数週間前、「いちご電車」というタイトルの浮かれたメールが届いた。ご近所仲間で鉄道ファンのT氏がはるばる和歌山に出かけ、いちご尽くしの電車に乗っている実況を四十代とは思えない無邪気さで送ってきてくれたのだった。さらに一時間後には「おもちゃ電車」というメールが画像つきで届いた。「いちご電車」「おもちゃ電車」はJR和歌山駅から延びている和歌山電鉄貴志川線という私鉄ローカル線の車両で、終点の貴志駅にはニュースですっかりなじみになった猫の「たま駅長」がいるというではないか。たま駅長のことは気になっていて、わが娘・たまと会わせたいと思っていた。ちょうど関西行きを控えていたので、T氏からのメールが後押しとなって「わたしも行こう!」と決めたのだった。たまと父イマセンとともに阪和線紀州路快速で終点和歌山へ向かい、T氏のアドバイス通り一日乗車券(650円)を買って乗り込んだのは、おもちゃ電車(愛称OMODEN)。おもちゃが並ぶ棚にはアンパンマン! たまは早速駆け寄り、興味しんしん。木のつり革も積み木みたいで愛らしい。10台あるガチャガチャは本物。たまはお金を入れずにハンドルをガチャガチャ。床は木で、座席にはチェックの座布団。あたたかみがあって、絵本に出てくる子ども部屋みたい。ねずみ(MOUSE)、うさぎ(RABBIT)、犬(DOG)の形の背もたれには、さりげなく「M」「R」「D」とイニシャルがあしらわれている。「おもちゃ電車」という名前からデパートの屋上のようなにぎにぎしさを想像したのだけど、甘くなりすぎない大人っぽいテイストに感心。中吊りなどの印刷物のデザインも洒落ていて、アイデアだけでなくクリエイティブのセンスも光っている。終点の貴志駅で降りると、駅長帽をかぶったたま駅長がお出迎え。駅長室には、もう2匹の猫がいて、こちらは「助役」とのこと。人間の駅員はおらず、猫のみという無人・有猫駅。たま駅長、帽子が重いのか、すぐに落としてしまうのだけど、帽子がないとただの猫になってしまう。うちのたまとの対面は、お互い関心なさそうで、そっぽを向いたツーショットしか撮れなかった。駅舎にはつばめの巣があり、親鳥がかいがいしく子どもたちに餌を運ぶ姿が乗客を和ませていたのだが、その巣の真下で、父はいつの間にか買ってきたたこ焼きを一人で頬張っていた。ほんと、この人の頭の中は食べることでいっぱいで、ある意味1才児のたま以上に子どもっぽい。帰りは普通車両で大山遊園駅まで行き、下車して散歩。本当は交通公園まで行きたかったのだけど、たまが両替機で遊びたがり、百円玉を二枚両替したところで「他の人の分がなくなるからやめようね」と言った途端に床に転がって泣き出したので、手前で降りた。池をのぞむ広々した公園(これが遊園?)があり、そこのすべり台で遊ぶうちに機嫌は直った。大山遊園からでいちご電車を待ち受け、乗り込む。保育園でいちご組のたまは、「ご!」を連発しながら車両のあちこちに配されたいちごを指差し、おもちゃ電車以上に興奮。座席と座布団は、どこか懐かしさを感じさせるいちご柄生地。小さなテーブルもあり、地元の高校生がお昼ごはんを頬張っていた。「何もないのが魅力です」とT氏は語っていたけれど、窓の外ののどかな風景がかわいい電車とよく合っていた。乗り物の形の色とりどりの遊具がひしめく交通公園で下車してたまを遊ばせたかったけれど、「和歌山まで行ってお昼食べよう」と父が言うので、終点和歌山まで乗り続けるうちに、たまは眠りに落ちた。 2007年06月13日(水) 「事実は小説より奇なり」な映画『主人公は僕だった』2005年06月13日(月) 『猟奇的な彼女』と『ペイ・フォワード』2004年06月13日(日) 映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』
2007年06月13日(水) 「事実は小説より奇なり」な映画『主人公は僕だった』2005年06月13日(月) 『猟奇的な彼女』と『ペイ・フォワード』2004年06月13日(日) 映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』
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