NINJA-SYSTEMS
るり子の日録【オリーブの森で語りあう】
るり子の日録【オリーブの森で語りあう】
るり子



 次の約束を彼は口にするけれど

彼が言う

「また、温泉に一緒に行きたいね。」

私は 言うまでもない。

彼がその時間を捻出することは

かなり大変な作業を要することを 私は知っているから

その彼の言葉だけで

嬉しい。







その難しさを彼も知っているから

それでも

私を喜ばせようとしているのか

彼自身も 望んでいるからなのか

もっと可能性の高いビジョンを口にする彼。






↑エンピツ投票ボタン
My追加


私は

おそらくその今度が

何週間か先の事になるだろう 覚悟を密かにしつつ

嬉しいわと

彼に伝える。







プランニングだけして

ふたりで その計画を楽しげに立てただけで

未だ実現しない 予定も沢山ある。

それでも 不満に思わないでいられるのは



彼と共に過ごせるのであれば、

どこであろうと いつであろうと 

かまわないからだろう。




 

2009年01月30日(金)



 歌舞伎町の今日は雨

彼が 酔いに任せて吐露する

私への愛は

饒舌でストレート。







でも、以前から比べたら

ずっと減った

愛しているよ

の、言葉。







私は 毎日シャワーのように

それらの言葉を聞きたいのに。







不満な私は 今日、

彼に私の思いを 打ち明ける。







「ねぇー、このごろ愛してるって 言ってくれない。」

私は おどけた調子で彼の顔に自分の顔を近づけ

彼の目を覗き込む。

しらふの彼は 少し照れたような風をして

一呼吸置いて 私に愛を告げる。

「瑠璃ちゃん、愛してるよ。」

こころなしか、彼の顔が赤い。

それを見て

私は 彼が嘘や言い繕う気持ちで

その言葉を発したのではない事を すぐ悟る。







「本当? 嘘じゃないの?」

今度は 私が照れてしまい

彼を 逆に責めるような事を口走る。







「あったその日の最初と最後、

それは必ず kissで始まり、kissで終らなくちゃ 駄目なの。」


日常

彼に指示する人間はいない。

彼に 自在に物を言うのは

私くらいだと 彼もいう。







彼がわたしを愛してくれている間だけの魔法。

それが、私の唯一の特権。

誰にも彼が与えない、私だけの特権。







「たくさん 愛してるよって 言って。

毎日、言って。

言って 言って、毎日言って。」


そういう私に






↑エンピツ投票ボタン
My追加


愛しているよを 君は強制するんだねと、

言いながらも

愛を語ってくれる彼の車のサイドシートに座り、

今日があった証明に

写メを一枚取りたいという私に

車のワイパーを止め

ワイパーが映らないよう 配慮してくれる彼。







歌舞伎町の 今日は雨。








2009年01月29日(木)



 いつか彼が私から去ってゆくのは必定

恋愛の安定期に入っていることと

自分の感情を表に出さない訓練をしてきた彼の

身に着いた 習い性とがあいまって、

以前のように簡単には 

愛しているよ

と、言う彼のセリフが聞けない今日この頃。







自分の長所と短所をよく知るゆえに、

彼の私に対する愛情を 毎日のように確認しないと

どうしても 落ち着かない。 

一抹の不安がよぎる。







これは、Rに 手ひどく去られたあの経験が

わたしを 非常に用心深くしている。

あの

私に惚れきっていたRが 私から去ったのだ。

ましてRではない他の男なら 

私から去らない訳がないではないか。

(二重否定は強い肯定。さほどに去られる確信があるのが悲しい。)

