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2002年08月27日(火) モラルの相違

昨日の日記で同居人に対する怒りの言葉を色々綴った私だが、
御盆の間、子供や家に対する態度が変わって来た同居人を見て、
少し考えを改めようか・・・・・・と思っていた。
しかし、このお盆の間に同居人との考えの違いが、
ハッキリ理解出来た出来事があった。

それは休みの最終日の事だった。
家族3人、食卓テーブルに座り、あるニュース番組を見ていた。
番組では女子大生がメル友の男に殺害されるという、
悲しく忌まわしい事件を放送していた。
アナウンサーが一通り事件の真相を説明すると、最後に殺害された女の子の
父親が出て来て、インタビューに答えていた。
とても神妙な面持ちで話すその父親は、
アナウンサーや周りの人を気づかいながら、
「二度とこの様な卑劣な事件が起きない事を祈っています。」と話す。
でも、その顔は自分の愛娘を殺された悔しさや悲しみから切ない気持ちが伝わり、
言葉尻は涙声になっていた。
父親はインチビュー中、涙を流す事はなかったが、表情からその心痛が伺えた。
私は悲しくなってしまった。
自分が途轍もなく大きな悲しみに飲み込まれている状況なのに、取り乱す事も
なく、人の話を聞き、そして誠意を持ってそれに答えようとする人・・・。
こんな人の子供がどうして無闇に殺害されなければいけなかったのだろう・・。
手塩に掛けて育て上げた娘を殺害された悔しさは、
これからどうやって癒すのだろう。
それを考えていた時、横から声が聞こえた。





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私は同居人の発した言葉に戦いた。
この人の心の中には人に対して、同情する優しさや誠意が欠落しているのか・・。
実際、殺害されてしまった女性がメル友に簡単に逢ってしまったのが、そもそもの
発端になってしまった訳だが、テレビ画面いっぱいに映った悲痛な顔の父親を
見なかった訳ではないだろう・・・。
自分自身だって、人の親だ・・・・。
それを見ても、まだ、そんな事を言える同居人の心中が解からない・・・・。
私の戦きは次第に腹立たしい気持ちになって来て、私はこう言った。
「もし、自分の子供が逆の立場だったらどうする?
息子のメル友の相手が、奇特な女性で逢った途端に
刺されて死んだらどうする?
棺桶に入った息子の耳元で・・・・・
「お前は自業自得で死んだんだから仕方ない」って言えるの?」

極端な例だとは思ったが、人の痛みを痛みとも思わない同居人には、
この位の事を言わなければ理解出来ないだろうと思った。
同居人の顔を見ると、「自業自得」と言い放った時とは逆に罰の悪そうな顔を
していたが、私はそれ以上話しても、この人の考えを聞くと、
気分が悪くなりそうだったので、デスクに戻った。
同居人とは「夫婦」と呼ばれる関係だが、
ハッキリ言って夫婦と言えども、こんな考え方をしている同居人とは十把一絡げに
なんてして欲しくないのが本心だ。
どうして私は・・伴侶をこんな考えをしている人なんかにしてしまったのだろう。
同居人は普段、ニュースなんて見ない、テレビと言えばゲームばかり、
家は新聞も取っていない、私が新聞を読みたいと言えばネットで済ませろと言う。
世の中で起きている事は別の世界で起きているとでも思っているのだろうか・・。






今日、同居人が帰宅すると私に「明日、保険屋さんが来るから・・」と言う。
私は前から「それだけは止めてね」と言っていた。
今回は御給料日と引き落とし日の誤差があり、
「仕方ないだろ」と同居人は言うが、
私はどうしても、その保険屋に逢いたくなかった。
まして、家に来られるなんて・・・・。
逢いたくない理由は色々あるのだが、それよりも同居人には前から逢いたくないと
言っていたのにも関らず、自分は関係の無い様な顔をしているのが
気に入らなくて、又口論になってしまった。
もう一緒になって罵倒しあったり、怒鳴りあったりしているのが、
馬鹿みたいに思えて、
私は寝室の戸を思いっきり閉めると同居人を部屋から締め出した。
それなのに、同居人は何度も何度も寝室にやって来て、私の事を怒鳴り散らす。
私は「こんな馬鹿みたいな人を構っていても仕方ない」と思い、
黙んまりを決め込んでPCを弄っていると、

