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『ゴースト・ドラム』の作者のだよ、と シィアルに借りてその場で読んだ本。 薄いのですぐ読み終わったものの、 確かになかなか手ごわい。 オーディンやフレイヤ女神など、作者のなじんできた 北欧神話と創作がいばらのごとく絡みあって、 後味は苦くもあり、甘くもあり。
アイスランドの冬は昼も夜もなく、 そんな雪と氷の世界で恐怖が主人公たちを締めつける。 いくら悪事を重ねても、神王オーディンへの生け贄によって いっこうに報いを受けない、魔法使いのクヴェルドルフ。 まぁいってみれば田舎のごろつきなわけだが、 その彼じきじきに頼まれた命令を聞かなかったおかげで、 おっかない死霊の化け物を寄こされ、 さまざまに脅しすかされる語り部の青年。 農家に住むこの主人公は「ネコのトード」と呼ばれている。 アイスランド一の語り手は、世界一やさしい心の持ち主。
クヴェルドルフの命令は難しいものではない。 北方の国テューレの女王さまに、 自分のことを気に入って結婚してもらうために、褒め称えよと。 簡単なことだが、トードにはこだわりがある。 絶対にゆずれない、してはならないことがあるのだ。 クヴェルドルフも引き下がっては沽券にかかわるので、 化け物を使ってあの手この手でトードを外堀から陥落させようとする。
しかし、昔話の常で、こういう変わった、 一見チビの何でもなさそうな若者と張り合って 勝てる魔法使いはいない。 昔話ではよく、怒ったあまり、パーンと破裂してしまうが、 さて、このクヴェルドルフはどうなるのか、読んでのお楽しみ。
トードが最初に登場する場面。 赤毛のトードが赤ネコを肩に乗せて、 四つの目がじいっとクヴェルドルフを 見つめる場面が、なかなか怖かわいくて好きだったりする。 人にはいろんな理想のタイプがあるのだろうけど、 作者の理想と私の理想は、近いのかも。 (マーズ)
『オーディンとのろわれた語り部』 著者:スーザン・プライス / 訳:当麻ゆか / 出版社:徳間書店
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管理者:お天気猫や
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