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古くて新しい、という形容はよくあるけれど。
どこにでもいるような4人きょうだいに起こる エブリデイ・マジック&タイム・ファンタジーを描いた 『とぶ船』は、イギリス的な親しみをさっぴいても、 普遍的なムードをもって生まれた作品である。 1939年という、第二次大戦の始まった年に出版され、 日本では1966年に訳された。 著者のルイスは、歴史小説をたくさん書き残した作家。
歯医者の帰りに見つけたお店で、 バイキング風の小さな船を買ったピーター少年。 店の老人に、"いまもっているお金全部と、それからもう少し"の 代価を払わねばならないと言われて買ったその船は、 願いをとなえれば、人が乗れるほど大きくなって、 持ち主をどこへでも─時代さえ越えて、運んでくれる 魔法の船だったのだ。
ピーターとシーラ、ハンフリ、サンディの4人は、 遠いエジプトや、過去の時代、神話の世界まで旅をする。 いつも、願ったのとはちがった展開になるし、 おなかは空くし、つらいことも、命がけの危険さえともなう旅。 けれども、必ず、誰かがそこに待っている。 そんな風に、冒険をしてみたい子どもたちの夢を、 かなえてくれる夢の船。
過去の時代で4人が出会った少女、マチルダの言葉は 印象深い。
マチルダは、星あかりのなかで、 みんなのほうをまっすぐに見て、しずかにいいました。 「いいえ、わたしは、わたしの時代のなかで、 わたしらしく生きていかなければなりません。」 (引用)
不自由なお姫さま、マチルダは、この物語の 主人公のひとりでもある。
しかし、忘れていた。 マチルダの存在も、すっかり。 わたしの小学校の図書館カードに、二度以上も貸し出しの記録が 残っているこの本なのに。
ただ、魔法の船に乗って、冒険の旅に出る─という設定だけは、 いまも見えない栄養になって、 わたしのなかに息づいているのだろう。 (マーズ)
『とぶ船』著者:ヒルダ・ルイス / 絵(挿絵):ノーラ・ラヴリン、表紙:太田大八 / 訳:石井桃子 / 出版社:岩波書店1966
2003年09月30日(火) 『死霊の王』2
2002年09月30日(月) 『トランスパーソナル心理学』
2000年09月30日(土) 『ラング世界童話全集』
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管理者:お天気猫や
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