無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年01月21日(火) 「アニメ」ってだけで通じるアメリカ人、どれだけいるんだ/『モーツァルトは子守唄を歌わない』4巻(完結/森雅裕・有栖川るい)ほか

 米ディズニーグループが、17日に、アメリカほか日本国外でのテレビ放送向けに、日本のアニメや特撮番組などのコンテンツ(情報内容)を取得する事業を本格的に開始する、と発表。ディズニーがアメリカで配給した宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』がヒットして、日本の作品に海外からの関心が高まっているため、というのがその理由。
 全く同時に、アメリカ&カナダの放送映画批評家協会が、『千と千尋の神隠し』を最優秀アニメ賞に選出。これでいったい、いくつめだ。
 なんだか「世界の注目を集める日本アニメ」って印象だけれども、厳密に言えばこの「世界」っての、ほとんど「アメリカ」だけなんだよねえ。
 何度となくこの日記でも書いてるけど、宮崎駿の世界でのキャリアはこの数年でいきなり上がったわけじゃない。日本の評論家は『ナウシカ』以後のことしか知らないでハンチク言ってるんだけれど、東映動画時代、スタッフとして参加していたころから、その作品は海外、特に「ロシア」や「ヨーロッパ」で賞を取りまくってたのだ。海外のアニメーターたちが仰天してた作画パートが宮崎さんの担当だったってことも多い。「MIYAZAKI,WHO?」ってのはもう30年も前に言われてたことで、それをイマドキ言ってる連中は、アニメをテンからバカにしてたヤツラばかりで、今になって自分たちの「見識の低さ」を糊塗しようと慌てふためいてる。
 『未来少年コナン』『ルパン三世カリオストロの城』『名探偵ホームズ』などはディズニーのスタッフだって確実に見ている。だったらとうの昔にディズニーは宮崎作品のアメリカ配給に向けて尽力しててもよかったはずだが、20年近くも無視をしつづけてたんである。ディズニーが「質的には」いかにアニメ界では後進であるか分ろうというものだ。
 その「見る目のない」ディズニーに、日本の「宮崎以外の」アニメがどう映るんだろう、と心配になるのだが、相変わらず「中身」を見てるようには思えないんだね。
 ウォルト・ディズニー・テレビジョン・インターナショナル・ジャパンのポール・キャンドランド上席代表によると、アメリカでは「デジモン、遊戯王、ドラゴンボールなどが人気がある」んだとか。……宮崎アニメとの共通項はどこにあるのよ。

 集英社が『マンガ生活応援マガジン mangaオモ!』ってのを出してたけど(マンガと言ってもほとんど集英社のマンガだけを応援してる感じだが)、そこでも「ジャパニーズ・マンガはハリウッドを越えた?」という特集で、『ドラゴンボール』や『アキラ』のハリウッド映画家を例に挙げて(『鉄腕アトム』の映画化は結局中止になったようだ)、「『もはや日本人にしか分らない』マンガは存在しない」とかぶちあげている。
 もちろんそんなのは大ウソで、だったら『サザエさん』だってアメリカでヒットするはずである。日本人だって、『スパイダーマン』や『X‐MEN』の映画には駆けつけるが、原作のコミックまで見てる人は少ないし、第一アレがSFX映画だから見に行ってるんで、アニメ化されたものだったら客が集まってたかどうか、はなはだ疑問だ。『アイアンジャイアント』も『タイタンAE』も『パワーパフガールズムービー』も、日本じゃコケてるんだよ(向こうでもそうでもなかったみたいだが)。
 映画だろうがアニメだろうが、なにかを「見る」のにはそれ相応の「素養」が必要になる。これ言い出すとすぐ「アタマのいい悪いの問題か」と怒る人が出てくるんだけど、そんなこと言い出すことの方がよっぽどアタマが悪い。文化の違うものを理解しようと思ったら、相手の文化を予め少しでも理解しておくことが
必要になるってだけの話である。もちろん完全に相手の文化が理解できるなんてこともありえないから、その分は想像力で補って楽しむことになる。
 言い換えれば、異文化を楽しむためには勉強して素養を「想像力」だということだ。アメリカ人の中に日本アニメを楽しむ人が増えたということは、本来「ナンデスカ、アレハ? ワケワカリマセーン」って怒る人よりも「ナンダカワカリマセンガ、オモシロイデース」って人が増えたってだけのことじゃん。もちろんその「想像力」を喚起させるだけの力をその作品自体が持ってることが絶対に必要で、最近のディズニーのアニメにはもうその力がなくなっていた、その焦りが日本アニメに目を向けさせたってことだと思う。
 ディズニーランドに「トトロの森」とかが造られるようになるのも、そう遠い未来じゃないかもね。
 

