NY州在住 <旧『東京在住』・旧旧『NY在住』>
kiyo



 夢の海外での学士取得と現実

一度だけ、ブログでこういう「役に立ちそうな」情報を発信してみたかったんです。役に立ちそうな、というのは所詮ブログで書いた独り言のようなもので、ほんとにアカデミックだったりビジネスの現場の議論に耐えうるわけではありません。勘違いしないでね。
 
 実は、今まで一度も留学の相談を受けたことがありません。ありそうでしょ?ないんです。すこしバイトとして誰かの出願書類やエッセイをみたことはありましたが、そうした方はもうすでに行きたい学校や勉強したい分野が具体化している人でした。

「高校卒業後は、留学しても良いかなって思っているんですが、どんなもんでしょう?」

 なかなか難しい問題だと思います。つっけんどんに「何かそこでしか勉強できない内容があって、経済的に許されるなら他に決断の余地はないのでは?」と答えるのもどうかと思います。なかなか自分一人だけの力ではできないことだし、一人の力だとしても逸失利益といいますか、そもそもそれだけのコスト(時間とお金)をかけてどうするのか、という問題と向き合わなければいけないからです。

 留学の価値=プライスレス

 とご本人は考えていても、周囲の人はそう思わないかもしれませんし、そうしたプレッシャーにさらされる方も多いのじゃないかと思います。

 具体的に費用のことを考えてみましょう。

 17,447ドルが、アメリカの四年制大学の平均授業料らしいです。(参照[英語資料です]:http://www.infoplease.com/ipa/A0781878.html)日本円(1ドル=110円)にすると、190万円くらいでしょうか?これは私の勝手な観察によるものですが、四年制大学に留学をさせようとすると大体授業料の2.5倍くらいかかると思われますので、ざっくり計算して年間480万円。四年間だと2000万円弱くらいかかる計算です。

 なるほどね、安くないですね。ま、でも、公立校なら若干(ほんとに若干)ですが安くなると思いますし、さらに場所によってもさらに安くなる可能性があるというものです。しかも所詮SATなんて留学生の場合数学くらいしか考慮されないんじゃないかと思うことを考えれば(私見です!)普通の留学自体は、オカネだけの話に帰結しなくもない。また、お父さんは50代から60代と思われますから、その人の平均年収が650万円らしいですから(参照[日本語資料]:http://nensyu-labo.com/heikin_nenrei.htm)、高校入学したあたりから留学を志せばなんとかならなくはないんじゃないかと思います。

 この話、実はアイビーリーグなどトップ校にいこうとすると全く話は別物です。しかも悪い意味で。

 結論から言えば、学費だけじゃなくて、学力共に非常に大変なことになる。


 この図をみてみましょう。アメリカの一流大学の(右から)合格率、合格通知を受け手からの進学率、SAT(大学入試共通試験)のスコア、学費です。

 まず、SATですが、これ、満点じゃないと思われるかもしれませんが、SATIといわれる基本能力のテストは満点じゃなければほとんど入学は無理だそうです。私の大学でさえ、全学部生の73%は高校の頃主席か次席の卒業席次らしいです。そのうえ、高校のときの学力だけじゃないパフォーマンスも必要。ま、生徒会長やってSAT満点じゃないと願書を見てもらえないということでしょう。

 だから合格率がこんなに低い。そりゃ受験料もかかりますから、箸にも棒にも引っかからないような場合には受験しませんから、合格するかも、と思う人しか受験しないわけです。それで、この合格率ですから非常に狭い門かと思います。勉強の苦労も並々ならぬ者があるでしょう。

 さて、授業料。ざっと見たところ3000ドル(330万円)ですか?やはり勝手な私の法則、[全費用=授業料×2.5]を用いたところ、年間830万円、四年間で3300万円。フェラーリが買えます。

 気をつけなければいけないのは、これは留学生ということであって、アメリカ人がこのようなトップ校にいく場合には少し話は違うようです。カリフォルニアやミシガンなど素晴らしい州立大学(私の所も一部は州立大ですが)はありますし、そこはレガシー入学などありませんし、学費も安いし、また補助も多いようです。気をつけましょう。

 なかなかハードルはきついですね。私の息子や娘が、ハーバードの合格通知を持ってきたとら本当に困ってしまいます。それでも、留学生は増え続けているのです。


 ほら、この通り。確かに学部生を見ている限り、朝から晩まであんだけ勉強させられ、優秀なクラスメートと切磋琢磨できることは本当に素晴らしいことだと思います。短絡的な利益の話をすれば、途上国や韓国などでは、学歴だけで給料と周囲からの羨望の量が決まるようですし。(ワインの値段とラベルの相関みたいなものか?)


 教育を経済的な価値だけで算出するのはどうかとも思いますが、どれだけ優れた教育システムだとしても、学部教育にこれだけのハードルがあるのは少し二の足を踏んでしまうのが現実じゃないかと思います。留学を志す高校生諸氏には是非、そうした現実を踏まえて、周囲の説得に当たってほしいなと思います。
 トップ校じゃなくても、コストはご覧の通り莫大です。フェードアウトしたドキュソな高校生が親が裕福なのを良いことに、アメリカでなんとか卒業しようという例もバブル期は散見されたそうですが、もっと有効な使い方もあるかもしれません。

 学部生は学部生として得られるもの、と失うものとをきちんと見極めて、日本の大学に行く感覚では決して進学できるものではないと思いました。

 追伸1:これは学部生の話です。大学院は全く話は別です。学費についてもそのほかハードルについても一般化できません。そこを間違えないように!

 追伸2:これ、芸術系だともっとです。知り合いでバレーをしている人がいましたが、夏はモナコとイギリスの学校に、とか。あの先生の個人レッスンを、とかいう話になって、恐らくコストは果てしなくなることでしょう。ある人が言っていたんです。これで「私好きな人が出来たの♪結婚するわ♪」っていわれたら、私は娘を殺すかもしれないと。うん。そうかもしれない。


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2008年05月20日(火)
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