無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年06月19日(水) VS借金取り(^o^)。って、笑ってる場合かよ/『卓球戦隊ぴんぽん5』(桑田乃梨子)ほか

 指揮者・作曲家の山本直純さんが18日、急性心不全のため死去。享年69。
 どの記事を見ても、音楽番組『オーケストラがやってきた』とか、「大きいことはいいことだ」の森永のCMとか、『男はつらいよ』の作曲とか、長髪、口ひげ、黒縁眼鏡とか、小沢征爾とのやりとりとか、そんなもんばかり取り上げているが、オタクとして真っ先に挙げなければならないのは、東映動画『どうぶつ宝島』の作曲だろう。山本さん、この映画ではムッツリの声までアテている。ムッツリだからほとんど喋らないんだけれども(^_^;)。
 カラオケに入ってないのが悔しくてしかたがないのだが、『ちっちゃい船だって』はアニソンベストテンを選出するなら私は絶対に上位に入れる。もっとも入ってても私が歌っちゃ雰囲気ぶち壊しだが。しげはコドモみたいな声してるんで、いっぺん聞いてみたいんだがなあ。
 ……歌を知っている人がいたら、私のために歌ってください(←黒澤明『素晴らしき日曜日』的演出)。

 (作詞:石井浩一 作曲:山本直純 歌:ヤングフレッシュ)
  ちっちゃい ちっちゃい ちっちゃい ちっちゃい船だって
  大きい 大きい 大きい 大きい夢のせて
  どこまでも どこまでも どこまでも ゆくぞ ゆくぞ パイオニア号
  ちゃっぷん ちゃっぷん ちゃっぷん ちゃっぷん 波のうえ
  ざんぶら ざんぶら ざんぶら ざんぶら こいでゆく
  どこまでも どこまでも どこまでも ゆくぞ ゆくぞ パイオニア号

  なみも かぜも おひさまも みんな みんな みんな
  みんなともだちだ ゆくぞ ぼくらのパイオニア号
  ひゅう ひゅう ひゅう ひゅう 風きって
  希望を 希望を 希望を 希望をおいかける
  どこまでも どこまでも どこまでも ゆくぞ ゆくぞ パイオニア号

  なみも かぜも おひさまも みんな みんな みんな
  みんなともだちだ ゆくぞ ぼくらのパイオニア号

 昔はこの「パイオニア号」というところが聞き取れなくて、てっきり「フロンティア号」だと思っていた。『宇宙大作戦』の連想でそう思っていたのかも。
 でも本気で思ってるんだよ、200本を越える山本さんの映画音楽の中で、これが最高傑作だったって。……あ、涙出てきちゃった(T.T)。
 アニメの最高傑作が『ど宝』なら、特撮の代表作は『怪奇大作戦』。
 主題歌の「恐怖の町」は、作詞・金城“ウルトラマンの生みの親”哲夫&作・編曲・山本直純という超強力コンビ。サニートーンズの低い声を思い出して歌ってください。

 「ギャーッ!」

  闇を引き裂く 怪しい悲鳴
  誰だ 誰だ 誰だ 
  悪魔が今夜も 騒ぐのか オー!
  SRI SRI 謎を追え
  SRI SRI 怪奇を暴け
  Let's go!

  「フフフ・・・」

  墓場の影で 怪しい笑い
  誰だ 誰だ 誰だ
  死神が 歌い踊るのか  オー!
  SRI SRI 悪を討て
  SRI SRI 正義を守れ
  Let's go!Yeah!

  「ウグッ!ア アアーッ!」

  街角を走る 怪しい影が
  誰だ 誰だ 誰だ
  妖怪が獲物を 狙うのか オー!
  SRI SRI 謎を解け
  SRI SRI 平和を築け
  Let's go!

 あと、『マグマ大使』(テーマソングよりガムの歌の方が好きって人、多いような)や、あの伝説の時代考証無視のトンデモ番組、NHK『天下御免』(平賀源内=山口崇&杉田玄白=坂本九!)も山本さんの作曲。「船出だぞ〜、船出だぞ、この浦ふ〜ねに帆をあげて♪」って覚えてる人いるかな? なんだかね、山本さんの曲って、どれもサビの部分でちょっと転調するところがあるんだけれど、そこがなぜか切なくて泣けてくるのよ。鈴木清順の『殺しの烙印』も山本さん。あのダークな音楽が山本さんとはちょっと信じられないくらいだが、こうなるとその作品世界の広さに驚嘆しないわけにはいかない。
 オタクにカルト、御用達って感じな人なのに、意外にオタクな人たちがその死に反応しないのは、やっぱりご本人のキャラクターの印象が強すぎて、曲の価値を我々が見誤っていたということではないのか。


