすわけにはいかない。
 なぜ、彼女が私だけを信頼するのか、まずその理由自体、よくわからない。思いこみが激しく、記憶障害はしょっちゅう起こし、こちらの言ったことをやたら脳内変換しているらしいので、私の何気ない言葉を勝手に「極度に美化」した可能性もあるが、私自身、どんな言葉がきっかけになったのかサッパリ見当がつかないのだから、どうにも対処のしようがない。
 今は私を信頼し、上司を「いつか刺すかもしれない」とまで口走っているが、その矛先が私に向かないとも限らないのだ。なんでそんな心配しながら仕事をせにゃならんのだ。私ゃ、こんなスリルとサスペンスな職場で働きたいわけではないぞ。
 あああ、ホントにシャレにならん。どうすりゃいいのかタコのフンドシ(T∇T)。
 
 気が晴れないので、帰宅途中につい博多駅の紀伊國屋&メトロ書店で、本を買って散財。まる一週間くらい、部屋に引きこもってただひたすら本だけ読んでたい気分である。


 しげが仕事から早めに返ってきたので、一緒にDVD『ウォレスとグルミットのおすすめ生活』を見る。
 7年ぶりの新作、という触れ込みだが、2分程度の短編のシリーズを10本集めたもの。まあこれまでのエッセンスはあるが、見応えはもう一つ、というところか。欽ちゃんの声アテも私は好きじゃない。辻村真人さんのバージョン、NHKはもう一度放送してほしいよ。あっちは正確に「グローミット」と発音してたしな。
 見てる途中で、いつのまにか寝る。


 マンガ、ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』1巻(小学館/ヤングサンデーコミクス・530円)。
 ゆうきまさみの最高傑作になるはずであった(^o^)未完の傑作を、一から仕切り直し。
 宇宙のテロリスト、クリステラ・レビの一味・ギーガーを追って地球にやってきた、宇宙連邦警察の捜査官、ウルト……もとい、バーディー・シフォン・アルティラ。別名「狂戦士(バーサーカー)殺しのバーディー」。
 しかし彼女は、廃墟マニアの少年、千川つとむをギーガーと見誤って殺してしまう。つとむの命を救うために、二人は一つの体を共有することになったが……。
 って、ストーリーは先刻ご承知の方が多いでしょうね。前作とストーリーラインは同じでも、細かい設定の付加があって、それがドラマに厚みをもたらしている。でもつとむが「廃墟マニア」になってたのには驚いちゃったな。結構マイナス志向が強くてバーディーとの信頼関係もなかなか作れないつとむなのだけれど(全然色っぽい展開にならないんだよなあ、せっかく青年誌に移ったのに)、そういう根の暗さっつーかオタクっぽさっつーか、それを象徴するものとして随分「旬」なものを持ってきたなあ、という印象である。旬なのか、ホントに。
 このあたりは、『パトレイバー』で各キャラクターの描き分けをしてきた経験がモノを言ってるように思う。キャラクターこそがドラマを作る基本だってこと、当たり前のことだけどなかなかできないマンガ家さんも多い。ゆうきさんも初期の作品は類型的過ぎるキャラが多くて、面白味も深みもなかったものなあ。それを考えると、ゆうきさんの作劇手法、ちゃんと進歩してるのである。
 でも、できればこれからはもっとセクシーな展開を望むね(^o^)。
 バーディーの眼、猫の眼のように瞳が細くなったり丸くなったりしてるんだけど、前作からそうだったかなあ?
 巻末のおまけまんが、ゆうきさんがHPで「今回は鉛筆描きしみじみ3ページまんがもおまけについてます。自分で言うのもナンですがしみじみしますよ」と仰ってる通り、こういうバーディーはすごく好きだ。めがねっ娘はやっぱ、どこかださくないとね。趣味走り過ぎかな。


 マンガ、雷句誠『金色のガッシュ!!』11巻(小学館/サンデーコミックス・410円)。
 しげが「『ガッシュ』はギャグの部分しか面白くない」と言ってたが、確かにギャグの部分はとことんバカバカしくていいわ。そのあたりは読者も分かってると見えて、今回行われたキャラクター人気投票、ウマゴンやキャンチョメ、フォルゴレあたりが結構上位に食い込んでいる。つーか、「バルカン300(空き箱と割り箸で作ったおもちゃ)」が7位だぜ。キャラじゃないじゃん……。
 新登場のナゾナゾ博士とキッド、パティもいい味出してくれてる。マジョスティック12って、なんだよこれ(^_^;)。いや、どこがどう面白いかってのはトテモ言葉じゃ説明できないんで、まあ、立ち読みでもしてみて下さい。

2002年06月23日(日) ふつーの休日/『狼には気をつけて』4巻(遠藤淑子)/『民俗学者 八雲樹』2巻(金成陽三郎・山口譲司)ほか
2001年06月23日(土) 愛のバカクサ物語/『フロン』(岡田斗司夫)/DVD『ウルトラQ』1巻ほか



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