「お前なんて何処かの男とメールの遣り取りばかりしているんだろ?」
「何時も何時もPCばかり・・・・」
「手帳だって見てるんだからな! !」

同居人はそう言って又怒鳴り始めた。
メールなんて、ものの何秒で打てるのに何時も何時もPCばかり弄ってとは、
どういう意味なんだろうと思っていたが、
同居人はPCなんて一切、使えない人なので、
きっと仕事でデスクに座っているのが気に入らないのだろう。
先月からは同居人に家の出納金の全てを任せたのにも関らず、食費を一銭も
貰っていない私は、自分の御金から食費を賄って来た・・・。
それなのに、理不尽な事ばかり言うので、私も又機嫌が悪くなって・・・・・。

「私が何をしようと貴方には関係ないでしょ?」
「手帳を見たからって何なの?他に男が居たからって何なの?」

そう言ってやった。
同居人と私の間には愛なんて物も、労るという気持ちも無いのだし、
前から御金が出来たら、別居、或いは離婚しようと話していたのだから、
究極、私が何をしても、もう関係ない事のように思う。
実際、同じ事を同居人に何度も言われた。
同居人はもう何も言えなくなったのか、寝室を後にしたが、
10分も経たないうちに又やって来て。
私に謝っていった。
家族で食べようと思っていた夕食は、
気分が優れない為に食べたくなくなってしまった。
少し泣きたい気持ちになる・・・・。
何に泣きたいのか解からないが、もうここに居るのにも疲れた・・・。
結婚して、ずっと同居人の為、家族の為、そう思って遣って来たことが
報われる事などなく、
迷惑ばかり掛けられて挙句の果てに何も労って貰えない・・・・。
周りの人にも、「惨めな結婚生活」と言われて来た・・・。
やっぱり、自分でも思うが・・・・私が可哀相・・・・・。
彼に・・・電話をする。
最近は隣室に同居人が居ても、堂々と電話をするようになった。
同居人は彼へ電話している事なんて、全然、気づいていないのだろう。
テレビゲームの機械音しか聞こえてこない。

「どうしたの?旦那は?僕は今、帰り途中だよ?」

彼の声を聞くと、とても癒される。
今日は私も風邪気味で頭痛もしていた。
子供が調子が悪い事もあって、友達の退院の手伝いも頼まれていたのに、
それも、断ざるを得ない状態だった。
彼に逢うのを躊躇していたが、今すぐに逢ってどうしても心を癒して欲しかった。

「途中まで行くから・・少しだけ・・・・」

無理にお願いして、逢う事を承諾してもらう。

「すぐに帰ってくるんだろ?」

私には同居人の声なんて、もう上の空でしか聞こえない・・・・・・・。


待ち合わせをした駐車場に、彼が先に来て待っていてくれた。
私は彼の車の横に自分の車を止めると、急いで彼の横に座る。

「どうしたの?」


「うん?逢いたかったから・・・
それから、これ・・・。
今日も手紙を書いてきたよ。でも、1枚だけね。」

この前、お金を返したように今日も借りたお金を返す。
でも、今日は一枚だけ・・・・。
残りの分は次に逢った時に・・・。

「いいの?大丈夫?」

私は今日はそれだけしか返せなくてごめんね、と謝った。
それから、私の車のキーが少し可笑しいと言ったら、直ぐに見てくれた。
さっきまで可笑しかったキーが彼が触ると途端に直る。
どうしてだろう・・・。
普段の行いがいいから?
二人で笑って、彼の車に戻る時、思わず私から抱きついてしまった・・・。
駐車場は大きな交差点の一角で、周りは道に囲まれている。
夜だから車は余り走っていないが、少し照れくさそうにしている彼が可愛い。
そのまま、笑って抱き合いながら歩いて、隣にある彼の車に戻る。
車に戻ると彼がキスしてきた。

「あのね・・・そのお金でラブホに行かない?2時間だけ・・・。」


「う・・・ん・・・。行こうか・・・・。」

今日は私から誘ってしまった。
彼も自分が誘惑に弱いな・・・と言っていたけれど・・・、
直ぐ側にあるラブホに入る時は何時もの様にコソコソと車を運転するのではなく、
何故か今日は強引な感じで運転していた。
それを見る私も何故か嬉しくなる・・・・。
彼が御飯を食べていなかったので、「何か買ってくれば良かったね」と苦笑い。
二人で冷蔵庫にあるカップラーメンを食べた。
その間、テレビを点けてニュースを見ていた。
明日の天気の話や政治の不正問題、それから又誰かが殺された話。
彼と・・誰が悪い、どうしたら問題を防げるか、世の中の無情さ・・色々話した。
私は・・・本当はこういう人が欲しかった・・・。
自分を取り巻く世情を語ったり、毎日、移り変わりの激しい世の中で、
それに押し流されないような術を身につけるにはどうしたら良いのか・・・・。
普段から、そういう話を同じレベルで話せる人が欲しかった。
彼は何時も私が疑問に思っている問いに直ぐに返答してくれる。
自分が解からない事は直ぐに調べてくれる・・・・・。
御互い好奇心旺盛なので、そういう話には事欠かない・・・・。
毎日、ゲームばかりして、世の中で起きている事は自分とは全く無関係だと勘違い
している、同居人とは正反対だ。
世に目を向けて、それについて御互い話をしている時の彼と私は同士の様にも
感じてしまう・・・・。
疑問と答え・・・・深く感じて理解しあう、人間性そして尊敬と信頼。
とても、大切な事だ・・・・。

