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☆たましいに、近く。
臨床心理学者・心理療法家の河合隼雄が、
「たましい」の視点から、
児童文学系ファンタジーの名作を読み解く。
同じ著者の「猫だましい」にもあったが、
たましいという見えないものを、心と身体にセットした
のが人間だという仮定をもつと、児童書ファンタジーはまさに、
見えないものの王国で、古典的名作といわれるものは
なおさら「たましい」だらけである。
『人間のたましいは常にファンタジーを人間の心のなかに
送りこんできていると言うべきであろう。』(/引用)
とりあげられた作品は、
ストー「マリアンヌの夢」
ゴッデン「人形の家」
リンドグレーン「はるかな国の兄弟」
ギャリコ「七つの人形の恋物語」
カニグズバーグ「エリコの丘から」
ピアス「トムは真夜中の庭で」
ノートン「床下の小人たち」
マーヒー「足音がやってくる」
マクドナルド「北風のうしろの国」
ボスコ「犬のバルボッシュ」
ル・グウィン「ゲド戦記」(1-3)
ストーリーそのものも詳細に読み込まれているため、
未読の作品については、意を決してほしい。
本当を言えばもちろん、先に読んでおくべきだと思う。
半数しか実際に読んでいなかった私は、
マーヒーの「足音がやってくる」でミステリの答えを知った。
「はるかな国の兄弟」も、未読だけれど筋はわかってしまった。
「床下の小人たち」のシリーズは、十代で一作目を読んだだけなので、
近いうちにきちんと読みたいと思っている。
(ネット界のように「ネタバレ注意」は無い)
最終章の「ゲド」では、各巻に相当のページを割いて、
この「たましい」の書を照らしている。
王子アレンが大賢人ゲドに抱く気持ちとその変化についても
くわしく言及されている。
本書では、「帰還」「アースシーの風」以前の三作を
論じているが、その三作から、明確にその後のゲドたちの姿を
抽出し、予見していることに共鳴させられた。
(最初の出版は「帰還」以前の1991年)
今回思ったのだけれど、河合隼雄の名前にある「はやぶさ」と
ゲドの通称である「ハイタカ」は、たましいのレベルで
空高くシンクロしていると言えないだろうか。
「たましい」の出現の深さを考える手引書としてだけでなく、
名作のストーリー展開を名手の導きで
概観できるという意味でも、
手もとに置いておきたい。
(マーズ)
2002年06月20日(木) 『マレー鉄道の謎』
2001年06月20日(水) 『クマのプーさんティータイムブック』
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管理者:お天気猫や
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