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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2005年12月19日(月) --

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☆本を味わう。

先日、古本屋さんで、かつてずっと探していた本を見つけました。
『西瓜糖の日々』(著者:リチャード・ブローティガン)
今では、文庫本で復刊されているので、簡単に手に入れることが出来ます。それまで、長年、読みたいと思い、当時オークションにも参加してみましたが、5000円を超える高値で手に入れることは叶いませんでした。

やっと、文庫本で読むことが出来るようになった時には、どうしても読みたいという強い欲求は過ぎ去り、ページをめくりながら、ぼんやりとしてしまい幻想的な世界の住民になることはできませんでした。そのうち、文庫本は本の山の中のどこかにまぎれこんでしまい、物語は途中で止まったままです。。

目の前にあるのは、当時どうしても手に入れることができなっかったソフトカバーの本(『西瓜糖の日々』河出海外小説選 29)でした。900円の値札がついています。

本をぱらぱらとめくる。文庫本と違い、余白が多い本はゆったりした印象で、読みやすい感じ。本の軟らかさもいい。けれど、家にある一冊を読み終えていないのだからと、棚に戻す。でも、もう一度手に取る。うっすらとベージュがかった紙の質感も、温かい感じがする。うーんと、悩みつつも、やはり、棚に戻してしまいました。

ぶらぶらと棚を眺めていて、今度は『マクリーンの川』(著者:ノーマン・マクリーン)のハードカバーが目にとまりました。ブラッド・ピットの『リバー・ランズ・スルー・イット』(監督:ロバート・レッドフォード )の原作。前に文庫本を手にした時、文庫本の文字の大きさとかあるいは翻訳のせいなのか、なんだかとても薄い本のような気がして、がっかりしたことがありました。

そもそも『リバー・ランズ・スルー・イット』は、私にとっては不思議な映画です。年を経るごとに、印象が強くなっていく映画なのです。初めて見た時はあまりいい映画には思えませんでした。よくあるパターンの映画の一つ。真面目な兄と、無鉄砲だけれど天真爛漫で愛すべき弟。そして、その欠点ゆえに弟を喪失した家族の物語。そんな風に私の中では分類されていました。

しかし、近頃やっと、この映画の美しさがわかるようになり、物語が響いてきました。それで、原作を読んでみたいと、文庫本を手に取ったのでした。ぱらぱらとめくっただけで、『リバー・ランズ・スルー・イット』は原作より映画の方が格段に美しくよくできた映画だと、また誤解をしてしまっていたのです。 ハードカバーの『マクリーンの川』には、以前に感じた薄っぺらさは微塵もありませんでした。

『蜜蜂職人』(著者:マクサンス・フェルミーヌ)でも感じたことですが、多分、私はあの本が文庫本だったとしたら、それほど感動はしなかったのではないかと。ストーリーを追うことよりも、言葉の響きや幻想的な情景、熱に浮かされたような情熱の発露、どれも活字そのものからだけではなく、より多くのものが、ゆったりとした本の余白や行間から伝わってきたのだから。

本を読むということは、決して活字を読むことだけではないのだと、あたりまえのことをしみじみと感じています。余白から言葉にはならない何かに触れる。行間から言葉には表されていない何かを読みとる。本の手触りや質感から、本の持っている温度を感じる。そんなことをソフトカバーの『西瓜糖の日々』から感じたのでした。

物語によっては、大きくて重いハードカバーよりも小さな文庫本で、気軽に読みたいものもあります。物語の圧倒的な力で、単行本であろうが文庫本であろうが、その魅力に違いはない本はたくさんあります。私自身、好事家ではないから本の形にはあまりこだわりはなかったのですが。それでも、物語によっては、その本そのものの形までもが物語の一部である、そういうものもあるのだと。本をじっくり味わうためには、オリジナルの版で読みたいと、今は切に感じています。財布と相談しながらですが…(笑)

…ところで、『下妻物語』(著者:嶽本野ばら)も、面白さはどちらも同じですが、本としては文庫本より単行本の方が圧倒的に大好きです。(シィアル)


『西瓜糖の日々』河出海外小説選 29 著者:リチャード・ブローティガン / 訳:藤本和子 / 河出書房新社1979、(文庫版)河出文庫2003
『マクリーンの川』著者:ノーマン・マクリーン / 訳:渡辺利雄 / 出版社:集英社1993、(文庫版)集英社文庫1999
『蜜蜂職人』著者:マクサンス・フェルミーヌ / 訳:田中倫郎 / 出版社:角川書店2002
『下妻物語』著者:嶽本野ばら / 出版社:小学館2002、(文庫版)小学館文庫2004

2003年12月19日(金) 『クリスマスのまえのばん』
2000年12月19日(火) ☆辞書を引く。

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