 某信販会社から職場に電話。
 「あなた冷蔵庫の代金払ってないでしょ。払ってよ払ってよ払ってよ」
 「……あれ? 振込用紙で払いましたけど」
 「それは5月分でしょ? 4月分がまだなのよ。払ってよ払ってよ払ってよ」
 「4月分の振込用紙って届いてないんですけど」
 「送ったわよ。今日までに払わないと、後は一括で払ってもらうわよ」
 「用紙があればお送りするんですけど」
 「4月分のはもう送れないのよ。後は銀行振込しかないの。払ってよ払ってよ払ってよ」
 「でも銀行に行く時間ないんですが」
 「だったら来月まとめて十万払ってね払ってね払ってね」
 で、ガチャッと電話切られた。払ってないこっちが悪いんだろうけど、振込用紙の再発行もできないってどういうリクツなのか。
 察するに4月分の振込用紙、新聞かなんかの間に挟んで捨てちゃったんだろう。本とビデオとゴミの中に暮らしてるとこういうことはままある(だから片付けろよ)。しかしいきなり十万の出費は痛いことは痛いが、もともとローンでものを買うのって嫌いなので、一括して払っちまえるんならそっちのほうが楽だ。今回はいきなり冷蔵庫がぶっ壊れて仕方なくローン組んだんだけど、今後はローンでものを買うことなんてまずなかろうから、実際ほとんど痛痒はないのである。
 けれど今月はDVD買うのはちと控えよう(^_^;)。来月はまた別だが。


 しげ、迎えの車の中で延々と職場の愚痴を垂れる。
 なんでもただでさえクソ忙しいところにもってきて、いきなり人件費削減のお達しが出たそうで、時給も出ないのに残業させられることが増えそうなんだと。
 「夜2時半で上がるはずが1時間もただばたらきしなきゃなんないんだよ」
 景気は底入れしたはずじゃなかったのかなあ。客が来てるから忙しいんであって、更に人件費を減らそうってのは単にけち臭くなってるだけって気もするが。
 バイトやパートが辞めようかどうしようか相談してるそうだけれど、経営の基本間違えてんじゃないか、リ○○○ハ○ト(今更伏字にする意味もないな)。


 帰宅したら、ちょうど新聞屋さんが契約更新のお願いに来ていた。
 新聞に特に好みというのはないので、引っ越し以来10年、某新聞を取っているのだが、更新のたびごとに結構なモノをくれる。確かあまり高価なものはあげちゃいけなかったんじゃないかと思うんだが、実際にはいろいろ貰っている。
 今回貰ったのはダイエー戦のチケット。けどしげは広島カープ以外の球団はクソだと思ってるからなあ。一緒に行ってくれるかどうかは心許ないのである。


 アニメ『ヒカルの碁』第三十六局「オレの名は」。
 各話ごとにヒカルがオトナになったりコドモになったり激しいけれど、今回はまた随分と丸っこくて目の大きいヒカルになっちゃって……と思ってスタッフを見たら原画がみんな中国の人。けれど、一昔前だったら「外注=どヘタクソ」という図式が成り立っていたものだったけれど、今や技術の彼我の差はそれほどでもない。
 今回もやや演技の付け方にぎこちなさは残るものの、外注だとは言わなければ分らないのではないか。もっとも、演出や絵コンテ自体は日本でえんどうてつやさんが担当している。原作とは微妙に構図を変えて、ヒカルに置いていかれそうになる佐為の不安を演出しているあたり、ちょっとした工夫だけれど効果が効いている。
 けれど気がついたら、原作もかなりの量を消化している。この分だとクライマックスは案外近いかも。


 ドラマ、『女と愛とミステリー 痴漢冤罪殺人連鎖 私はやってない! 教師現行犯逮捕の恐怖体験 伊良湖岬の変死体は痴漢を自供した銀行マン 二つの事件を結ぶ謎に挑む美人弁護士』。
 ……タイトルなげーよ(-_-;)。
 つーか、これだけで充分ストーリーの説明ができちゃってるよ(^_^;)。
 痴漢に間違えられる教師役は、村上“今更言われたくないだろうがスカイライダー”弘明。
 で、美人弁護士役が田中“ゴジラ×メガギラス”美里。
 てっきり法廷ものになるかと思ったら、途中から痴漢に間違われて自殺した会社員の謎を、裁判ほったらかしで追いかけることになるアクロバットな展開。……っつーか脚本がデタラメだよ、これ。
 石野真子と故・伊藤俊人さんが出演していたので、つい見ちゃったけど、こんなテキトーなのが伊藤さんの遺作だとしたら悲しいなあ。