と、思ってしまうのだ。








その点、彼は私にその種の懐疑心を全く抱いていないようだ。

過去の女性が示さなかったほどの

愛を私が彼に注いでいるから

というのが、その理由らしい。







でも、私より

いえ、私と同等に

彼を愛している存在は じじつ実在する。

彼が その女性を女として認識しなくなっただけの話だ。

むしろ、わたしより

粘着した形で 彼に深い執着を示している。







彼がこのところ

仕事に追われていて

仕事を優先せざるを得ない状況にあり、

仕事と私とどっちが大事なの

などというセリフは

一生 吐くまいと心に決めている私としては、

別の言葉を 彼に吐く必要があり、

あまりに 仕事が飛び込むので






↑エンピツ投票ボタン
My追加


彼は メールで即答してきた。

「瑠璃ちゃん、どういうこと?」

「私がいることで、仕事と私のバランスを考えなくてはならなくなる。

ということは、

貴方の人生にとって私がストレスになるということでしょ。

だから。」








私は 現状では

彼が私を手放すわけがないと確信している。

でも、言葉のあやで

私の申し出に彼がすんなり 合意したら、

私は 非常に辛く淋しい事になるけれど、

それはそれで、耐えて見せようと思っていた。







彼が うろたえたことで

私の恋心は 満足する。







しかし、私は思うのだ。

いつまでも、彼がこの手の作戦で 折れるとは限らない

ということを。











2009年01月28日(水)



 俺の全ては 瑠璃ちゃんのものだから

幸せに思えることが 沢山ありすぎて

手のひらから

さらさら さらさら

毎日 その記憶が次々おちていく。







昨夜のバーで

意気投合した 初対面の方と私と彼

その方は 暮に放映されたあるテレビの特集番組の

映像ディレクターだという。







たまたまその特集番組のスターが

彼の経営するレストランの常連さんで

スターさんの奥さんである女優さんと彼が

暮に 食事をしていたことと

私が12歳のころから 

そのスターの筋金入りのファンだった事もあり、

その番組を

カメラ割を含めて

実に細かく記憶し 感動していた事が

三者を 意気投合させた。







彼と共にいると

この種のくすしき出会いが 必然のようにやってくる。

彼の 人懐こさと

人を魅了する明るさと 一筋縄では行きそうにない外見が

ある種のカリスマ性をもっていることも

私は 知っている。






お食事で既に

乾杯のビールや焼酎や

鯛の骨酒をかなり飲んでいた彼だけれど











移動したバーでも

ウォッカをトリプルでオーダーするような

ブラッディー・シーザー等の杯を重ねている。










平素は

わたしを特定の 

心に留めている大切な存在だとは

決して悟られないようにしている彼が、

このくらいのお酒が入る頃には

ポロリと

私への愛を 露呈する様になる。







私は ひやひやしてしまう。

彼が

僕は完全に 瑠璃ちゃんのものだ

とか

僕が愛していると言ったら

瑠璃ちゃんは

ありがとうなんて言ったら駄目だ

あらぁ、当然でしょ、貴方が私を愛するのは当たり前の事よ

ぐらい、言わないとだめだ。

僕は それを欲しているんだよ。







などと言い出す。









↑エンピツ投票ボタン
My追加


意気投合した映像ディレクターさんも

大人の対応で

そ知らぬふりをしてくれる。







今まで

何となく 彼の思い人なんだろうな

と、思われていただろうけれど、

今夜ほど

私たちの関係が露呈した事は ないだろうと思う。







別に 憚る事などないのだけれど、

彼を私よりずっと長く知っている

それら 行き付けのお店のオーナーさんたちにとっては

彼を知るがゆえに、

彼の このごろの変り様に

おそらく 驚いていると思う。







帰りのタクシーで

酩酊した彼が

本日の とどめのセリフを言う。







誰が どう思おうと全く関係ない。

俺とおまえ それだけが全てだ。

あとは、どうだっていいんだ。

るりちゃんは おまえ呼ばわりされて

気分が悪いかも知れないが、

今の状態が 俺にはベストバランスであり、

俺の全ては おまえのものだ。







翌日、おそらく彼は

このセリフを 覚えていないだろう。


 

2009年01月25日(日)



 Yes we can.

