妊娠を知った相手に聞かれた質問第1位は、「予定日は?」を抜いて、「男、女どっち?」だった。「産まれてのお楽しみにしているんですよ」「出たとこ勝負です」などと答えると、反応はまちまちで、「準備するものとか不便じゃない?」「名前はどうするの?」と心配したり、「どっちだとうれしい?」「どっちだと思う?」と面白がったり、「知りたくないのは、何かポリシーでもあるの?」と不思議がったり。
とくに深い理由はなくて、ただ「産むときの楽しみがひとつでも多いほうがいい」と思い、助産院でお世話になる助産師さんに「男か女か教えないでくださいね」とお願いした。だけど、エコー検査のときにうっかり「ハンサム君だね」と助産師さん。すぐその後に「あれ、男だっけ女だっけ?」ととぼけられたけど、「教えないでって言ったのに……」とクイズの答えを考えている間に正解を告げられた気分に。その日のエコー画像に「それらしき影」がうっすら写っているのも見えてしまった。
数週間後、助産院と提携している病院で検診。エコーを見ながら先生が「男でも女でもいいんでしょ」と言うので、「楽しみにしときたかったんですけど、男の子ですよね?」と答えると、「どうして?」と先生。「こないだ写ってた気がしたので」と言うと、「そう? 今日は写ってないみたいだけど」。先生のおとぼけで、男か女か論争は白紙に戻された。
おなかが目立ってくると、スーパーのレジのおばちゃんや通りがかりのおばさんからも「男、女どっち?」と聞かれるようになり、すっかり聞かれ慣れたわたしは「どっちだと思います?」と聞き返すようになった。すると相手は自分の推理と根拠をうれしそうに教えてくれる。圧倒的多数が「男」と答え、その根拠は「おなかが突き出ているから」が一位。「顔つき」で判断した人も多かった。「みなさん、男って言うんですよ」と返すと、「そうでしょう」と胸を張るおばちゃんたちは、子育ての先輩らしく「暑くて大変ね」と労ってくれたり、「塩分もほどよく摂ったほうが夏バテ防止にいいのよ」などとアドバイスしてくれたり。人と話すのが好きなわたしは、大きなおなかのおかげで見知らぬ人に声をかけられるのが楽しかったし、親戚でもない人が自分の娘のことのように気にかけてくれるのがうれしかった。
たくさんの人に「楽しみね」と言われ、ますます期待が高まる中で出産を迎え、いざ対面してみると、「わ、女の子!」。世論に流されて、9割がた男だと思い込んでいたので、びっくり。産まれたわが子が最初にくれたサプライズだった。
2005年09月08日(木) 文芸社パンフレットの取材
2004年09月08日(水) 東銀座の『台湾海鮮』
2003年09月08日(月) 「すて奥」作戦