 マンガ、桑田乃梨子『卓球戦隊ぴんぽん5』(白泉社文庫・630円)。
 おおおう、ついについに、くわ太さん(←桑田乃梨子さんの愛称だよ)が文庫に!
 でもてっきり、『ひみつの犬神くん』か『おそろしくて言えない』が先だと思ってたけどな。特に『おそろしくて』はCDにまでなったし(塩沢兼人さん主演。合掌)。けれど出たら出たで、あとがき書き下ろし魔の桑田さんのことだから、また、オマケマンガ描いちゃうんだろうな。実際描いてたから新書版持ってるのにまた文庫版まで買っちゃったわけなんだけども(もっとも買ったのはしげだ)。
 しかし、オマケマンガが描ける、ということは、それだけキャラクターに「余韻」があるってことでもあるのだ。桑田さんの物語は、一応の結末を迎えはするのだけれど、いつも「このキャラはこれからどうなるのかな?」ということが気になる。このマンガも、なんたって連載時は「ぴんぽん5」が結成されるところで終わっていたのだ。……これから話が始まるとこやん。というわけで、短期連載された続編、『超卓球戦隊ぴんぽん5R』と『合宿戦隊ぴんぽん5』、それに描き下ろし『戦隊だもの』を加えて全1冊に構成した「完全版」がこれ。でも、描き下ろし加えても、まだ「先」がありそうな感じで終わってるんだよなあ。主役の兄まで登場させるし(主役が裕次郎だから兄さんは当然、慎太郎。弟が軟派だから、兄さんは……って結構アブないネタになりそうだよ、コレ)。
 ……続編描こうよ、桑田さん。タイトルは『卓球戦隊ぴんぽん5すーぱーず』とかで(^o^)。


 昨日の『横溝正史に捧ぐ新世紀からの手紙』の続き。

 乱歩と正史の因縁は更に続く。
 戦後の金田一耕助のシリーズ化は、かつての明智のシリーズ化の時と実に事情が似ている。初め、シリーズ化の予定がなかったのを、増刷が出るほどのヒットを飛ばし、金田一は続編が書かれるようになった。類似点はそれだけではない、金田一の第一作『本陣殺人事件』、第二作『獄門島』と続くあの傑作群を、江戸川乱歩は手厳しく酷評したのだ。曰く、「殺人の動機が不自然過ぎる。もっと穏便な方法がとれたはずだ」。
 ……ハッキリ言って、難癖に近い。その穏便な方法が取れないことが『本陣』のメイントリックと言ってもいいので、それを否定されたとなれば、他の点をどんなに誉められても「駄作だ」と言われたのと同じだからだ。
 その批評を読んだあと、正史が「エドランめ、エドランめ」と絶叫して激怒する様子を、家族が目撃している。正史は、「もうそろそろパクってもよかろう、もう自分は江戸川乱歩を越えたのだ」と思っていたところに、「動機が弱い」などと言われて、乱歩がかつて自分に作品を酷評されたことの復讐をしている、と感じたのではないだろうか。いや、それまでにも乱歩は、正史の『真珠郎』などを「本格探偵小説ではない」と切って捨てていたのだが、自信作をそこまで断じられた場合、恨みは骨髄だろう。
 もちろん、そこには愛憎両方の感情が渦巻いていると思われる。乱歩に負けたくない、乱歩を落とし入れたいという思いと、乱歩にもっと書いてほしい、叱咤激励したい気持ちも当然あっただろう。
 実際に戦後の乱歩は、『怪人二十面相』シリーズのほかはほとんど小説を書かなくなっていた。雑誌『宝石』の編集長となったことをきっかけに、正史に対抗する気概に燃えて、ようやく長編本格探偵小説『化人幻戯』を書いた。そして、通俗アクション小説の主役となっていた明智小五郎が、初期の理知的な名探偵として帰ってきたのだ。
 誰もがこれを誉めそやし、乱歩に次作を書かせようとした。しかし、乱歩の「誉められないと書かない」クセを知らない若手作家が、あるとき『化人幻戯』を酷評してしまった。
 乱歩の本格探偵小説は、これが最後になった。

 横溝正史は、乱歩が死んだ時、遺体にしがみつき、号泣した。
 以後、正史は10年間、創作の筆を折る。角川書店が仕掛けた横溝正史ブームにより、再び新作を書きはじめるが、実はその正史ブームの前に「江戸川乱歩ブーム」があった。
 正史の、本当の復活の理由は実はそこにあったのではないか。
 70歳を越えた作家が、なおも創作意欲を抑えることができなかった理由は、死ぬまで乱歩に勝つことだけを創作のモチベーションにしていたからではなかったか。

 正史の長編最後の遺作、『悪霊島』は、乱歩が、そして乱歩の尊敬する谷崎潤一郎が、そして正史自身もかつて題材として扱った、「双生児」にまつわる確執の物語である。
 乱歩と正史が、同じ探偵小説の両巨頭として、常にずっと、お互いを鏡のように映しあっていたように。

2001年06月19日(火) 孤独な自転車乗り/『となりのののちゃん』(いしいひさいち)



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