彼と 山手線に乗りました。

そんな事は当たり前にあるでしょうと

思われることでしょうが、

殆んど車移動の私たちには

レアなこと。







しかも、新橋あたりは空いていたのに

品川・大崎あたりになると、

ラッシュの時間帯のような混雑を見せる。

終電が近い時間帯とはいえ

この混み様は ないだろう

と、彼。







電車の中では

周りの人々と 嫌でも身長の差がよくわかる。

彼は そんなに背が高くないと

思っていたけれど、

あたりの人々と比べれば 

彼の頭が図抜けていることに気がつく。







いつもは私と大差ない

(そんなはずはないのだけれど、なぜか同じに感じられる)

はずなのに、

密着する車内で私を抱きかかえるようにしている彼を見上げる



やはり私より 頭一個分は背が高い事にきずかされる。







小さな声で彼が言う。





↑エンピツ投票ボタン
My追加



昨日も 今日も 会っているのに

明日と 昨日今日の会い方に

どんな差があって

彼が言葉を使い分けているか、

私には わかる。







私は 彼に おとぼけて答える。

「Yes we can.」






明日は 勝負下着。





2009年01月24日(土)



 太白と醤油と柑橘果汁のドレッシング

彼の事を

男だなぁと感じるのは、

自己弁護や言い訳の類を一切しないこと。

だから、誤解を招く事も多々あるし

私にしてみれば、

ちゃんと話してくれたらいいにのと、

こんなに やきもきしなくても済むのにと、

思わない事もない。







でも、

信頼してついて行ければ、

これほど頼りになる人もいないと思う。

逃げないし

心身ともに体力も含めて とても強いし、

才覚も兼ね備えている。

顔も Rの次くらいに ハンサムだし。







付き合いが二年目、

正確には三年の年度にまたがっているけれど

結構な時間を 彼と共有してきた。

初期の さわれば簡単に火がつくような関係が

安定期になって 穏やかなものに変りつつある。







未だに彼は

タクシーの降車の際は 私の手を取ってくれるし

お店を出るときには、私にコートを着せ掛けてくれる。

でも

穏やかな関係になったな

と、

感じるのは






↑エンピツ投票ボタン
My追加


いまは、そんなこともない。

というか、私が穏やかになっただけの事で、

彼は以前も 今も さして変らない。

わたし次第で 適時対応してくれるのだろうけれど。






今夜は

東京一

ビールの美味しいお店に 連れて行ってあげようと

彼が言う。





お店のウリの メンチカツをオーダーし




生ハムサラダも オーダーする。







私が彼に

このドレッシング 美味しいわ

というと、

彼は

太白と醤油とかんきつ系果汁だろう

トッピングは ポテトの細切りから揚げではなく

生シラスのから揚げだ

と、ズバリ言い当てる。







私は彼に 感謝の言葉を惜しまない。

貴方が私を幸せにする。

そう 私は彼に伝える。







まんざらでもない彼の顔を見て

私も 安心する。





2009年01月21日(水)



 聞き捨てならない言葉

オバマ大統領の

就任式をCNNライブで見ていたら、

彼から電話がかかってきた。







こんな深夜

いつものように 愛の言葉を告げるための電話なのだけれど、

酔っている彼は

いつも口にしないことを

口走る。







「瑠璃ちゃん、この頃男性機能が低調。」

な・なんですと?

彼の口からそんな事を聞くなんて。

彼は言葉を続ける。

「ストレスとかの、心因性だと思うんだけどね。」

まぢっすかぁ・・・・・w






彼は更に 私がぶっとぶような事を言う。






↑エンピツ投票ボタン
My追加


えーーーー、どういう事ぉ〜







彼の真意は

私なら話は別で いけるかもしれないという話し。







別に いる訳ね

と、私は突っ込みを入れる。

彼は そうではなく ものの例え 言葉のあやだと

そう言う。







まぁいいか

彼の心は 私が多分わしづかみにしているはずだし。

と、妙に私は 自信に満ちている。







翌朝 彼に昨夜のことを覚えているのと 聞いてみる。

全く覚えていないという。

それならという感じで

昨夜のことを話すと、

それは間違いのない事実だなぁ

という返事。







話の 起承転結も全てその通りだという。

正直も 時には罪だと 思わなくもない。



2009年01月20日(火)



