2007年08月28日(火)  マタニティオレンジ167 ベビーシッター代ぐらいは稼がないと

ジャンルは違うけれど子育てしながら創作の仕事を続けているS嬢と電話。一緒に組みたい仕事があり、相談のメールを送ったところ、「話したほうが早いから」と電話をくださった。朝6時に起きて小学生のお子さんのお弁当を作って送り出し、午後早くに帰って来るまでの6時間足らずが勝負。放課後に打ち合わせが入るときはベビーシッターさんにお願いしているという。保育園に9時間預けているわたしより、はるかに時間のやりくりは大変そう。「時間が限られるから、ひとつひとつの仕事を慎重に選ぶようになったわね」「確実に結果を出さないと、次の仕事が来ないから」という緊張感のある言葉に背筋が伸びる。その道では「女王」と呼ばれた売れっ子なので、営業しなくても仕事はどんどん舞い込むらしいが、「下手な仕事したら、失うものが大きいし、それを取り返す余裕もない」と仰る。

わたしがお願いしようとしていた仕事は、作品のサイズといいギャラといい申し訳ないような内容だったのだけれど、「今井さんとは一度お仕事したいと思っていたから」とS嬢。それがこの仕事を請ける理由になる、とありがたいことを言ってくださる。あいにく今回はスケジュールが合わず断念することになったけれど、「ぜひ何か一緒に作りたいから懲りずに声をかけてよ」と社交辞令ではなく言ってくださった。

「それにしても、このギャラってありえないですよね」。今後のためにも感触をうかがっておくと、「お金は関係ないと言いつつ、これだと赤字になっちゃうかな」。そう言ってS嬢は「せめてベビーシッター代は稼がないとね」と続けた。子どもを預けて働く以上、それにかかる費用はせめて稼がなくては、「仕事」ではなく「趣味」になってしまう。その発想はわたしにはなかった。子どもが生まれると、大黒柱のお父さんは「家族を支えなくては」という使命感が仕事に張り合いをもたらすというが、働くお母さんにも、子どもがいないときにはなかった働き甲斐が生まれるのだ。自分の仕事に値段をつけるとき、相場があってないようなものなので、いつも迷ってしまうのだけれど、「保育料ぐらいは稼がないと」という基準は明快で、いい。

2005年08月28日(日)  高円寺阿波踊り2日目
2004年08月28日(土)  『心は孤独なアトム』と谷川俊太郎

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