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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2005年03月07日(月) --

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『のっぽのサラ』

掌編のなかにひろがる、あたたかい息吹。 そのぬくもりは、薄い一冊の本に見えるが、 内に入ると、かけがえのない人の思い、そのもの。

大草原のまんなかで暮らすお母さんのいない一家。 お父さんが出した花嫁募集広告に、ひとりの女性が 応募して、「お試し」にやってくる。 姉のアンナと、弟のケイレブ、二人の子どもたちは 「のっぽでぶさいく」と自称するサラが、 この草原に落ち着いて、自分たちの家庭の太陽に なってくれることを願う。 海のそばのメイン州からきたサラは、海が恋しい。 残してきた身内や家も恋しい。 アンナやケイレブは、亡くなったお母さんが恋しい。 でも、それ以上に、この新しい家族を お互いに求めている。

サラのことばのはしばしをとらえ、 「そのうち」とか 「うちの」とかいった断片があらわれるたび、 二人の子どもはうれしさを共有する。 子どもはそんな風に、大人の言ったことばを 熱心な耳で聞いているのだなあと、あらためて思う。

髪を切ると、カールした金髪を鳥たちが 巣にできるよう、野原にまくサラ。 大工仕事が得意なサラ。 動物好きなサラ。 家族が忘れていた歌を歌ってくれる、サラ。

パトリシア・マクラクランは、あとがきに書いている。

わたしの母が幼いころ、ちょうどサラがアンナとケイレブの 家にやってきたように、新聞の広告をみて、花嫁さんが やってきて、いっしょに暮らすことになったのです。 母は、その花嫁さんを大好きになって、 わたしたちに、そのときのことを話してくれました。(引用)

続編の『草原のサラ』を先に読んでいるので、 はじめの物語を早く読みたいと思いながら、 やっと満足できた。 短編ながら、長編が多い「ニューベリー賞」を1986年に受賞した作品。 人の願いや思い、家族のつながり。 そうした根源的で、何がなくても生きるのに必要なことを見つめ、 真摯によりそうまなざしが、 「ここにはない何か」を物語っている。 (マーズ)

『草原のサラ』


『のっぽのサラ』著者:パトリシア・マクラクラン / 訳:金原瑞人 / 絵:中村悦子 / 出版社:福武書店1987

2003年03月07日(金) 「中国茶 風雅の裏側」
2002年03月07日(木) 『オーディンとのろわれた語り部』
2001年03月07日(水) 『一瞬の光のなかで』

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