 結婚

いつまで続くかわからない愛情生活の

未来を あれこれ思い煩っても

あまり 意味はない。

と、思っても、

やっぱり考えてしまう。







そういう意味で、

夫婦関係というのは、いいシステムだろうと思わされる。

必ず消える 愛

それを見越して、結婚といういわば契約をすることで

安定した次世代の育成を保証する。

子どもを作らない場合でも、

安定した関係構築

つまり、愛が消えても 一緒に住まい続ける必然性を

婚姻という契約は 保証するのだ。







そんな事を考えると、

彼と私の未来に 愛は確実に消えずにある などという

絵空事は 描けない。







先々がそれなら いっそ今

愛のピークで 別離する方が

互いの記憶にくっきり残る存在として

心の中に 生きつづけることができて いいのかもしれない。







でも、

彼と過ごす日々が

あまりに 楽しいから

そんな私の思いは すぐにどこか遥かに飛び去ってしまう。

消えてしまう愛より

永続する友情の方が

いいのかなぁ とも思うけれど、

私たちは 友情より 

愛 を選択してしまった。







彼は

私がこんな事を思っている事など

つゆほども知らないだろうと思う。










↑エンピツ投票ボタン
My追加


願い続ければ、

強く思い続ければ、

叶わないことなどないはずだと私は思うけれど、

彼は、

世の中には 不可能が存在すると

思っている。







要は

彼は 充分 大人なのだ。




2009年01月18日(日)



 有言不実効のダイエッター

年末 年始の

ハレのお食事がつづき

ウエストとヒップのあたりに

なんとなく

いえ、

はっきりと 脂肪が蓄積している予感がする。







夏には ホテルのプールで泳ぎましょ

と、私は 自分で言っておいて

今のウエストでは

とても プールサイドに出る勇気がないことに気がつく。







痩せたらね

という条件を後付けして 彼に伝えるけれど、

彼は そんな事を気にしなくていいという返事。

でも、やっぱり綺麗に水着を着たいと思う心は 偽りのないところ。







私は 絶対絞って見せるから

と、彼に宣言する。












↑エンピツ投票ボタン
My追加


どうしてよー

と、私は彼に食ってかかる。







じゃあ、やってもらいましょう。

そう彼に言われると、

反骨精神がむくむく湧きあがって、

一日だけは 節食するけれど、

夏という目標設定に 切迫感が無いものだから

今日も 美味しいわぁ

などと言いながら 食欲が勝つのだ。














2009年01月17日(土)



