HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館
このごろTVドラマでも子育てパパが頻繁に登場していますね。 子育てママもすごくかっこいいのですが、こっちは数が多いので 今回はパパの話。
先日のTVドラマで、子供のために毎日定時に職場を出るバツイチ子育てパパを 職場の同僚が『たそがれ清兵衛』みたい、と評する場面がありましたが、 この言い方いいですね。 クリーニングを受け取って、スーパーで安売りの野菜を嬉しそうに買って、 明るいうちに家に帰って子供にご飯作って、洗濯物をたたんで渡す、 普通の家事を何気なくこなして子供を大切にするパパって 親の代は嘆くかもしれませんが、今や相当かっこいい。 男手一つの場合は本当はそこに至るまでの経過の方が大変で、 そっちがドラマになった草分けがダスティン・ホフマン主演の 1979年の映画『クレイマー、クレイマー』、 四半世紀たって、日本でも一人で子育てするパパのモデルが出来たという所 でしょうか。 あ、『子連れ狼』があったか(笑)。
と、言う訳で、今秋公開の山田洋二監督の新作映画が期待されている中で、 今さらのようですが「たそがれ清兵衛」です。 アカデミー賞ノミネートで話題になった、チャンバラ少な目の時代劇 『たそがれ清兵衛』は名手藤沢周平の珠玉の短編『たそがれ清兵衛』 『竹光始末』『祝い人助八』のエピソードを組み合わせて登場人物を造形 しています。 映画を見た後、一部原作を立ち読み(三冊も買えない)してみました。 物語の原型となる短編「たそがれ清兵衛」は病の妻の看護のために 定時に仕事を終えて帰って家事をする武士ですが、 映画の「たそがれ清兵衛」では妻は病死していて、清兵衛@真田広之は 幼い娘二人と老母の世話の為にいそいそと帰宅します。 暗くなる前に家に帰るから「たそがれ殿」。 これは誰もがそうすべきだという訳ではなくて、本人も言う通り こういった事が「向いている」んですね。 仕方がないからではなく、本当に家族が好きだから世話をして、 それが実際に一番の楽しみとなっているのが主人公清兵衛の個性。 その人柄ゆえに原作でも上司達は親身になるし、 映画では『祝い人助八』のエピソードを取り入れて、 美しい出戻り娘@宮沢りえに思いを寄せられます。
もっとも、ただの家庭人というだけでは物語が盛り上がらないので、 主人公は藤沢作品らしく例によって物凄く腕が立つのですが、 その能力を生かして藩のお役に立つ事は乗り気ではありません。 だって、そんな仕事を引き受けてたら家族と一緒にいられる時間が減るもの。 下手をすると二度と家族に会えないもの。 そうはいっても今も昔もサラリーマンの辛い所は同じで、 喰っていくためには嫌でも組織の仕事を断る事は出来ない。
映画の中の見せ場である、果たし合いの場面に少し違和感を感じた 流れがあったので、 もとになった短編『竹光始末』を読んでみました。 主人公が仕事で斬りに行った男と話し込んでいるうちに、 身につまされて意気投合してしまう。 しかしながら、気安くなってふと洩した言葉から事態が急変する。 ああやっぱり、原作の短編の流れのほうは無理がない。 もともとの登場人物が異なっているのですから、 長い話の中に嵌め込むとほんの僅かですが、調整した跡が見えます。 なんて事を、映画に没頭している間気にする人はあんまりいないか。 いえね、別々の人が書いたバラバラの短編をつなげて 一つの長い話にするという遊びをやっていたりするものですから、つい。
実は私はTVの連続ドラマはちゃんと見ていなくて新聞のTV欄の紹介などで だいたいどういった話かを知るだけの事が多いのですが (ドラマの世界に入り込むのは下手だけれど物語の設定の流行に興味が ある?)、 最近のTVドラマで活躍する子育てパパはこんな感じでしょうか。 やむを得ず子供と接しているうちに人間的成長を遂げるパパ@草薙君、 失業して嫌々主夫に挑戦するうち仕事人間から家庭人に変わるパパ@阿部ちゃん 始まったばかりの夏ドラでは子育てパパが主役ではないものの、 キャリア指向な妻に逃げられた後、今やすっかりたそがれ清兵衛なパパ@蔵之介さん 子供最優先なので縁遠いけれど、それだけに善い人だとわかるパパ@高嶋弟君 生活面に関しては、だんだんパパの設定も子供と馴染んできたような。 あ、でも今の所TVドラマではみんな子供が一人っ子 だからなんとかなってるんだなあ。 清兵衛パパの時代のように、地域の人みんなが子供と老人を見守っていく生活は いまや遠い世界なのでしょうか。 それでも負けるな、子育てパパ(ママもね)。(ナルシア)
短編集『たそがれ清兵衛』『竹光始末』『祝い人助八』著者:藤沢周平 / 出版社:
いずれも 新潮文庫
映画『たそがれ清兵衛』監督:山田洋二 / 出演:真田広之・宮沢りえ
2003年07月23日(水) 『とてもかわったひげのねこ』
2002年07月23日(火) 『耳部長』
2001年07月23日(月) ☆ヤンソンさんが教えてくれたもの。
>> 前の本 | 蔵書一覧 (TOP Page) | 次の本 <<
管理者:お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]