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全米ロマンス作家協会の「RITA賞」、そのベスト・ファーストブック賞を2004年に受賞したスーザン・クランドルのデビュー作。 どうやって探したのか忘れてしまったが、ネットで最近見つけた。 シチュエーションに惹かれて入手。
原題は『Back Roads』、インディアナ州の田舎町「グレンズ・クロッシング」を舞台に、女性保安官と「町へやってきた流れ者」(注:カバー見返しより)の恋を描く。
保安官のリー・ミッチェルは30歳の誕生日を前に、これまでの優等生ぶりを返上しようと決意している。女性保安官という職業自体がアメリカンだが、選挙によって選ばれるらしい。「新しいリー」(英語ではnewlyとの語呂合わせ?)は、カーニバルの夜出会った見知らぬ男性、ウィルに惹かれてゆく。 直後に起こった18歳の少女の蒸発事件。小さな町は混乱に陥り、流れ者が疑われる。
ウィル・スコットと名乗る男は、リーにとって理想的な相手なのだが、決して過去を話さず、後ろめたい影がつきまとっている。職業上の経験や勘と、これまでまったく知らなかった恋愛感情とのせめぎ合いのなかで、「新しいリー」は成長していった。
ロマンス小説としての面白さという点では、情況設定さえ受け入れられれば、深い味わいがあると思う。自分自身の過去にある傷を自覚している大人にとっては、リーとウィルがお互いに見つけた感情に、段階ごとの癒しがあることだろう。
リーもウィルも、これまでの苦しい経験から「あきらめていた」にもかかわらず、「逃げられない」恋愛モードを呼び込んでしまう。「新しいリー」になる決意がそうさせたのだろうし、ウィルにとっても、この町には幸せな思い出があったのだ。
ロマンス小説だから、きちんとハッピーエンディングになることは承知しているとはいえ、二人とも立場的には相当苦しいものがある。女性の立場としては、途中まで不安だったリーがウィルを信頼する経緯に共感する。とりわけ、直感的にウィルの無実を信じるようになる場面など、「街中が敵」でも「私だけは味方」というのだから。
ここに描かれる町の住民たちの姿も、興味深い。 ちょっとデートしただけで、全員に知られてしまうような町だけれど、知られざる美点もある。ロマンス小説とくくるには文学的、それでも中心にはロマンスがしっかり呼吸している。こういう物語は日本にはないなあ、誰か書いてよ、といつもながら思う。
そしていつもながらフンフンと思うのは、誰の本を読んでも、主人公たちが相手の年齢をまったく考慮していないことだ。ほとんど尋ねもしないのだから。(マーズ)
『ひとときの永遠』著者:スーザン・クランダル / 訳:清水寛子 / 出版社:二見文庫2006
2004年04月26日(月) ☆私の「癒し系」ブック
2002年04月26日(金) 『ニーベルンゲンの歌』
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管理者:お天気猫や
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