 タクシーの運転手さんと彼の会話

彼と夜のひと時を共有し

タクシーで同じ方向に帰宅する。

彼の家が先で

私の家があと。







だから、私から先にタクシーに乗り込む。

彼は行く先を告げず

そのつど ルートを事細かくタクシードライバーに指示する。







彼も 私も 酩酊しているけれど、

良識まで 吹き飛んでいる訳ではない。

彼の

威風堂々の外見のせいだと思うのだけれど、

わたしが一人でタクシーを使う時と、

彼とともに タクシーに乗る時では

あきらかに 

運転手の態度や言葉遣いが違っていることに私は気付かされる。







実は






↑エンピツ投票ボタン
My追加


彼が 都心の道路事情に非常に精通していること

そして 絶妙の車幅感覚を持っている事から生じる

彼の いらだちなのだけれど、

プロの技と知識を持つタクシードライバーにまじり 

素人のような運転をするタクシードライバーがいる事も

また事実で、

彼が 

タクシードライバーをしかりつける現場に何度か遭遇している私は

ひやひやしてしまう。







私ひとりなら

じっと我慢し 

心の中で下手なドライバーに当たったことを後悔するに留まるのだけれど、

彼は はっきりそれを指摘する。







今夜は

最短距離で走行ルートを指示した彼に対し

タクシードライバーは

その細い道に自転車があると言って

曲ることを躊躇した。







彼は、

自分ならすれすれのタイミングで通過できると踏んでいるで

そのルートを指示したのだ。




話しにならないと思った彼は、

自ら下車して タクシーを誘導した。

ゆっくり曲がり角を曲り終えると

再び彼は 車内に戻る。







彼が こんな誘導をするなど

普通では あり得ない。

だから余計に 

彼はタクシードライバーのプロとしてのテクニック欠如に

苛立ちを感じるのだ。







叱られるタクシードライバーの様子は

恐縮しきっている。

こんな事が 何度かあった。







私にはべた甘な彼なのに、

社会的な男としての彼の シビアさを

私は 他者に対する彼の姿勢から感じさせられる。




どのお店でも 歓迎される彼は、

まずいものはまずいとはっきり板さんに告げるし

美味しい時は 讃辞を惜しまない。

その正直にして的確なジャッジがあるから

彼は尊重され 好かれるのだ。








しかし、彼の押し出しの強さに

一度誰しか接しないタクシードライバーのような人は 

畏怖の念を抱く。

彼の 圧倒的な強さを 私はそこにもみるのだ。









2009年01月16日(金)



 アイラ・モルトのような魅力

好意をいだいているとかいないとかに関係なく

色気のある男性と 色気のない男性の

この差は何なのだろうと たまに思う。







顔のつくりも多少の関係はあるけれど、

もっと別のファクターが 大きく関係しているような気がする。








個人差による好みもあるだろうけれど、

爽やかすぎる男性は あまり色気を感じない。

にこにこ いつも笑っている印象の人にも

あまり色気は感じない。

強いて言えば ビールのような人という感じだろうか。







彼は

例えて言えば 強烈なアイラ・モルトのような魅力を備えている。

それは 圧倒的な強さで 私を包む。









↑エンピツ投票ボタン
My追加


その強さは筋力であり 頭脳であり 

経験から得た知恵によるものだろうと思うけれど、

私には 自分にはない資質故に

強烈に魅かれてしまう。







基本 男は そうであるべきだと

私は思う。





2009年01月15日(木)



 彼の喜ぶ顔が見える気がする。

9/15

米国のサブプライムローンの焦げつきから端を発した

リーマンブラザーズの破綻で

世界同時株安がおこり、

輸出頼みの日本の産業構造にあって

圧倒的な円のカレンシー

ドルにも ユーロにも 一人勝ちの勢いだ。

当然 外需だのみの産業構造の打撃は大きい。







それは 夜の歓楽街にも露骨に表れている。

東京の夜の街に めっきり人がいなくなった。







彼の仕事も それなりに煽りをくらって大変そう。

彼が弱気になっている時、

私には それがすぐわかる。

それはどうしてかといえば、深夜に電話がかかってくるから。







昨夜も

私が深い眠りに落ちたその直後の 二時ころ、

電話がかかってきた。







私は

大抵の場合 夢うつつで聞いているから

一日たつと よく覚えていない。

それは 彼が当たり前のことしか言わないから

というのもある。







あいしてる

大好きだよ

寝ていたんだね いいよあいずちだけでいいからね

聞こえているの?

