2009年07月24日(金)  映画『引き出しの中のラブレター』とラヴレター募集

松竹試写室にて『引き出しの中のラブレター』を観る。5月に公開された『60歳のラブレター』(>>>試写の感想)と同じく、ラブレター募集から生まれた映画。その昔、月刊公募ガイドをめくってはこの手の募集にせっせと応募していたわたしは、それだけでも親しみを覚えてしまう。それに加えて、ラジオで人と人をつなぐストーリーは、脚本に関わっている朝ドラ「つばさ」にも通じるものがあり、さらに函館が物語の鍵を握る舞台として登場ということで、観る前から感情移入は準備万端。『60歳のラブレター』と函館が舞台で病院内ラジオを描いた『Little DJ〜小さな恋の物語』(>>>試写の感想)を重ね合わせ、さらに函館の景色に今井雅子映画デビュー作の『パコダテ人』を思い出しながら、観た。

主役のパーソナリティは常磐貴子さん。本上まなみさん演じる同郷の親友との大阪弁のかけあいが楽しい。本場のイントネーションとリズムで喋れるこのお二人にあて書きして、大阪弁の映画を作りたい、と作品を観ながら妄想を膨らませてしまった。恋人が萩原聖人さん、ラジオ局の社長が伊東四郎さん、上司が吹越満さん。番組に手紙を送ってくる函館の少年は林遣都さん。その少年の父が豊原功補さん、祖父が仲代達矢さん……とキャストが豪華。中島知子さんの妊婦は、これまでに観た映画の妊婦でいちばん説得力があった。冴えない出稼ぎタクシー運転手を演じた岩尾望さんが、すばらしい存在感。この人がエールを贈る場面に、いちばん泣かされた。情けない男の一生懸命な姿は、飾らない分だけ真っすぐ胸を打つ。

お節介でお調子者の漁師を演じた片岡鶴太郎さんも、とてもよかった。こういうおっちゃん、いるよなあ。八千草薫さんのおしとやかなようで自分をしっかり持った母親をはじめ、登場人物は短い時間で輪郭をくっきりと見せられるように作られている。とはいうものの登場人物がけっこう多く、複数の物語が同時進行し、まいた伏線をどう回収していくのか、期待とハラハラ感が募った。だが、函館の少年一家の物語を中心にばらばらだったピースが美しく納まり、人だけでなくエピソードもつながって、安心するとともに感心した。群像劇が見事に成功している『ラブ・アクチュアリー』と同じく、「この人とこの人がつながっていたとは!」という驚きが感動になった。

手紙でつながる、ラジオでつながる。そこには、伝えたい気持ちがある。シンプルだけど、とても大切なことを問いかけようとしている作品。欲を言えば、東京の仕事に忙しい主人公が何度も函館に足を運ぶよりは遠隔操作で少年に働きどころを作ったほうが、遠く離れた相手をラジオでつなげる意味は際立った気がする。最近、映画を観ると、「自分だったらこうした」と考えてしまうのが困った癖。脚本は藤井清美さんと鈴木友海さん。藤井さんは『The Last 10 Months 〜10ケ月〜』で日テレのシナリオ登竜門優秀賞を受賞された人。月刊ドラマに載った脚本が印象に残っている。

監督は『花より男子』の三城真一さん(プロデューサーで参加している映画『花より男子ファイナル プレミアム』の脚本は、サタケミキオの名前で「つばさ」真瀬昌彦役の宅間孝行さんが書いている)。音楽は「篤姫」の吉俣良さん。主題歌はSkoop On Somebodyとこちらも豪華。

ところで、映画の仕事を何年かやっているおかげで、たいていの映画になんらかのご縁はあったりするのだが、この作品は、とくに関わりが深い。

【配給】『子ぎつねヘレン』『天使の卵』の松竹
【ロケ地】『パコダテ人』の函館
【出演者】『パコダテ人』の萩原聖人さん、ラジオドラマ「ランゲルハンス島の謎」「過去に架ける虹」の吹越満さん、朝ドラ「つばさ」の佐戸井けん太さん(タクシー運転手の上司役)、『ジェニファ』の六平直政さん(主人公の父役)。常磐貴子さんとは作品でのご縁はないが、放送文化基金賞の授賞式で同じ列に着席(ドラマ部門の本賞を「ビューティフルライフ」が受賞、ラジオ部門の本賞を「雪だるまの詩」が受賞)したので、一方的に親近感。本上さんとも作品では未対面だけど、短歌の「猫又」の会で引っかかるようにご一緒させていただいている。
【プレミア上映】去年長編部門の審査員を務めたSKIPシティDシネマ国際映画祭にて招待上映。

【ノベライズ】『ぼくとママの黄色い自転車』の原作『僕の行く道』を書いた新堂冬樹さんが映画と同タイトルで9月刊行。ちなみにこの本が「白新堂の6冊目」とのこと。『黒い太陽』などのノワール系が「黒新堂」で純愛路線が「白新堂」とジャンル分けされている。ブログのタイトルも「白と黒 blanc et noir」。

【原案】『ブレーン・ストーミング・ティーン』と『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』でお世話になった文芸社から出版された『届かなかったラヴレター』(こちらは「ウ」に点々)。中身のラヴレター募集を行っているのが、先日の『ぼくママ』試写会でご縁ができたキャリア・マム。トークをご一緒した社長の堤香苗さんと控え室でお話ししているときに、このコンクールの次回募集「届かなかったラヴレター2010」の審査をお願いされた。

というわけで、なにかとご縁がある『引き出しの中のラブレター』は10月全国公開。ぜひ、映画を観て、「届かなかったラヴレター」にご応募を。しまいっぱなしの想いを引き出して、綴ってみてください。

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