久しぶりに一緒に御風呂に入った。
御互い初めて逢った時から比べたら「太ったね」と笑った。
そして、どちらも「そのままで良いよ」と言い合う。
彼との2時間はあっという間だった。
何時も彼と一緒にいると時計が急ぎ足をしているんじゃないのか・・と思うほど、
本当に早く流れていく・・・・。
その間に色々話した。
御父さんの話を聞くと・・・。

「あのね・・・もう字を書いても昔のオヤジの字じゃないの・・・・
丸くなっちゃって・・・」

どうやって、彼を元気付けたら良いのか解からなくて、
私はこんな事を言った・・・。

「でもね、字は人也と言うから、御父さんも病気をして・・・
性格が丸くなったんじゃないの?」

彼は天井を見ながら、「そうじゃ無いんだよ」と言う。
もう、小学生みたいな字になったと・・・・。
私はそれを聞いて、過去に御祖父ちゃんが死んだ後になって見た
あの日記の事を思いだした・・・・。
癌の痛みに耐えながら書いた日記・・・・。
御祖父ちゃんの字はもう昔の活力のある字ではなく、
死んで行く人の悲しい字だった・・・。
彼が天井を向いている間、左の目から涙が落ちた。
私の方を向かなくて良かったと思った・・・・・。

何日か前に一人で悶々と考えていた、彼の家の人の事を話す。
彼の答えはハッキリしなかった。
家の人が働いて居なかったとしたら、離婚出来るのか、出来ないのか、
彼にとっても先の事は一切、解からないという事なのだろう・・・・。
ただ、「僕と一緒になったら働く?」と聞かれた。
「うん、働くよ! !」
私は即答した。
外に働きに出たら、きっと決った額の御給料を毎月出して貰える。
彼はきっと、家の人や子供にあげる御金に振り回されてしまうかもしれないから、
私の稼ぎが生活費になるんだろう。
彼の今のおこずかいだって、多いほうでは無いし、
出来れば、もっと沢山あげたい・・・・。
お金でなんて苦労させたくない・・・・。
好きな人に不自由して欲しくない・・・・。
でも・・・・・・。
考えてみたら、今だって外に働きに行けない訳が無い・・・・。
彼に言ってみた・・・・・。

「働きに行けって言われてるけど、私の御金を同居人に使われるのは嫌だ。」

彼は私が働きに行けば、もっと自分で好きな事が出来るよ。と言っていたけれど、
私は今のままで充分。
貴重な時間や労力を同居人の為になんて使いたくない。
彼の為になら、幾らでも使いたいけれど・・・・。
それが、彼と同居人への想いの違いかもしれない・・・・。

彼の胸に顔を埋めていると、何時も暖かくて眠くなる・・・・。
幸せすぎて、このまま眠ったら、もう起きられないかも知れないと思う。
私にとってはその方が良い事のようにも感じる。

「駄目だよ、すみれ眠っちゃ・・・・」

彼が、そういう頃には少し時間をオーバーしてた。
30分だけ延長して帰る。
駐車場に着いて私が車を運転して帰る頃にはスッカリ心も体も癒されて、
後は家に帰って彼に抱かれた余韻を残しながら眠るだけだったのに・・・。
家に帰ると、窓には灯りが点いていた・・・。
ドアの鍵を開けると内側からチェーンが掛けられて、開かない・・・・。
私は頭に来て、又階段を下りて車に向った。
でも・・・・車の中で何時間も何もしないのは時間の無駄だと思い、
又家に戻るとチェーンが開いていたのを良い事に、PCだけ持ち出した。

「こんな時間まで何してたのよ! !」

私は同居人の声を尻目にとっととドアを開けて家を後にする。
帰宅したのは午前4時・・・・。
その間、ずっと車の中で書き掛けの日記を書いていた。
今日は彼に同居人との遣り取りを一言も話さなかった。
やっぱり、彼と私の生活は掛け離れているから・・・・・。
でも、又何か在った時、一番に声を聞いたり顔を見たりしたい・・・。
彼が私の心の特効薬なのは変わらない・・・・。



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