早く 僕の所においで

愛してるよ







大抵は こんな感じの繰り返しになる。

相手も アルコールがかなり入っていて

平常な声で話してはいるが

多分 よく日の記憶は 定かではないだろうと思う。







決まって 彼から

本当に 彼からしか

電話がかかってこない。

わたしから掛けることが まったくなくなってしまった。







毎日数回

2人を繋ぐ電話が彼からだけかかってくる。






↑エンピツ投票ボタン
My追加


自然にそうなってしまった。








この頃は

会計の様子を 彼は私に隠す事をしなくなった。

二人で夕食をして 一件目のバーに行き

更に仕上げのバーに移動する。

それが私たちの基本の夜のスタイルで

そこに ルーム代が入ることもある。







彼が支払う二人分の夜のお金は、

一晩 五万ではとても納まりきれないことを

私は このごろ知った。

携帯の発信履歴は、ダントツで瑠璃ちゃんに宛てたものだよ

と、彼が言う。

そうだろうと思う。







私は 彼に

平素の感謝の気持ちとして

彼にそぐわしてプレゼントを用意した。

来週それは届くから

彼に こっそり渡したい。







彼の 喜ぶ顔が 見える気がする。






2009年01月14日(水)



 多分私の直感は間違っていない。

彼とお食事をして

いつものように バーに連れて行ってもらう。







バーのドアを押すと

いつものほの暗い空間が広がり

カウンターを照らすようにしつらえられている間接証明の

臙脂色の灯りが 私たちを包み込む。







つい最近の旅行も

年が変わったというだけで

はるか 彼方の出来事にも思える。







あの夜、ずっと腕枕をして抱きしめてくれたね

とか

貴方は 私の歯ブラシを使って平気だったのよ

とか

私たちは 思い出となった一泊旅行を反すうする。







私が 毎朝体温を計っているのも

彼は あの旅行で初めて知った。

驚いていた

と、思う。

私の髪が イオンホットカーラーで巻かれ

あのスタイルを保っている事も

彼には 初めてのことで

やっぱり ちょっと驚きつつ

興味深げに 微笑みながら見ていた。







そんな事を とりとめもなく話していたら

突然 彼がわたしに尋ねる。














↑エンピツ投票ボタン
My追加


彼は

唐突で ごめん

と、言いながら

また 話を旅行に戻した。







私には 彼の思惑が直観される。

それは たぶん

間違っていない。







2009年01月13日(火)



 自立の精神を忘れてしまいそうになる

彼は

私が存在するだけで

それだけで 君は僕の大きな力になってくれている

と、そう言ってくれる。







私にとっても

彼はそのような存在なのだけれど、

彼がいないと

私の持つ世界の 半分程は閉じてしまう。








彼を

彼の存在を知らなかったころは

一つの完成された世界にいたつもりだった。

設計士の彼を失ってはいたけれど、

設計士の彼が

私に 新しい世界を与えてくれた訳ではなかった。

一人で楽しめるものを

二人で共に楽しみ合い、

喜びが2の階乗になる

要は2倍になるだけの事なのだけれど、

私は単なる2倍ではなく

2の階乗だと思っていたのだ。







設計士と一泊旅行を計画していたけれど 叶わなかったし

設計士の事務所に行く事も 私はなかった。

そして

設計士の車の サイドシートに座すことすらなかった。







でも

今の彼は

こともなく それらの私の願いを叶えてくれた。

私がねだったのではない。

彼が 自ら私をそのようなポジションに いざなったのだ。







そして今、

私の立ち入ったことのない

深夜の東京を

六本木を 恵比寿を 麻布を 渋谷を 新宿を

余すところなく 教えてくれる。

今も私は

彼のエスコートなしに

それらの街に 足を踏み入れることは出来ない。

女性一人では

とてもそれらは不似合いで

気おくれしてしまう。







彼の隣にいる 彼のお気に入りの女性として

どこでも遇される。

その心地よさは、誰も私に与えてくれなかった種のものだ。

私の持つ世界の 半分程は閉じてしまうというのは、

その様なことなのだ。







バーで 今夜も彼が言う。

「ほら、同じザクロのカクテルでも、

あの女性たちのグラスと 瑠璃ちゃんのグラスを比べてごらん。

瑠璃ちゃんのグラスの方が、ずっとエレガントだ。」







確かに

脚高の私の ザクロのカクテルと

向かいに座っている女性の 足のないグラスのカクテルでは

その受ける美意識に 格段の差がある。







彼の その種の美意識を

バーテンも知る故に

彼がエスコートする 彼の特別な女性として映っている私に

スペシャルなサービスが提供される。








↑エンピツ投票ボタン
My追加



私の窮地には

さりげなく駆けつけ

私に代わり 敵を追い払ってくれる。

そんな心地よさに

私は 自立の精神を忘れてしまいそうになる。

それが 怖い。












2009年01月12日(月)



