土曜日の深夜のこと。夢の中で玄関のチャイムが鳴っていると思ったら現実だった。間隔を置かない鳴らし方からして、呼び主は怒っている様子。時計を見たら一時半。ろくな呼び出しではあるまい、と身構えてインターホンを取ったら、相手は真下の部屋の住人だと名乗った。咄嗟に「洗濯機か」と思った。布おむつの在庫が底をつき、こんな深夜にとためらいつつもナイトモードで乾燥機をかけていた。その音がうるさい、何時だと思っているんだ、という苦情だと察したのだが、「天井から水が漏ってるんですけどー」と言われ、ガードしていないところを殴られたような衝撃とともに眠気が吹っ飛んだ。
騒音ではなく水漏れの苦情ではあったが、考えられる原因は洗濯機しかなく、そのことを告げるとともにスイッチを切り、「でも、こちらではちゃんと排水はできているんですが」と言い訳しつつ平謝りし、「漏っているのはどの部屋ですか」「そちらの間取りはどうなっていますか」などと質問しているうちに相手の言葉もやわらかくなってきた。上から水が漏っているものの、原因は二つの階の間部分にあるらしいということが見えてきて、寝ぼけた階上の住人を責める気持ちが半減したためと思われる。「マンションの掲示板に確か管理会社の連絡先あったと思うんですが」と告げると、「連絡してみます」と相手は告げ、過去最長のインターホン通話は打ち切られた。
いつもなら起きている時間なのだけど、娘を寝かしつけているうちに眠ってしまい、いちばん眠りの深いところから引きずり出された形となった。乾燥途中の生乾きの洗濯物を取り出しているうちに、こんな非常事態にも目を覚まさなかったダンナに怒りの矛先は向けられた。娘が泣いていても起きないたくましい鈍感力にあきれつつも諦めた矢先ではあるけれど、一人で矢面に立たされオロオロさせられたのが馬鹿らしくなり、ダンナを無理やり起こして、「今、とんでもないことが起こり、わたし一人で対処したのだ!」と訴えた。ダンナは十分ほど一緒にオロオロしてくれたが、「起きてても解決しない」と言ってまた寝てしまった。
管理会社の対応は早く、早速日曜日に電話があり、月曜に業者が来て点検を行うが、原因がはっきりするまでは洗濯機を使わないでほしい旨が伝えられた。そして、今朝、管理会社のスーツ男性と点検・修理を請け負う作業着男性が二人で現れ、わが家と階下とその間(天井裏)を行き来して原因究明にあたった。「今朝も漏れたらしいんですよ」と言われるが、わが家は洗濯機の使用を控えており、今朝は浴室も使っておらず、「確かに乾いていますね。おかしいな」と作業着男性は首をかしげた。そして約一時間後、わが家の洗濯機でも浴室でもなく、階下の浴室の換気扇から天井を伝った水が漏れていることが判明。「夜中に起こしてしまって、と恐縮されていました」とスーツ男性に伝言されたが、天井から水が漏れれば上の階を疑うのは自然なこと。点検ついでにぐらぐらだったシャワーヘッドホルダーをシリコンで固めてもらえたのもラッキーだった。「迅速に対応していただき助かりました」と笑顔でねぎらいながら、日記のタイトルは「寝耳に水」で決まりだな、と思った。
2006年11月12日(日) マタニティオレンジ27 川の字 朝の字
2004年11月12日(金) 何かと泣ける映画『いま、会いにゆきます』
2002年11月12日(火) 棗
2000年11月12日(日) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)