2008年05月07日(水)  シナトレ10 ラジオドラマってどう書くの?

コンクールで脚本家デビューを目指す人たちに、わたしは「ラジオがいいですよ」とすすめている。映像脚本のコンクールに比べて応募数が少ないので入賞確率が高いこともあるけれど、脚本の自由度が高いところが面白い。コンクールの応募原稿には制約がなくても、映像化となるとどうしても予算やスケジュールの都合で「ロケ地は国内に」「外国人をたくさん出せない」となると変更を迫られる。その点、ラジオドラマなら、宇宙へ行くのも戦国時代へ行くのも動物にしゃべらせるのも自由自在。世界の少数民族をキャスティングすることだって可能だ。

「ラジオの脚本ってどう書くんですか」とよく質問される。先日のシナリオ講座創作論講義では「ラジオドラマって、効果音を書かなきゃいけませんよね。あの書き方がよくわからないんですが」という質問が出た。効果音を書かなきゃいけないのではなく、「ト書きを音で表現する」と考えてください、とわたしは答えた。「トントンと刻む包丁」「ガラリと窓が開く」と書けば、登場人物の動きが音から見えてくる。「グツグツとカレーが煮える」の「カレー」は音では表現できないけれど、「グツグツと鍋が煮える」というト書きに続けて、「今夜はカレーか」と台詞があればいい。「電車の発車ベルが鳴る」と書けば、そこが駅のホームであるとわかるし、「駆けて来る足音」があれば、電車に飛び乗ろうとしていることがうかがえる。そこに「携帯電話の着信メロディが鳴る」ことにより、「立ち止まる足音」となれば、電話がかかってきて立ち止まった様子を描ける。

実際にラジオドラマを聴いてみて、音がかき立てるイメージを実感してみるといい。野球部の練習のかけ声を聴けば放課後の校庭の絵が浮かぶ。ひとつの音で時間と場所を表現することがおわかりいただけるはず。聞こえてくる音をト書きに書き起こす翻訳作業をしてみると、書き方が身につく。月刊ドラマなどに脚本が掲載された折には、「こう書くと、こういう音になる」(あるいはその逆で、この音は、こう書いてあったのか)と脚本と対比させながらドラマを聴くと勉強になる。

というわけで、コツさえつかめば難しいことはない。まずは一本書いてみては、いかが。手始めに映像や漫画をラジオの脚本にしたり、映像を想定して書いていた脚本をラジオ版に書き直したりするのも、いい練習になる。今日はとくに熱心にラジオをおすすめしたい気分。というのも、デビューのきっかけをつかんだ『雪だるまの詩』とラジオ放送80周年の平成14年に制作した『昭和八十年のラヂオ少年』(ともにNHK-FM FMシアターで放送)を聴き返して、やっぱりラジオはいいなあと思ったから。ひさしぶりに実家に帰って、故郷はいいなあとしみじみうれしくなるような気持ち。映像は脚本が化けるのを見る楽しみがあるけれど、ラジオは自分の紡いだ言葉が大切に守られている感じがあり、脚本家のスタートを切るのには向いていると思う。

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