ベーグルという食べ物に出会ったのは20年以上前。アメリカ留学先の蚤の市で売られているローストオニオンをたっぷり練りこんだもちもちしたドーナツ型の塊をひと口食べ、おいしさに目を見張った。チーズやらベリーやらいろんな種類があり、蚤の市に行くたびに、そのお店のベーグルを買い求めるのが楽しみだった。でも、日本で食べるベーグルには「もちもち」よりも「もさもさ」の印象があり、あまりおいしいと思えるものに遭遇したことがなかった。
ところが先日、保育園の役員をご一緒しているYさんがわが家にいらっしゃったときに持ってきたベーグルを食べて、ひさしぶり、それこそ20年ぶりぐらいに「うまい!」と感激。わたしが地球上でいちばん好きな食べ物、大阪名物551の蓬莱の豚まんの皮を彷彿とさせる、もちもち感とほのかな甘みが尾を引き、気がつくと一個平らげてしまっていた。生地の食感だけではなく、持ってきていただいたフレーバーベーグル3種のフレーバーも「抹茶小豆」「エスプレッソキャラメル」「紫芋」とわたし好みのネットリ系。日替わりで常時10種類ほどがお店に並ぶという。わが家から歩いて行ける距離にある白山ベーグルという店のもので、イートインもあるのだが、「いつ行っても空いていて、お店がなくなっちゃうんじゃないか心配なんです」とYさん。以来、わたしの白山ベーグル参りがはじまった。
週に二度ほどお店へ行って買い込み、一日一個ペースで消費しているのだが、わたしに負けず劣らず、たまの食いっぷりがすごい。丸ごとつかんでかぶりつき、上下四本ずつの歯で削るように食べ、トンネルを掘り進むモグラのように、気がつくとドーナツ型の中心部まで食べ進んでいる。蓬莱の豚まんにも驚くべき食欲を見せたが、やはり相通じるものがあるのかもしれない。食べ物の好みが遺伝したようでうれしくなる。生地にすりつぶした野菜を練りこんである紫芋やかぼちゃがお気に入りだが、バジルトマトなどという大人っぽいおかず系も好んで食べる。ベーグルをくわえている間は口封じができておとなしいので、外出時には「持ち歩きベビーシッター」となる。この店がなくなっては大変、とわたしもYさんにならって伝道中。
2004年08月29日(日) 東京都現代美術館『日本漫画映画の全貌』