スーパーで買い物を終えて出てきたら、男の人の罵り声が聞こえた。「俺はこんな扱い受けたこと今までにいっぺんもねえよ! あんたいきなり名乗りもしないで失礼じゃねえか」と小柄な男性が噛み付いている相手は制服姿のお巡りさん。「まあまあそう感情的に話されてもですね」と穏やかな声でしずめようとしているが、「名乗るのが礼儀だろ。本物の警察かどうかもわかんないじゃねえか」と怒りがおさまらない男性の後ろに積み上げられた平たい箱を見ると、桃がぎっしり納まっている。路上で桃を販売しているところを注意されたようだ。
「口動かすより手動かしなよ」と小柄な男性に声をかけた大柄な男性は相方らしく、路肩に停めたバンに桃入り箱をせっせと運び込んでいる。さっさと退散して次の商売場所に移動したほうが身のため、と思っているのか、きびきびと無駄のない動きで山積みの箱の嵩を低くしていく。「ここで、この桃いくらと聞いたら、売ってもらえるのだろうか」と誘惑にかられつつもそんな無謀なことはせず、見てないふりをしながら耳だけはしっかり集音モードにして、横を通り過ぎた。
しばらく歩くと、自転車に乗ったお巡りさんとすれ違った。先ほどのお巡りさんが応援を頼んだのだろうか。その割には膝が車体から大きく出たのん気な漕ぎ方をしている。何も知らずに桃現場に差しかかったら、どう反応をするだろうか。どうしましたか、と声をかけたら、二倍になったお巡りさんに、男性の怒りも倍増するだろうか。引き返して確かめてみたくなったが、そうせずに歩き続けていると、代わりの商売場所が見つからなかったらあの桃はどうなるのだろう、と気になってきた。山積みの箱にぎっしりの桃が頭から離れず、桃が食べたくなって困っている。
2003年07月05日(土) 柳生博さんと、Happiness is......
2000年07月05日(水) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)