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夢の図書館新館

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-- 2003年07月25日(金) --

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『Harry Potter and the Order of the Phoenix』

今や子供からお年寄りまで、世界全体を巻き込んだ エンターテイメント中のエンターテイメント、 「ハリー・ポッター」シリーズ第5作目です。

4作目の華やかなゲーム設定とアクションにつぐアクションから一転して 今回はサスペンスにつぐサスペンス? 15歳のハリーは滅茶苦茶不機嫌。子供扱いされて何も知らされないのは 我慢がならないけれど、子供らしくかまってもらえないと淋しくなる。 頑張ったのに正当に評価されていないと不満を感じる一方、 そんな大した力は自分にはないと不安になって落ち込む。 傷付き易くて傲慢で孤独。ただいま思春期真っ最中。

ヴォルデモートの復活を信じない魔法省は、 ハリーとダンブルドア校長の証言を黙殺し、 監査役を送り込んでホグワーツを支配下に置く事を企みます。 ハリーにとっての大切な居場所である学校は、ひどく息苦しく 居づらい場所となります。 状況はあまりにもハリーに苛酷なので、ムカつくなキレるなと 言うほうが難しいのですが、それでも我慢して、落ち着いてハリー、と ほとんどハリーの理性と頭脳の役割を担ってしまったような ハーマイオニーのように、本に向かってしょっちゅう呼びかけてしまいます。

学年最大の行事がO.W.L.s(普通魔法レベル試験)だけ、 監査役の締め付けは常軌を逸して厳しく、しかも主人公はどん底、 というこの重苦しいシチュエーションで、 それにしてもなんで場面場面はこんなに笑えるのでしょうか。 あちこち思わず吹き出してしまうシーンや小ネタ満載で、 読んでいる最中はハリーには悪いような気がするくらい 笑いっぱなしでした。

主人公が一人で暗くなっている間、光るのはこれまでお馴染みになった 脇キャラの面々。 ハリーの友人の少年少女達は健気で颯爽と格好良くて、 ハリーを支える大人達は優しくて一途で可愛い! いろいろな面が現れて、成長してゆく各キャラに対する愛着もひとしお。 抑えに抑えた勢いがついに爆発するクライマックス、 ディテールの遊びのように見えた情報が伏線としてつながって来る手際、 毎度ながらお見事な技です。

作者発言から話題となっていた主要登場人物の死も、私としては 次回作からエンディングにかけての大きな伏線だと信じています。 5巻そのものの位置付けは、ハリー・ポッター後半部の始まり、 物語の終焉に向けての序章、といった控えめながらも 転機となる感じでしょうか。 いつも皆を助けてくれた小さな正義のヒーローは、 自らの運命と闘う若者になってゆく。 今は辛くても絶え抜いて、お父さんやその友達みたいな いい男になってね、ハリー。

原書を読みたいけれど厚さにたじろいでる皆様、 5巻は4巻より日常的な設定で、コミカルな場面が多いので 理解しやすいうえ、文章が更に読み易くなっています。 書店での値段に二の足を踏んでいる皆様、 amazon.comでUK版は3割引、 US版はなんと5割引!一度原書で読んでおけば、 6巻7巻は確実にずっと楽に読めますよ。 読み終わるとずーんと淋しくなってしまいますが、 読んでいる間の楽しさは格別。 さあ、一夏で一年分の魔法生活を! 日本語訳は2004年、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 (静山社)というタイトルで発売される予定。お楽しみに。 (ナルシア)


『Harry Potter and the Order of the Phoenix』 著者:J・K ・Rowling / 出版社:Bloomsbury(ブルームズベリー:英国),Scholastic(スカラスティック:米国)2003

2002年07月25日(木) 『オペラ座の怪人』(その2)
2001年07月25日(水) 『死の接吻』

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