僕らの日常
 mirin



  不可抗力@終司

白く冷たい手に触れた。
繋いだ指先から全身に小さな音が聞こえた気がした。

あれは、星の砕けた音だったのかもしれない。



目の前に暗い空
月も星もない、暗い灰色で厚い雲の天上

誰もいない屋上に今はオレ独り

気味の悪いくらい静まり返った今日の校舎は休校中。
補習や倶楽部絡みでここに来る生徒も少なくはない

時折、生徒達の足音や笑い声が遠くから聞こえてくる。


けど、それでも静かだと思えた...
呆けた頭で、左手で瞳を隠し、右手を空の方に伸ばす。

空しいくらい、何にも掠りもしない

後頭部の下の硬いコンクリートの冷たさを感じる。
オレは、天上に伸ばした手をそのままに目を閉じた。



『…柊…きみ、泣いてる?』


目を閉じてから、何も聞こえなくなった。
外にいるのに暗く閉ざされた空間のような違和感に
そっと手を下ろし、瞳を開く。

眼を開けば、よく見知ったアイツがオレを覗き込む様に
立っていた。

「誰が泣いて」
「きみが」

続けようとする言葉を遮る様に間髪入れずアイツが返した。

「涙出なくたって、泣いてるのわかるよ」
「…お前も泣けよ」
「泣かないよ。悲しいことなんてないから」
「嘘つけ」

少しの間。苦笑気味に笑ったアイツの表情に影が挿す。

「まぁ、当たり。やっぱり嘘かな」
「泣けよ」

「次限の補習に出ない?柊が来れば必要ないだろ」


宇宙の手を借りて、コンクリートから起き上がる。
軋んだ身体がパキだかピキだか妙な音を上げていた。

相変わらず、空は晴れない雲のままだ。
灰色で何も見せない雲の壁

自然と握るアイツの手、オレの右手に軽い重みが重なった。

2005年09月21日(水)
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