映画を見るとロケ地を訪れたくなる。千三百年前の飛鳥の時代に造られた法隆寺の国宝「玉虫厨子」に平成の職人たちが挑むドキュメンタリー映画『蘇る玉虫厨子〜時空を超えた技の継承〜』(>>>2008年03月27日(木)の日記)に酔ったわたしとアサミちゃんは、「実物の玉虫厨子を見ねば!」となった。中田金太さんが私財を投じて平成職人に腕をふるわせて再現された「玉虫厨子」と、さらに遊び心を加えた「平成版・玉虫厨子」が6月いっぱいまで法隆寺の秘宝展で公開されているという。再現版は法隆寺に奉納されたのだけど、平成版は秘宝展が終わると高山のまつりミュージアムで展示されることになっている。二台を並べて見られるのは最初で最後のチャンスかもしれない。先週アサミちゃんはダンナさんとともに奈良を訪ね、「見て来たよ〜。良かったぁ」と伝えてきた。ちょうど大阪に帰省する機会を得たわたしも今日、奈良へ向かった。
JRの法隆寺駅から法隆寺まで歩いて20分。拝観券売り場を求めて広い境内をさ迷い、秘宝展が行われている秘宝殿へ直接行けば良いと教えられ、たどり着くまでにさらに10分。駆け足での鑑賞となり、飛鳥時代版の本家(こちらも並べて展示されているのを期待していたら、本堂に置かれているとのこと)を拝む時間はなかったけれど、金太さんの置き土産二台に対面することができた。
ちょうど小学校の遠足の団体と鉢合わせ、「これやこれ! 玉虫!」と担任らしき女の先生が興奮した声で指差すと、「どれどれ?」と元気のいい小学生がガラスケースの前に集まってきた。これがこないだやってた玉虫のん?」と先生に聞いている。授業で取り上げたのだろうか。映画に出ていた金太さんや職人の話も紹介されたのだろうか。再現版よりも色鮮やかな平成版に人気は集中し、「これ、玉虫の羽なん?」「すげー」「すごすぎ」と心からの感嘆の声が上がる。この光景、金太さんに見せたかった。「造るより遺すことのほうが難しい」と話していた金太さん。あなたが遺してくれたものは、平成の子どもたちに、この国の美しく力強い財産をしっかり伝えていますよ。
玉虫厨子と背中合わせに置かれているのは釈迦如来像。「仏さん、皿乗ってんで」「食べられるん?」「かもな」と子どもたち。玉虫厨子の蒔絵の原案になったお釈迦様の絵を前にした女の子は、「虎のこどもがおなか空かせてて、身投げして食べさせたってんて」「私やったらせえへんなあ」などと話している。 近頃の子どもたちはゲームばっかりして感動したり感激したりする力が弱っているのではと心配していたのだけど、展示物を見て感じたことを口にする子どもたちの言葉は生き生きとしていて、好もしかった。
NHK奈良の「万葉ラブストーリー募集」が縁で、子ども時代に親しんだ奈良にまた足を運ぶ機会ができたのだけど、京都とはまた違った古都の魅力があって、小旅行気分を楽しんでいる。奈良公園には鹿がわがもの顔で歩いていて、『鹿男あおによし』を思い出した。明日香村も訪ねたいし、古い町並みが残っているという「今井町」も気になる。
近鉄奈良近くの商店街を歩いていて、奈良遷都キャラクターの「まんとくん」「せんとくん」が並んでいるシャッターを発見。公式キャラの「せんとくん」が発表された後に自主提案の形で開発され、ネット投票で選ばれたのが「まんとくん」という経緯を新聞記事で読んだばかり。強烈キャラの兄と愛されキャラの弟という感じであまりにキャラが違うので、こんな風に並んで「どっちが好き?」と話題を提供するのもいいかもしれない。
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