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6月27日、トーベ・ヤンソンさんが亡くなった。
子どもの頃、『ムーミン』が好きだった。 よくテレビも見ていた。 好きだったけど、何となく苦手だった。 好きだったと、思いこんでいただけで、 ほんとうはやはり、かなり、苦手だったかもしれない。 ムーミンが、嫌いだったわけではない。 いま思えば、『ムーミン』の世界というのは、 何か悲しいものがあって、 見終わるといつも心に何かがひっかかっている、 そんなもどかしく、ビターな世界であった。
いま販売されている、 各種キャラクター商品はかわいいけれど、 スナフキンもかなり好きだけれど、 『ムーミン』の世界は、 決してかわいいだけのものではなかった。 アニメの中でも、 ニヒルに描かれていたスナフキンが、 そのビターな世界の象徴といえるだろうか。
子どもだったので、当時はよくわからなかった。 微妙な加減の陰りや、 日々の中で、ささやかにそして、 着実に降り積もる悲しみの存在には、 気づきもしなかった。 人生のもの悲しさの「ヒント」が、 『ムーミン』にはあったような気が、今はしている。 特に、大人になってから、 『ムーミン』のパペット・アニメーションを初めて見た時には、 何がというわけではないのに、 あまりにも、もの悲しくて泣きたくなってしまった。 その時のエピソードも、音楽も。 どうしようもなく、悲しくて胸を締めつけた。 そう、何がひっかかるのかというと、 それは、「孤独」だ。 淡々とした、静かな語り口。 それは、『ムーミン』以外の小説にも共通している。 小説にも、パペット・アニメにも、 常に「孤独」が描かれているのだ。
子どもの頃、「孤独」の意味を知らず、 何となく、居心地の悪い悲しみを感じた。 大人になって、「孤独」の意味を知り、 どうしようもない悲しみをこらえきれなかった。
そしていま。 ヤンソンが描いていたことの中には、 「孤独」を愛する強さ、 が、あったのではないかと、そんな気がしている。
ムーミンには、いろんなエピソードがある。 たくさんの仲間たちがいる。 もちろん、陽気でにぎやかなキャラクターだって。
それなのに、私の中に残ったのは、 せつないようなもの悲しさと、 孤独、を思う気持ち。 ヤンソンさんの小説の基調には、 「孤独」を尊重する思いがあるのではないだろうか。
ヤンソンさんの訃報。 孤独の意味。 私にとってのムーミン。 そして、ヤンソンさんの小説。
とりとめもなく、そんなことを考えつつ、 手を合わせ、目を閉じる。(シィアル)
・「クララからの手紙」 訳者:冨原眞弓 / 出版社:筑摩書房
・「たのしいムーミン一家」 訳者:山室静 / 出版社:講談社e.t.c.
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管理者:お天気猫や
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