忙しいは心を亡くすと書くが、わたしは頭の中にトコロテン器を思い浮かべる。新しいアレコレを詰めると、古いアレコレが押し出される。わたしのカバンがまさにその状態で、保育園の送り迎えも打ち合わせも買い物もこれひとつなので、入れ替えのたびに何かが抜け落ちる。保育園へはオムツを忘れ、シーツを忘れ、エプロンを忘れ、連絡帳を忘れ、オムツはあってもカバーを忘れたり、シーツはあっても乾かし不足(確認忘れ)だったり。「お母さん、忙しいんですよね」と保育士さんに労われると、「心を亡くしてますね」と見透かされているようでドキッとする。
打ち合わせに使う原稿を間違える失敗も立て続けにあった。カバンに入れっぱなしになっているプリントアウトを見て、「入ってる」と安心して出かけたら、ひとつ前の原稿だったり別な企画の原稿だったり。「大丈夫です。内容は頭に入ってます」と言い訳(ペンを忘れたときは「心のペンでメモします」と言いつつお借りすることになる)しても、「こいつ、やる気あんのか」と疑われるのは必至で信用第一のフリーランスにとっては死活問題。プリントアウトの中身まで確認することを肝に銘じるようになった。
今日の打ち合わせは、原稿も間違えず、ペンも忘れず、ばっちりだったのだが、帰りに腰を落ち着けて資料を読もうと思い、カフェを探して銀座界隈をうろついていたら、パン屋の「木村家」が目に留まった。店内でさんざん試食した後に明日の朝食用にシンプルパンなる素朴で味わい深そうなパンを3種類(ホウレンソウ、くるみ、オリーブ)注文。ショーケースから取り出して袋に詰めてもらい、お会計となったところでカバンを探ると、財布がない! 今朝、娘を小児科に連れていくときに出して戻すのを忘れたのだが、カバンのポケットに突っこんだままのSuicaでスイスイ来てしまったので、財布の出番がなく、気づくのが遅れた。Suicaを忘れて切符を買うことはしょっちゅうだけど、Suicaで木村家のパンは買えなかった。でも、気づいたのがカフェでお茶を飲んだ後じゃなかったのは、不幸中の幸い。
2006年11月13日(月) マタニティオレンジ28 バリアフリーを考える
2003年11月13日(木) SKAT.2@Wired Cafe