(SleepWalking)



みえない
 
夕暮れ時
空から蜜が滴り落ちて
雲が大きくのた打ち回る
時々耐えれずに振り落とすんだ
その雨粒
涙みたいにはらはらと
大粒の涙


遠くのほうから
誰かが呼んでる声がする
おぉい
こっちだ
こっちにおいで
さぁ
僕を
みつけてごらん


だけど声は
間違いなく空から降ってきている
錯覚
誰も
みえない
挑発的な甘い声が
どこかからこだまする
歩いても歩いても見つからない
そこには何もないんだ
きっと
そこはすべてを吸い込んでいる
小さく深い
穴なのだ

2004年07月16日(金)


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かえる
 
小さなものも大きなものも
けっきょく
その命などちっぽけなものだということを
わたしは先生に教わりました
先生は
変な音をたてて飛んでいる虫を ぱちん と
叩いて殺したあと
ほらね、と言いました


きっと人間も同じなのです


その帰り道
大きなかえるを見つけました
大きな目をして
わたしを見つめていました
わたしは怖くなってにげだしました
けれど かえる
追いかけてくるのです
げろげろと鳴きながら
口角をあげて笑いながら
そこで思い出しました
小さなものも大きなものも 関係ないんだって
そしてわたしは傘を持っていること
ほらね


忘れてはいけないのは
みんなちっぽけな命だから
人間が大きな顔をしてはいけない ということです
人間はえらくなんかないのです
ちっぽけな命は守らなければならないのです
わたしは
口角を上げて笑う変質者を殺した
ちいさな殺人鬼

2004年07月13日(火)


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あいたい
 
あなたは
ただの、気になるひとなの
あたし
あなたみたいなひとには生理的に弱いって
解ってるから
気になるだけなの


だけ、なの


だから
お願いよ
夢にまで出てこないで
あたし本当にあなたのことが好きなんだって
勘違いしちゃうじゃない
違うの
そんなんじゃないから


おねがいよ


ただ視界から外せなかっただけ
あなたが誰と笑っていても
そんなこと構わなかった
あたしは
あなたの近くには居られなかったから
だから


何で今更
あいたいなんて思うんだろう
あたし
そんなんじゃないのに
どうして?

2004年07月05日(月)


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よる
 
眼鏡のレンズが
エッジに光を集めて反射する
傾きかけた太陽があなたを
愛しているのだろう
きっと


声を出すことすら出来ない
その指が
あたしを撫でるのを
大人しく感じているしかない
レンズ越しの優しい眼があたしを殺すなら
それでも良いと思ったのよ
あたしは幸せになれるから


あたしは


冷たい夜の空気と
消えてしまったあたしをあなたが
抱いていてくれるなら
こんな日も悪くない
うっすらと考えて目を閉じる
口付けの雨が降るこんな夜に
あなたが泣くことを願いながら。

2004年07月02日(金)


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