ご近所仲間のT氏に熱烈に勧められた映画『それでも生きる子どもたちへ』を観る。かつて子どもだった7つの国の監督が綴るオムニバス作品。貧困、エイズ、人身売買、地雷……生きることさえ困難な絶望的な状況に置かれた子どもたちが、それでも生きる、目を力いっぱい輝かせて。その姿は、人間の底知らずのたくましさを感じさせる。脚本があり役者が演じているとは思えない、ドキュメンタリーを観ているようなリアリティーに引き込まれ、地球のどこかで今もこの子たちはこの続きを生きているという気にさせられた。
当たり前のように蛇口をひねれば(最近では手を差し出すだけで)水が出て、スイッチを押せば電気がつき、あたたかい食事と寝床が確保されている生活に慣れきったわたしは、こういう映画に出会うと、殴られたような衝撃を受ける。その衝撃も、ぬるま湯生活にひたるうちにほどなく薄れてしまうのだが、映画でも見せつけられないと、「当たり前が当たり前じゃない世界」があることに思いを馳せることすら忘れてしまう。
子どもが生まれてからは、子どもが出てくる映画を見ると、わが子と重ねてしまうのだが、この作品では「重ねる」ことは難しかった。日本という恵まれた国に生まれたわが子と、その日を生きるので精一杯の国に生まれた子どもとでは、望むものも大きく違うだろう。もしかしたら、わが娘がすでに手にしている普通は、ある国の子どもにとっては、すべてなのかもしれない。
作品につけられた「地球の希望は、子供たちだ」というキャッチコピーに共感しつつ、子供たちが地球の希望であり続けるために何をすべきなのかを考えさせられた。「それでも生きる子どもたち」が年を重ね、社会が見えてくるようになり、どんなにがんばっても人生には限界があると知ったとき、希望は絶望に変わってしまう。
2005年06月15日(水) 『秘すれば花』『ストーリーテラーズ』
2002年06月15日(土) 『アクアリウムの夜』収録
2000年06月15日(木) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/26)