 僕と君の姿を映したようなカクテル

彼と共に過ごすバーの

その心地よさは

私が今まで知っていたバーのそれとは

全く異質のものだった。








私は彼のおかげで お酒の味がわかるようになった。







彼と私のお気に入りのバーは 二件に絞られた。

ほかのバーにも行くけれど、

私の好みの甘さと 私が許容するアルコール度数の加減を

知って 

阿吽のブレンドでカクテルをサーブしてくれるお店が

ニ件もできた。







フレッシュフルーツの

とても軽い私のカクテルに

チェイサーが付いてくる。

彼は

ジュースにチェイサーがつくのは瑠璃ちゃんのカクテルだけだ

と、言って笑う。

彼にはジュースでも

私には アルコールの入ったカクテルなのに。







私は 

電話であなたの声を聞くだけで

私の恋心が満足されちゃう

と、彼に伝える。







彼は、

僕はやっぱり こうして生の瑠璃ちゃんがいいな、

瑠璃ちゃんの質感をこうして感じることが

なにより嬉しい。

と、言う。







彼の手元には ベルヴェドールが

私の手元には ラ・フランスとウォッカのカクテルがある。







私は たまに二人のカクテルを写メする。

それを見ている彼が 

私にささやくように言う。






↑エンピツ投票ボタン
My追加







私は

ここに画像を貼りたくて

カクテル画像をたまに写メするのだけれど、

そんな事は彼には言えない。

彼以外の人との恋愛も書いてあるこの場所に

彼を連れてこれる訳がない。








私はメールで

男の子Bクンを呼ぶ。






彼と私の

秘めやかな時間の共犯者として

Bくんほどクレバーな同席者はいない。






傍目には不思議なこの三人の 心地良い関係。

ウオッシュ系のチーズに刺さる フォークだけがそれを知っている。







2009年01月11日(日)



 愛の言葉に、感謝はいらない

私は

彼ととりあうコミュニケーションのうち、

電話で声を聞き その日の彼の感情を読み取り

心がつながっていると確信すれば

結構それで満足してしまう。







要は 私は彼の声を通して愛情確認が出来ればそれでいいのだ。

メールでは 彼の声程の甘さが伝わってこず

その彼の愛情を確認したくて

満足するまで送信してしまう。







彼から電話がかかり

彼の愛の言葉を受けると

私は反射的に ありがとう

と、言ってしまう。







その私の「ありがとう」が

彼には少し 気に入らない。







私のその ありがとうに対して、彼は





↑エンピツ投票ボタン
My追加


と言う。







わたしには、そんなタカピーな反応はとてもできない。

彼はそのくらい気位の高い女性が好きなのだ。

そんなことは、私は彼と接触した初期のころから感じていた。







彼は 私を非常にプライドが高い女性だと言うし、

私もそれを自覚していて

時に自分のそれを持て余す時もある。







それでも彼は

更にその上をいくような 反応を好む。

それは、ひとつ間違えれば厭味な女と紙一重だと思うのだけれど、

愛で満たされている時には

そのくらいの気位の高さが彼には心地いいらしい。







わかっていても、私は今日も彼の愛情表現に対し

ありがとう

と、言ってしまう。






2009年01月10日(土)



