無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年06月19日(木) 壊れる妻/『ゆうきまさみのはてしない物語 〜天の巻』(ゆうきまさみ)/『ロケットマン』5巻(加藤元浩)

 大友克洋監督の新作『スチームボーイ』が公開予定の10月には完成しないことがハッキリしたようで、バンダイビジュアルが公開延期を公表。
 「現在、完成に向けての最終段階の作業を続けておりますが、ラストのクライマックス・シーンが質・量ともに当初の予想をはるかに超えた緻密な作業が必要な状況に立ち至ってしまいました。最高の作品として完成させるために、甚だ遺憾ではありますが、今秋の公開を見送らせていただき、作品をベストな形で完成させた上で、改めて来年の公開に向けてチャレンジさせて頂くことになりました」ってことだけど、「チャレンジ」って何なんだそれは。映画制作は「仕事」だろう。いつから大友克洋は「冒険野郎」になったんだ。
 まあ、スケジュールの見積もりが甘いってのはアニメ制作にはツキモノなんだし(なんでそんな無理なスケジュールを立てるんだよって現場の意見は、初めから無視されることが多い)、未完成のまま公開した『火垂るの墓』とか『春エヴァ』、『ガンドレス』よりゃ良心的と言えるのかもね。
 しかし、こないだ『死霊のはらわた』の上映会で会った映像制作会社の知り合いも『スチームボーイ』に期待してたけど、そんなに大友克洋って信頼されてるのか。大袈裟なもの作るとあの人たいていコケてんだけどねえ。『メトロポリス』や『スプリガン』を見て、まだあの人に期待するか? っつーか、『アキラ』の時点で底が見えてたと思うんだが。
 どっちかと言うと、『老人Z』や『最臭兵器』みたいなギャグ路線の方が好きなんだが、そっち方面じゃ世界には紹介できないのかねえ。
 でもとりあえずは見に行くよ、鈴木杏出るし(^o^)。


 例のアンマンの国際空港爆発事件で、毎日新聞の五味宏基記者が記者会見。
 何度も頭を下げて、自らの不注意が引き金となって事故を引き起こしたことについて、「道義的責任を一生背負って生きていこうと思う」と語る。
 この事件の報道がまとまった形でなされるのもこれが最後になるんじゃないかな。イラク戦争も既に事後処理ってことでしか語られなくなってるし。
 まあ何度も書いてる通り、私は戦争そのものには何の興味もなくて、それすらもワイドショー感覚で楽しんでる脳天気な人々の方にずっとお笑い感覚を刺激されてしまうわけだが、この五味記者が最終的にイラク報道のオチをつけてくれたって点で、全く世の中というものはよくできていると思うのである。こういうバカが最後に登場してくれたってことが天の配剤なのかねえ。
 もちろん五味記者はただのバカなんだけれど、博多弁で言えばこういう人が「のぼせあがり」なんである。「戦場だってことを自覚してなかったのか」という批判は実は当たっていない。「ホンモノの戦場」だからこそ、爆弾拾って帰ろうなんて非常識な思いに駆られちゃったのだ。「イラク戦争を取材した証しを持っておきたかった」なんて五味記者のコメント、「甲子園の土」と同じ感覚ではないの。
 でも、そういう感覚にとらわれてなかった日本人があの戦争の最中にどれだけいたかね。ヒステリックに反戦を唱えてた連中も、アメリカべったりだった連中も、本質は五味記者とたいして変わらんがな。もしそこにそいつらがいたら、爆弾ならずとも「何か」を持って帰るくらいのことは「のぼせあがってた」日本人なら誰だってしかねなかったと思うがねえ。実際、してるんじゃないか。
 五味記者は、戦争のさ中にいたからって、必ずしもその実態を理解できるものではない、ということを証明してくれたことで、凡百の「戦争論」を机上の空論化してくれた。戦争体験者だって国際通だって、所詮は自分の知る狭い範囲でのモノイイしかできゃしない。日本人がエラソウに戦争を語ること自体、今や滑稽なんである。
 いつもはこういう「バカの罪」が報道されるたびに、救われない気分になるのだが、今回は私としては「功」はあったなあと思う。何かを語ることを仕事にしてる人たちを別にして、一般大衆が自分に関係ない戦争について訳知り顔で語ることくらいバカなことはないってこと。


 朝方しげがまた「気分が悪い」と言うので、仕方なくタクシーで出勤。
 ところが台風のせいで仕事が全部キャンセル。しょうがないから有給取って帰ろうかとも思ったけれど、バスが動いてないので帰れないのでありました(-_-;)。しょうがないから一日雑用。合間に読書、『八つ墓村』なんかを読み返す(だいたいいつも本は何冊か持ち歩いているのである)。
 こういうのんびりした日って、久しぶりだけど、それが台風のおかげってのも何だかねえ。

 夕方まで待って、しげを電話で呼び出す。1時間だけ有休を取って、一緒に食事をするつもりだったのだが、迎えに来たしげの格好を見て驚いた。
 先日、日記に「虎柄のシャツ着てた」と書いたが、今日のしげは毒々しいまっ赤な花柄のハデハデシャツに例の黄色いサングラスである。女じゃなけりゃ、どう見たってただのヤクザだ。
 「何だよその格好は!」
 「売ってるシャツなんだからいいじゃん!」
 そういう問題ではないのである。
 「なんでそこまでいやがると!?」
 「なんでそこまで恥ずかしくないんだよ! おまえはそんなやつじゃなかったろ!?」
 「おとなになったんだよ!」
 違う。それは絶対に違う。
 でも、どう説得しても、話が全くかみあわないから何の効果もない。
 なんかさあ、『ここだけのふたり』で、夫にかまわれなくなったたきえがどんどんオカシクなってったのを思い出すなあ。しげが壊れてってるのも私のせい? 私がしげに何か悪いことをしたとでも言うの?(T∇T)

