神保町シアターにて成瀬巳喜男の『妻』を観る。黒地に白抜きで漢字一文字のタイトルがどーんと出て、「妻という字の中には女がある」とあらためて見た。妻の半分は女が占めるが、結婚して女が半減するともいえる。結婚10年目の夫婦のすれ違いを描き、妻の寄る辺なさが身にしみる作品。今よりも結婚した女に帰る場所がなかった時代のことだから、なおのこと夫の心がない家を守るのはやりきれない。だが、文句を言うばかりで努力しない妻にも落ち度はある。
重い話の割にところどころ笑わせてくれるが(三國連太郎演じる美大生が、とぼけたいい味!)、救いのない結末に、「夫婦って……」とため息。結婚9年目のダンナと観終わった後、感想を交わしたが、小ネタの話に終始した。「成瀬を観なさい」とすすめてくれたご近所仲間のT氏に「身につまされる内容でした」とメールしたことを伝えたら、「君もお茶でブクブクしたりするよね」とダンナ。高峰三枝子演じる妻が食事の後に箸で奥歯に詰まったものをかきだしたりお茶で口の中をゆすいだりする姿に、「これでは夫はげんなりだなあ」と上原謙演じる夫に同情したが、わたしはそんなことはしません! でも、身につまされるポイントはそこなのか、と拍子抜けし、笑った。
「愛があるのか?」と確認しあって夫婦になってしまってからは、愛はあるものとして扱われる。波風が立たない限り、在庫確認をするチャンスはない。その質や量が時間とともに変化することを大らかに受け止め、ほどよく流されているうちに10年、20年と時を重ねていくのだろう。息永く夫婦を続けるためには、向き合うことと同じぐらい、やりすごすことも大事なことなのかもしれないと思った。
折しも「つばさ」第18週は夫婦の話。恋にも仕事にも行き詰まり、家を出ると決意したつばさが放った矢は地図をそれ、向かった先は、長瀞。加乃子の異母妹である紀菜子(斉藤由貴)と、その夫で船頭の富司(山下真司)に歓迎され、傷心を癒されるつばさ。しかし、仲睦まじく見える紀菜子夫妻は互いの心が見えず、苦しんでいた。一方、つばさを心配した知秋も付き添って出かけ、束の間「子どものいない夫婦」になった竹雄と加乃子は、自分たちの将来を考えてしまう……という二組の夫婦話と並行してつばさの再生が描かれる一週間。山あり川ありの長瀞の美しい自然をお楽しみください。このところ頼もしい弟として成長著しい知秋は、富司の男っぷりに惚れ込んで肉体改造を試み(キーアイテムは薪割り!?)、腕力をつける。
演出は、4、5、7、11週の大橋守さん。タイトルは「二十歳の夏の終わりに」で、二十歳のつばさが描かれる最後の週。第18週でつばさは生まれ変わり、あらたな気持ちで第19週「太陽がいっぱいだ」へと踏み出し、物語も大きくうねっていく。第20週「かなしい秘密」は、「脚本協力 今井雅子」のクレジットが毎日出る増量週間。
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