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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年03月07日(金) --

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「中国茶 風雅の裏側」

今や、中国茶は定番のお茶で、紅茶や日本茶よりも、
頻繁に飲むようになりました。
そうなると、それなりに、味や値段、品種、お店にも
小うるさくなってきます。

一番のお気に入りは、台湾系の烏龍茶。
かつて、ウーロン茶というと、缶入りのお茶の、
濃い茶色で味もちょっと苦め、という印象がとても強く、
初めて中国茶を買ったときも、烏龍茶は避けて、
ジャスミン茶や桂花茶など、香りのあるお茶を選んでいました。
ある時、紅茶屋さんで、「金萱(きんせん)」の烏龍茶を
大量に買っている人を見ました。
そんなにおいしいのだろうかと、試しに買ってみたのが、
烏龍茶の魅力に気づいたきっかけ。
緑茶のように薄い水色で、香りもさわやか。
苦みもこれっぽちもなく、すがすがしいお茶でした。
そんなに高いお茶ではなかったのですが、今でも、あれ以上に、
おいしい!と、感激するお茶には、まだ出会っていません。
缶のウーロン茶の味しか知らなかったので、思いもよらない、
驚きのおいしさだったのです。
以後、いろいろ中国茶を飲むようになったのですが、
一番好きなのは、やはり、烏龍茶です。

さて。中国茶といっても、ピンからキリまで、多種多様。
たかだかお茶に、何千円とか、何万円とか。
ものによっては、十万円単位。
「大紅袍(だいこうほう)」というお茶は、百万円単位
(オークションでは、20グラムで250万円!)だとか。
「大紅袍」は、武夷岩茶の最高峰で、歴代皇帝に献上されたという
伝説的な銘柄。
「大紅袍」にまつわるエピソードはたくさんあるようです。
現在も樹齢400年の茶樹から、お茶が作られているのですが、
オリジナルの母樹は4本と、本物の「大紅袍」は稀少で
(わずか1キログラムほどの茶葉しかとれない)、
一般人の手にはいるようなものではありません。
それなのに、中華街のお土産物やさんで、500円くらいで
小さなパッケージ入りの「大紅袍」を売っているのが、
ずっと不思議だったのですが、本書を読んで、しみじみ納得しました。
(『第2章 大紅袍と商標権』)


今まで、中国茶のカタログ(「中国茶図鑑」/ 工藤佳治著 / 文春新書)を
眺めながら、「これ、飲んだ」、「あれ、飲んでない」と、
のんきなものでしたが、さわやかな味わいの背後にある、
生臭いビジネスのからくりを知り、ちょっとスリリングな感じです。
値段が高ければ高いほど、いいお茶だと思ったり、かびくさければ
かびくさいほど、古くて上等なお茶だと思ったり(プーアール茶)、
人工の香料にだまされて、お茶の質に気づかなかったり。
高すぎるお茶も、プーアール茶も買わないけれど、それでも、
単純な私なんかが、一番だまされやすいようです。
もっとよく考えて、お茶を買おうと、
気持ちをひきしめたりしています(笑)


でも、この本を読んで初めて、「中国茶」というものが
わかってきました。
もちろん、そんなことを知らなくてもおいしいものはおいしいけれど、
「中国茶」とか、「烏龍茶」とか、今までおおざっぱにひとくくりに
していたお茶の個性、「顔」が少し見えてきた感じです。
たとえば、最近よく、「金萱」・「四季春」・「翠玉」などの
烏龍茶を見かけると思っていたら、
台湾が力を入れている「御三家」であったとか。
お茶(プーアール茶)の衛生問題など、初めて知ったこととか。
その他、缶・ペットボトル入りのお茶の略史など、
身近な話も、面白かったです。

また、この本は、中国茶ビジネスにとどまらず、「茶」から見た、
中国社会のルポともいえます。
「茶」という切り口で見た、中国は、やはり、したたかだった。
(シィアル)


「中国茶 風雅の裏側 − スーパーブランドのからくり」 著者:平野久美子 / 出版社:文春新書

2002年03月07日(木) 『オーディンとのろわれた語り部』
2001年03月07日(水) 『一瞬の光のなかで』

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