 ついにまたダウンして、仕事を休む。
 咳が止まんなくなっちゃったし、吐くし、とても仕事ができる状態じゃない。
 クスリも切れてたので、しげに医者まで連れてってもらったら、「まだ治ってないんですか!」と言われた。
 とりあえずまた注射をしてもらう。念のため、レントゲンを撮ってもらうが、肺には以上はない。相変わらず肝臓が肥大してるだけである(だけってそれだけでも命に関わってくるんだが)。
 ともかく熱が出ないってのがネックなんだよなあ。
 もしかして私のカラダん中の免疫とか抗体とか、仕事サボってるんじゃないのか。主人に似てるのか?(^_^;)

 医者帰りに知り合いの本屋に寄る。
 ご主人がいらっしゃらないで、奥さんがカウンターにいらっしゃる。
 なんで仕事もしないで、と思われないように、と自分から「風邪で、ゲホゲホ」なんて言い訳しているのが情けない。でも言っとかないと、あの本屋さん、オヤジにすぐ話しちゃうし(ー∇ー;)。
 銀行に寄っておカネを卸す。
 今月からまた給料が下がってるんだよなあ。不況なんだから仕方ないけど、今まで払ってた給料も過去に遡って1年分ボーナスからさっぴくってのは、ちょっとアコギすぎねえか。去年まで昇給を三年もストップさせといたときには、「これ以上の減給はしない」とか言ってたの、ウソじゃん。リストラされないだけ感謝しろってか。
 謝罪のヒトコトもなくって、これで労働意欲を出せって?
 ウチの商売がどんどん傾いてくのも自業自得ってもんだ。

 夜になっても咳止まらず。
 料理を作る元気も外食する体力もないので、晩飯はピザを頼む。ピザ・カリフォルニアに注文するのは初めてだが、チラシを見るとここのメニューにはスパゲティも付いているので、頼んでみる。
 チキンとベーコンのトマトソースパスタ、値段は張るが美味い。咳き込んでたんで、鼻にちょっとミートソースが入っちゃったけど。


 マンガ、森雅裕原作・有栖川るい作画『モーツァルトは子守唄を歌わない』4巻(完結/エニックス/ステンシルコミックス・580円)。
 ううむ、結局モーツァルトを殺したのはあの人でしたね。困ったなあ、これ以上のコメントは犯人をどうしてもバラしちゃうことになるので、面白かったかつまんなかったかすら言えない。
 代わりに文句をつけるなら、フリースの子守り歌の暗号、ドイツ語を知らないと解けないってのは、ちょっと卑怯じゃないのよ(^_^;)。いや、そういうのを作っちゃダメってことはないけどさあ、やっぱ作者との知恵比べをしたいってのはミステリファンとしての楽しみなんで、最初から勝負が付いてるってのはちょっと腹立つぞ。ただ、卑怯とは言ったが、ミステリとしてアンフェアではないのね、これ。だってドイツ語喋れないのはあくまで読者の問題で、作者が忖度しなきゃならないことじゃないから。
 というわけで、この本を読もうと思ってる方は、最終巻を読む前にまずドイツ語が話せるように勉強しておきましょう。……誰がするんだ(^_^;)。

 そういうトリックの経緯よりも、この作品が「物語」として面白いのは、その真犯人がわかったあとでの関係者の身の振り方なのだね。
 ベートーヴェンは、チェルニーは、シレーネは、コンスタンツェは、サリエリは、シューベルトは、そして真犯人がいかに「その後」を過ごしたか。
 もちろん、史実の「モーツァルトの死の謎」は未だに解かれてはいない。だからこそ、それはなぜかってことが最後の謎として解明されていくのだけれど、人間の妄執の底知れなさを感じさせるいいラストである。しかしそれをも否定するチェルニーの小悪魔ぶり、これが実にいい。私が見てきた「ワトスン役」の中でも、このチェルニーは最高の一人だろう。

 チェルニー「報いなんてものが本当にあるんですかね」
 ベートーヴェン「さあな。でも少なくともおまえは……」
 チェルニー「なんです?」
 ベートーヴェン「少なくともおまえは信じないだろうな」
 チェルニー「なるほどね」

 それから、少年時代はツブレ大福みたいに描かれてたシューベルトがラストでいきなリ美青年に成長するのは、まるでパタリロである(^o^)。


 マンガ、加藤元浩『Q.E.D.証明終了』14巻(講談社/月刊少年マガジンコミックス・410円)。
 ミステリマンガ界の良心、加藤さんでもまあ毎回上質の作品は作れない。
 『夏休み事件』編、アリバイトリックの成立のさせ方には工夫があるけれど、ちょっとムリがありすぎである。実際、目撃証言一つで崩れちゃうしね。
 それに比べれば、『イレギュラーバウンド』編のほうは、うまく「仕掛け」てある。このトリック、前例は『刑事コロンボ』の一編にあるのは知ってたけど、途中まで引っかかってた。ミスディレクションというのはこういうふうにやるもんである。
 うう、ホントに面白いミステリは筋も簡単に紹介できない……(T∇T)。

2002年01月21日(月) 妻の寝相と丈夫な膀胱/『夜と星の向こう』(今市子)ほか
2001年01月21日(日) 日曜の夜は出たくないのに/『トガリ』(夏目義徳)1巻ほか



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