 リンガーハットで冷麺(ゴマダレ)、蒸し鶏ちゃんぽん、皿うどんを頼んで分け合い。しげ、蒸し鶏を食べながら「こういう薄味のほうがいいよね」とか言ってるが、充分濃いと思う。味覚はまだ変わってないのだな。
 しげの話によれば、今フェア中の皿うどんのファミリーパック、4食入り税込み503円ナリを、一店につき百個売らなきゃならないノルマがあるそうである。とは言え、ウチの職場じゃそういうのを宣伝するの、禁止されてるしなあ。こういう販促には全く向かない職場なんである。
 誰か買ってくれませんか(^_^;)。

 帰宅したころから、頭痛が激しくなって来る。台風のせいか。いや違うよな。腹が重いのは便秘のせいだと思いたい。
 昨日の日記を書いたりしてるうちにガマンができなくなってきたので、しげが仕事に出かけたあとははやばやと寝ることにする。
 てなわけで、今日はチャットもなし。お待たせした方、申し訳ありませんでした。


 ゆうきまさみ『ゆうきまさみのはてしない物語 〜天の巻』(角川文庫・680円)。
 まさかこれまで文庫になるとは予想してなかった。あとがき対談(ゆうきさん&井上伸一郎)も載ってるので、単行本持ってても買っちゃった。でも文庫で結構薄いのに、七百円近くもするのである。文句は言わないから、給料上げてくれ。駄目か。
 対談で『ニュータイプ』創刊時のエピソードを読んでいると、具体的には書かれていないけれども、角川春樹の功罪って、手塚治虫に匹敵するんじゃないかって気がしてくる。アニメファンをジブリ系とオタク系に分けちゃったというか垣根を作ったというかね。本来そこまで対立するはずはないんだが。『幻魔』作ってたときはそうでもなかったけど、やっぱ『サイレントメビウス』作ったあたりからなあ(^_^;)。
 ゆうきさんが宮崎さんの映画を「あれはオタク文化じゃないからな」と語っているのが何だか寂しいのである。確かに批判されるべき点はいくらでもある。実際に宮崎駿映画を見に行ってる連中の大半がアニメとしての価値をほとんど見ようとしてないってことも確かだ。けれど、宮崎駿の「技術」を評価できないオタクって、じゃあ何を評価してるんだって気がしてくるんだがなあ。
 あと、原田知世話で盛りあがってるのは本当に懐かしかった。私は未だに薬師丸ひろ子と原田知世を見捨ててはいないのである(* ̄∇ ̄*)。


 マンガ、加藤元浩『ロケットマン』5巻(講談社/KCGM・410円)。
 前巻から「水無葉の事件簿」って感じになって、『Q.E.D.』との差別化がちょっと付きにくくなってるキライはあるけれど、誠実な創作姿勢は変わりがない。ただ、世界を舞台にするために「T.E.(トゥルー・アイズ)」という国際情報組織を設定したのは便利ではあるけれど、葉みたいな情に流されやすい子供をエージェントにするのかなあ、という疑問はどうしても付いて回る。もう少し「葉を使うメリット」をアイエネスが示してくれたらなあ、と思うんだが、それともそれがこの物語の根幹になってるのかな。もっとも、そういう細かいところにも注文をつけたくなるのは、それだけ加藤さんの描くもののレベルが高いからなんだけれど。
 でも、最初のエピソード「影がゆく/虎よ、虎よ!」はちょっと出来が悪い(^_^;)。「災いを招く本」の保管を以来される葉だったが、初め謎のような絵が描いてあったはずの本が、いつの間にか白紙の本にすりかえられていた。一度も手放ししてなかったはずの本がなぜ?
 これって、謎というほどのものじゃあないんだよね。ミステリ読み慣れてる人なら、すぐにトリックもその背景も気がつくし。この程度の謎なら、もっと単純な始末の仕方があるように思わせちゃうのがやや失敗。
 2本目は「金属モンスター/天の向こう側」。こちらのほうが読み応えがある。「T.E.」の創設時からのメンバー、ビント・ベルガー。元ソ連のロケット開発者の一人である彼は、ミサイルの誘導制御装置を入手して、「どこか」を破壊する計画を練っているらしい。調査を依頼された葉は、彼が、現在生死不明の葉の恩人、「R」の友人であることを知る。
 フォン・ブラウンも回想シーンに登場して語られるV2ロケットの開発の歴史と悲劇。それがビントの「動機」に重い説得力を与えている。「守りの女神」という謎の言葉があっさり解かれちゃうという物足りなさはあるけれど、やはり推理モノは人間ドラマとして描かれてることが命だ。
 新本格作家の作品をどうにも好きになれにいのは、やっぱり「推理モノが人間描けてなくて何が悪い」って開き直ってるからなんだよなあ。そりゃ、推理もの以前に小説じゃないでしょ。
 今巻でどうやら「R」の消息も知れてきた。次巻は更に盛りあがってきそうな印象である。推理ファンなら、今、加藤さんの作品を見逃すと損だよ。

2002年06月19日(水) VS借金取り(^o^)。って、笑ってる場合かよ/『卓球戦隊ぴんぽん5』(桑田乃梨子)ほか
2001年06月19日(火) 孤独な自転車乗り/『となりのののちゃん』(いしいひさいち)



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