2009年08月28日(金)  『映画とたべもの』と「レシピに著作権がない」問題

ご近所仲間で映画通のT氏に贈呈された『映画とたべもの』を読み始めた。映画評論家の渡辺祥子さんが『マチルダ』のパンケーキや『初恋のきた道』の水餃子やアメリの『クレーム・ブリュレ』など劇中に登場する食べものをキーワードに綴ったエッセイ。登場する食べものの数もさることながら、主演男優の好きな飲み物が紹介されていたり、同じ食べものが登場した他の映画の名前を挙げたり、内容ももりだくさんでおなかいっぱい楽しめる。

読んであらためて気づいたのは、わたしも映画を食べもので覚えていること。食いしんぼだから「おいしそう」と思いながら観てしまうのだろう。ストーリーは忘れてしまって食べものだけ覚えている作品もある。食べる場面を書くのも好きで、とくに映画ではよく食べる。映画における食事回数の平均値(そんな統計はあるのか?)は上回っていると思う。公開中の『ぼくとママの黄色い自転車』では主人公の少年が旅先で出会う人ごとに食事を共にしている。

知り合いの監督やプロデューサーには「食べものの映画、やりたいです」とアピールしている。脚本家じゃなくても試食家でもいいです、と。映画関係車の間でも話題の『南極料理人』(公開中)と『食堂かたつむり』(製作中?)は、すごく観たいし、関わっている人がすごく羨ましい。

何を食べるか、誰と食べるか、どんな風に食べるか。食事は食べる人の生活や人生を豊かに物語る。それを作る場合はなおさら。どんな材料をどれぐらいずつ、どんなスパイスや隠し味を使うのか、そこに料理人の好みや食べる人への思いは色濃く反映される。先日、東京カリ〜番長の調理担当で著書も多数ある水野仁輔君と話しているときに、「レシピには著作権がないんですよ」という話になった。オリジナルのレシピでも材料の「小さじ1」を「2」に替えられたら、真似されたとは言えなくなるとか。「だから、レシピにキャラクターをつけていかなきゃいけないんです」と水野君。簡単に真似されるレシピにオリジナリティをつけるのは、料理人の親しみやすさやユニークさなのだという。水野君の書くレシピには物語が宿っていて、それを読むと食べたくなり、作りたくなる。でも、レシピって本来、作り手のあたたかみを添えて伝えられるべきもの。分量だけを記した指示書みたいな顔つきをしていても、著作権は守られるべきなのではないかしら。

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