「子どもと川の字で寝たい」というダンナの夢は、たまが生まれたその日にあっさり叶えられた。体重測定を終え、おむつを着け、初乳を飲ませると、「ではお布団敷きますね」と助産師さん。分娩室の和室がそのまま寝室となった。生まれたばかりのたまをダンナと挟んで、真ん中が極端に短い川の字。新生児にしては豊かな髪の毛にこびりついた羊水はほんのり甘い香りがする。助産師さんは「砂糖水のにおい」と言った。たまはすんすんと寝息を立て、立ち合いに疲れたダンナはすぐに眠りに落ちたけれど、わたしは寝付けなかった。さっきまで自分の中にいたのに、今はすぐ隣で小さな胸を上下させて眠っている。なんて不思議。
夜泣きから逃れて家庭内ジプシー生活をしている先輩パパたちは「一緒に寝るのは無理」と言うが、今のところたまは夜泣きをしないので、三本の「川」の字を守れている。新聞を読んでいたら「朝という字を分解すると、十月十日(とつきとおか)になる」とあった。「おなかの中に子どもがいたときのように、朝の時間のふれあいを大切に」という記事。十月十日を重ねて朝を迎えるとは、美しい発見。朝目覚めて、寝ぼけ眼に小さな命が飛び込んでくるたびに、「ほんと、よく来てくれたね」「今日も生きていてくれて、ありがとね」と幸せな気持ちで満たされる。そして、新しい一日を始める。
2004年11月12日(金) 何かと泣ける映画『いま、会いにゆきます』
2002年11月12日(火) 棗
2000年11月12日(日) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)