2008年01月24日(木)  マタニティオレンジ225 子守話1「なんでも屋さん」

娘のたまは宵っぱり。9時過ぎにお風呂から上がると、「夜はこれから!」とばかりに元気になる。敷いた布団にダイブしたり、ビデオを見せろとせがんだり、水でお絵かきするシートを引っ張ってきて「何か書いて」とペンを差し出したり。10時を過ぎると、電気を消し、抱き抱えたまま無理やり横になるのだが、目はらんらん。子守唄を歌っても寝そうにないので、子守話を聞かせることにした。ちょうど『星新一 一○○一話を作った人』(最相葉月)を読み終え、お話を作りたい気分でもあった。「たま、なんかお話してあげよっか」と聞くと「ん」と小さくうなずく。「じゃあねえ、えーと」と考えて、「なんでも屋さんの話にしよう」と決めて話しはじめた。子どもの頃、わたしは、お店には必ず「〜屋さん」をつけるものだと思っていて、レストランは「食べ屋さん」と呼んでいた。飲み屋があるのだから、食べ屋があってもおかしくはない。なんでも売っているお店は、「なんでも屋さん」。それは、こんなお話。

子守話1 なんでもやさん

たまちゃんが 一人で かいものに でかけました。
世界中のものが なんでも買える なんでも屋さん。
あんまりたくさん商品があって 並べきれないので
ほしいものの名前を言うと お店のおじさんが おくのたなから とってくれます。

「いらっしゃい。たまちゃん」
「こんにちは。おじさん」
「今日は 何を 買いにきたのかな」
そのとたん たまちゃんは さっきまで頭の中にあった名前を忘れてしまいました。
「えーと、えーと」
「どうしたの、たまちゃん。何を買いに来たか 忘れちゃった?」
店のおじさんがやさしい声でききました。
「白くて 丸くて」
「ボールのことかな?」
「ううん、ボールじゃないの。食べられるもの」
「白くて 丸くて 食べられるもの?」
おじさんは、そう聞き返しながら、おくのたなに手をのばしました。
おじさんの手は自由にのびちぢみするので、遠くのたなの 上のほうにあるものも あっという間に取り出せるのです。
「これかい?」
とおじさんが出してくれたのは、たまちゃんが見たこともない食べものでした。
「これはなあに?」
「これはカマンベールチーズだよ。白くて丸くて食べられるよ」
「だけど、これはかたいわ」
たまちゃんがほしいものは、やわらかいのでした。
「だったら、これかな」
とおじさんが手をのばして取り出したのは、丸いうつわに入ったとうふでした。
「とうふは、白くて丸くて食べられてやわらかいよ」
「でも、ふわふわしていない」
「ふわふわしているんだったら、これかな」
今度こそ、とおじさんが取り出したのは、「むしパン」と書いた袋に入ったパンでした。
「白くて丸くて食べられてやわらかくてふわふわしているよ」
「にているけど、ちょっとちがう。それに、むしさんをパンに入れるなんて かわいそう」とたまちゃん。
「ちがうよ。虫が入っているんじゃなくて、むしたパンだよ。ゆげでふわふわにすることを むすっていうんだよ」
おじさんは笑って言いました。
「わたしがさがしているものも、ゆげでふわふわになっているよ」
たまちゃんがそう言うと、おじさんは、「わかった!」と大声をあげました。
「ほら、たまちゃん。これでしょう」
「そう。これ! ぶたまん」
見たとたん、たまちゃんは名前を思い出しました。
でも、手をのばしてさわると、悲しそうな顔になりました。
「あれ、やっぱりちがった。これは、あったかくないもの」
「これを おうちに帰って むすんだよ」
「むす?」
「そう。ゆげでふわふわのほかほかにするんだ」
たまちゃんはにっこり笑って、
「じゃあ、これで買えるだけください」
と500円玉を出しました。
「ひとつ130円だから4つで520円。20円はおまけだよ」
そう言っておじさんは4つ包んでくれました。
「ぶたさんみたいにまるまるしているから ぶたまんって言うの?」とたまちゃん。
「ぶたのお肉が入ったおまんじゅうだから ぶたまんって言うんだよ」とおじさん。
「ぶたまんのまんは元気まんまんのまんだと思ってた」
「ぶたまんを食べて 元気まんまんになってね」
おじさんは笑って言いました。
「なんでも屋のおじさん。ありがとう。また来るね」
たまちゃんは元気な声で言いました。


たまはぶたまんが登場する前に寝息を立て始め、子守話で寝かしつけ作戦は成功。お話がつまらなくて……ではなく、母の声に安心して、であることを祈りたい。

2007年01月24日(水)  マタニティオレンジ64 離乳食教室
2004年01月24日(土)  映画『LAST SAMURAI』
2002年01月24日(木)  主婦モード

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