無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年10月01日(火) たかが賞金で金持ちにはなれない/アニメ『あずまんが大王』最終回/『西洋骨董洋菓子店』4巻(よしながふみ)

 今日からそろそろ衣替えかな、と思って、職場に背広を持って行ったのだが、結局全く袖を通さなかった。
 暑さにゃ弱いが、寒さには結構耐性があるので、風が随分涼しくなってはいるが、特に寒いとは感じていないのである。けど世間的には未だに半袖ってのはちょっと異常なんだろうなあ。こないだ芝居を見に行ったときも半袖だったの私としげだけだったし。私がTシャツだったのは、実際、そうでないと人いきれで暑苦しくなっちゃうからだが、しげの場合はただのドジ(しげは私と違って寒がりであるなので、救いようがないのである。……天神の屋上でも寒い思いしてたくせに、どうして長袖にしないのかなあ。

 こないだ職場の警備の当番をしたばかりだったが、同僚と交代することになったので、また居残り。今度は懐中電灯を持ってちゃんと見回り(前回は暗闇で廊下を見通すこともできず、戸締りの確認をし損なった箇所が多くて、警備会社からお叱りを受けたのである)。
 鍵の状態、以前と変わらず壊れまくり。
 業者に頼めばすぐに取り替えてもらえそうな気もするが、それともウチは予算がそんなにないのだろうか。慣れたはずなのに、前回より見回りに時間がかかる。戻ってくると上司から「今度は完璧ですか?」と聞かれるが、そんなん分るか。「さあ?」と答えると(このあたりのぞんざいな口の利き方が私の上司のオボエが悪い原因の一つだ)、「期待してるんですからね」と、やや懇願するような、でも何となく説諭のようなニュアンスも含むような口調で返される。
 ……たかが見回りに何の期待? それとも何かこれが査定の対象にでもなってるというのか?
 私は職場の連中の思考パターンが読めないことが多いが、こういう意味不明な言葉遣いをされるとウラに何かあるんじゃないかと勘繰りたくなるので精神衛生上あまりよくないのである。要するにあまりアテにならねえなあ、と思ってんだろうが、だったら視力のない私に夜の警備なんて任すなよ。イジメか?

 しげはもう、仕事の時間になっていて、迎えには来られないので、タクシーを拾いに、夜道をてくてく歩く。
 ここんとこ車での移動ばかりだったので気がつかなかったのだが、もう、草むらが秋の虫の音に変わってしまっている。……ついこないだまでツクツクボウシが鳴いてたと思ってたのになあ。
 昔は虫の音の違いも聞き分けていたのだが、もう脳細胞が随分死んじゃったのか、どの音色が蟋蟀やら松虫やら鈴虫やら轡虫やらとんとわからない。
 「ひひひひひひひひぃよ」と、甲高く笑う女のような音色を奏でてたのは何という虫だったか。


 帰宅して疲れ果てていたので、すぐにぐたっと寝る。
 目覚めたのは午前1時。6時間くらいは寝てたか。
 でもおかげで、アニメ『あずまんが大王』の最終回に間に合った。これも東京じゃ先週放送ずみなんだろうな。
 原作をほとんど改変せず、しかしアニメとして見せるというのはなかなか難しいのだが、ごく普通の仕草をキチンと描いて、さすがJ.C.STAFFというところを見せてくれた。音楽がどうも違うんじゃないかって気はするが、これは主観が働いてると思うんで、はっきり失敗である、とは断定しないでおこう。
 声優は、やっぱり榊さんの浅川悠(私はこの人を『ブギーポップ・ファントム』でしか認識してない)が、落ちついた声の中に少女らしさを漂わせていて、絶品だったと思う。
 噛み猫に「撫でていのか?」と言うときの、期待と不安と嬉しさと、その微妙なニュアンスを含んだ声が静かに流れると、そのあとやっぱり噛まれちゃうんだよな、とは思いながらも、榊さんと噛み猫の関係はこれでよかったんじゃないかなあ、という気にさせる。
 2番目はやっぱりおーさか。松岡由貴が本当の大阪人かどうかは知らないが、丁度いい気の抜け方だった。この演技は特殊で、ほかの役を演じたときにはこのほんやらした味わいはまず消えてしまうだろうが、これがキャリアになってくれればいいと思う。
 みんな一緒か。多分それは現実には夢なんだけれど、ゆかり先生の「あんたたちは大丈夫だろ。知らんけど」のセリフが、その夢に根拠を与えてるんである。なんだか『夢だっていいじゃない』という川原泉のマンガを思いだしちゃったね。


