3年前に会社を辞めて以来、健康診断を受けていない。会社員時代は年に2回、強制的に受けさせられたのだけど、申し込み用紙が回って来て、いつにしますかとせっつかれないと、つい機会を逸してしまう。それでも突然受けようと思い立ったのは、先週から頭痛とだるさが続いていて、健康に不安を覚えたからだった。
保険組合に電話をし、提携している病院施設の一覧をファックスしてもらい、最寄りのクリニックに電話をかけ、「急なんですけど、今週の木曜日はどうですか」と問い合わせると、あっさり予約が取れた。なんだ、こんな簡単なことだったのか、と拍子抜けする。案内と検便用キットはすぐさま速達で発送され、火曜日の午前中に届いた。
人間ドックを最初で最後に受けたのは、10年以上前。一泊二日プランで、宿泊先は赤坂のニューオータニ。同期のママチャリ嬢と金曜日を午後半休し、旅行気分で出かけた。一日目の検診は視力検査と身体測定だけ。さっさと済ませた後は、まわる展望カフェで、ひと駅先に見えるわが会社を見下ろし、優雅にお茶をした。夜はコイバナをし、「今のわたしの人生に男は邪魔」と言い切るママチャリ嬢に驚いた。翌日の検診を終えるとホテル内のレストランでランチをして帰った。
そのときの記憶があるので、今回は日帰りドックといえども半日ぐらいはかかるんだろうなと覚悟していたら、朝9時に始まり、オプションの婦人科検診二つ(子宮がんと乳がん)を終えても10時半。子どもの頃、父親が「お父さんな、明日、人間ドックやねん」と言うたびに、「犬になるん?」「ドッグやなくて、ドックや」「ホットドックの親戚?」のようなやりとりがあった。検査入院を船の点検修理をするドックにたとえたのはうまいけれど、1時間半では通常の検診よりも早いぐらい。スピードの秘密は流れるような連携にあり、ひとつの検査が終わると、「こちらです」と次の検査からお呼びがかかる具合で、持ち歩いた本を読む時間はほとんどなかった。きびきびした中にも血は通っている感じで、戸田恵子似の元助産師だったという看護師さんに採血されながら、「子どもの写真ってのは親のためにあるのよねえ」なんて話をした。
検査終了から15分ほど待ち時間があり、最後のお医者さんからの聴診と説明がたっぷり30分。「脳梗塞になったとき、最初の10秒が勝負です。10秒で気を失いますから、すぐに携帯で110番してください」。脅すような一般論を言った後に、「おたくは大丈夫のようです」と安心させ、「症状は30ぐらいありますが、覚えきれませんから4つだけ教えます」とお役立ち情報が続く。心筋梗塞や脂肪肝が増えていることに触れてから、「おたく(わたしのこと)の場合、内臓脂肪は少ないので心配はありませんが、脂肪が少なければいいというものではなく、適度についているほうが長生きするんですね。そういえば、あのニュースキャスター、最近見かけませんが、どこか悪いのかもしれませんねえ」……。
どなたにでも懇切丁寧なのか、わたしが聴き入ったせいなのか、話せば話すほど調子が出て来て、いつ終わるのだろうと不安になってくる。今日診た限りでは、わたしの体調不良は先週からの風邪の名残と夜中の授乳による寝不足が原因のよう。「子育てでいちばん大事なのは、あなたの精神が健康であることです。そのためには趣味を何かお持ちなさい」と言われて、「仕事が趣味みたいなものなので、いい息抜きになっています」と答えると、不思議そうな顔をされたが、検診結果をネタに際限なく話を膨らませるお医者様も楽しそうだった。
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