■新宿のスペース107にてSTRAYDOG&J-TOP Produce公演『心は孤独なアトム』を観る。森岡利行さんの脚本・演出で、キャストを変えて繰り返し上演していて、わたしが観るのは今回が3回目。<月><星>のダブルキャストになっていて、フライデーの亀ちゃんの出る<星>公演を見ることにする。出演はストレイドッグから工藤剛、重松隆志、原精、勝又康子、寺田恵、酒井健太郎、中原和宏、フライデーから亀蔦健一、田中卓郎、安保磨、岡村幸一、他に秋田麗美(ケイ オノ ダンスナッツ)、黒田百合(スペースクラフト)、能世あんな(テンカラット)、植村結子、ふるけいこ(バイオス)、田崎那奈(オスカープロモーション)、山口貴久子(アイ・トゥー・エー)、岡田文栄、濱谷安希、鈴木麻衣、星子麻衣(ベリーベリープロダクション)、大山真子、暖水みなみ。モデル系のイケメンとアイドル系のかわいい子率が今までになく高く、客席は若い子たちが目立った。ちなみにJ-TOPというのは、都内最大級のダンススクール「BOXMENアカデミー」を運営するジェイトップネットワークのことで、今回のダンスは今までになく激しかった。■観終わってから「脚本変わってますよね」と言うと、「いえ、いじってないんですよ」と森岡さん。キャストが変わると、同じ脚本でも印象ががらりと変わる。今回は劇中歌が染みて、泣けた。CATSのメモリーを聞いて、涙が出てきたときと似ている。原子さん役の人、名前わからないけど、なんとも言えず揺さぶられる声だった。あと、これまでの公演でも出てきた『死んだ男の残したものは』という詩が、今日はとくに印象に残って、涙を誘われた。友人を喪ったせいだろうか。
死んだ男の残したものは ひとりの妻とひとりの子ども 他には何も残さなかった 墓石ひとつ残さなかった
死んだ女の残したものは しおれた花とひとりの子ども 他には何も残さなかった 着物一枚残さなかった
死んだ子どもの残したものは ねじれた脚と乾いた涙 他には何も残さなかった 思い出ひとつ残さなかった
死んだ兵士の残したものは こわれた銃とゆがんだ地球 他には何も残せなかった 平和ひとつ残せなかった
死んだ彼らの残したものは 生きてるわたし生きてるあなた 他には誰も残っていない 他には誰も残っていない
死んだ歴史の残したものは 輝く今日とまた来る明日 他には何も残っていない 他には何も残っていない |
調べてみると、1960年に日米安保条約改定反対集会で初めて歌われた「歌」で、メロディがあり、1番から5番になっているらしい。「残さなかった」が「残せなかった」になる4番は、イラク派兵反対のメッセージとして引用されることも増えているよう。やさしい言葉の重なりが強い力を持ち、しっかりと心に刻まれるこの詩の作者は、劇中で何度も歌われた『鉄腕アトム』と同じく谷川俊太郎さんだった。