 部屋がそろそろ本もビデオもDVDも置ききれなくなってきている。
 本気でエロの冒険者さんに部屋を斡旋してもらわなければならなくなりそうな気配なのだが、如何せん、先立つものが全くない(^_^;)。
 こないだ、何の気なしに「小説でも書いて、懸賞に応募しようかなあ」と呟いたら、しげの目がランランと輝き始めた。
 「金持ちになると?」
 なるか(-_-;)。
 「お前、俺に面白い小説が書けると思ってるのかよ?」
 と言うと、「別に面白くなくても、テキトーな固定ファンがつけばいいやん。やったあ、金持ち化計画やね!」と、世間を舐めきった発言をする。
 そのときはそれだけで終わったつもりだったのだが、今日になって、しげからメールが送りつけられてきた。
 ……江戸川乱歩賞と鮎川哲也賞の応募規定(・・;)。
 しげは本気だ。
 しかもこんな恥ずかしいこと、日記にも書けないでいたのに、「なんで日記に書かんの?」と責められるので仕方なく書いた。これで私を追いつめようって腹だろうが、これで私がやっぱり小説が書けなくても、仮に書いて落選しまくっても、そりゃ、私に才能がないってだけの話だから、それだけのことである。
 だいたい日記の更新もホームページ立ち上げもままならぬと言うのに、小説が書けるというのか。
 少なくとも、誇大妄想で自分に才能があると吹聴するやからと同じと思われるのも癪なんで、先に言い訳しとこう。こんな弱腰の臆病者に、マトモな小説が書けるわきゃないのである。読者諸賢も期待しないように。


 マンガ、よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』4巻(完結/新書館/WINGS COMOCS・557円)。
 上手い。
 切ない。
 けれど、明るい。
 こういうマンガが描けたら、マンガ家冥利に尽きるんじゃないだろうか。
 わずか4巻で完結するとは思いもしなかったけれど、ダラダラ続くより、このくらいの長さが丁度よかったかもしれない。
 登場人物たちの昔語りも3巻までで一通り終わり、予想通り最終巻は橘のトラウマにケリをつける展開。
 橘が九歳のころに誘拐された事件と全くそっくりの誘拐事件が頻発に起こる。
 かつての事件の犯人の現在も描かれ、事件は再び彼の犯行なのかと読者に気を持たせつつ、刑事が橘のもとにやって来て張り込みを始める。
 未だにかつての悪夢に悩まされる橘は、自分が待ち望んでいたのは、過去に決別すると言うよりは、突然の犯人の変心で、放り出されてしまった過去の「続き」を、自ら紡ぐことではなかったかと気付く。
 事件は解決する。
 変わらぬように見えた時の流れも、確実に橘たちの身の上を少しずつ変えて行く。エイジはパリに発った。千影は「私がいなくても大丈夫だから」と言って去った。
 再び、『アンティーク』は橘と小野、二人だけの店になった。
 けれど、小野は言うのだ。
 「そんなに長い年月が経ったわけじゃない。この窓から見える家並だってあの頃とちっとも変わってない。なのに……今は店に二人だけだった頃がひどく懐かしい気がするよ……」
 それは多分、彼らの中でなにかが「終わった」からだろう。
 橘とかつての誘拐犯との最後の「出会い」。
 彼らの、お互いに対する感情に名前を与えることができるだろうか。
 愛でもない。憎しみでもない。もともと彼らの間には何もなかったし、今もなにか明確なものがあるわけではない。
 けれど、彼らは確かに今でもつながっていて……そしてそれが、多分、人と人を結びつける唯一の「絆」だから。
 だから泣けるのである。
 私は愛の物語では泣かない。だが、理屈のない、「絆」の物語にはどうしても泣けてしまうのである。それは、私としげを結んでいるものでもあるのだから。

2001年10月01日(月) 貴公子の死/ドラマ『仮面ライダーアギトスペシャル』/『終着駅殺人事件』ほか
2000年10月01日(日) スランプと○○○の穴と香取慎吾と/映画『マルコヴィッチの穴』



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