 今夜も 電話を 待ちわびる。

結局この日、

彼からは 四回の電話がかかってきた。

二度めにかかった物は 言い忘れた愛の言葉で

三度めは 一日の仕事が終わる安堵に満ちたもの。

そして四度目は

純粋な愛情表現に終始したもの。







彼自身

これは愛のコールだ

と、言うので私は

「あら、それは深夜の帰るコールじゃないの?」

と、言葉を返した。









その私の 半ば照れ隠しの返答に






↑エンピツ投票ボタン
My追加


わたしには

その悲しい言葉の訳が すぐ理解できる。







しかし、彼は言葉を続ける。

「僕たちの関係は、

どちらかが死ぬ事でしか 終わらない。

僕たちに 別離があるとすればそれだけだ。」








わたしはかつて

同じような言葉を Rから聞いた。

Rは

「瑠璃子と結婚できなければ、

一生独身でいるか、死ぬかのどちらかだ。」


そう 私に言ったのだ。

そしてその言葉は、 どちらも偽りのものとなった。







そんなことは

私は今 彼に言う必要はない。

彼はRではないし

私たちの思いは あの時のRとのものとも違う。

でも、

Rの事がなかったら、

私は 今宵の彼の言葉に

おそらく有頂天になったことだろう。







話の中心が愛からずれることのない電話を

彼がかけてくるのは 決まって今頃の時間帯だ。

沢山 いろいろな言葉で

彼は愛情を伝えてくれるのだけれど、

私は 一日たつと その半分以上を忘れてしまう。







アホかと思うけれど、なぜか忘れてしまう。

だからその空白を再び埋めて欲しくて

今夜も 電話を 待ちわびる。





2009年01月09日(金)



 わたしは彼の電話の声色で確信する

年が明けて

年始まわりの挨拶などで忙しいらしい彼は

いつもの生活パタンとは違い

私を戸惑わせる。







年末年始の休暇中、

彼からかかる電話のタイミングは

ことごとく私がうとうとしている昼間の時間帯。

そういう時の彼は

私に睡眠を継続させようと 素早く電話を終わらせる。

そんなことが 何度となく重なって

すっかり 彼の存在が遠いものとなっていた。







私はその没コミュニケーションを危惧して

こころがけて彼に メールを送るのだけれど、

多忙な彼から即答がある訳はない。







そんな日々が二週間ほど続いて

私の胸に 一抹の不安が湧きあがる。

まさかとは思うけれど、

彼は 私との関係に飽きてきた?

だから 没コミュニケーションのような状況でも

平気な訳?







彼に限って そんなことはあり得ないと思う傍から

いや、やはり関係の安定に倦怠感を抱いているのかもねと

真逆な感情が湧きあがる。

これは、たぶんRとの恋愛から私が学んだ保身の術だ。

私から離れることなどある訳がないと確信していたRに

手ひどくしっぺ返しを食らったあの記憶が

私に 男女間に完全な信頼などありえないと

今も釘をさす。







私はメールで

何とか 彼から愛の言葉を引き出そうと腐心する。

でも、一向に彼は その種の感情を吐露しない。

思い余って私は

私のことなど忘れてしまったのかもねー

などと 思ってもいない言葉を一応送信してみる。







余裕がないんだという返信を私に返していた彼から

私が覚醒している時間帯に 

ことし初めてといっていい内容の電話が入る。

彼は言う。

僕が、瑠璃ちゃんを忘れているはずがないだろう。

自分が三人ほしいくらい 忙しかったんだ。

瑠璃ちゃんと過ごす時間を捻出するために

今日も頑張って動き回っているんだよ。







文字でない

感情の抑揚の入った彼の声は

私を安心させるには充分甘く

私のざわついて心を 瞬時に解きほぐす。

じゃあね、また電話するから

それまでいい子でいてねと言いながら

電話を切った彼。







満たされた私の心に

追いうちをかけるように 再び

彼専用の着信音が こだまする。







どうしたんだろう、今 話し終わったばかりなのに。

受話器の向こうで 彼が言う。






↑エンピツ投票ボタン
My追加


私は その言葉を引き出したくて

何度も メールで小細工をしていたのだ。

それでも 反応がなくて

半ば あきらめ忘れかけていた。







「安売りする言葉じゃないだろう」

と、彼は言うけれど

浴びるように その種の言葉を彼から受け続けていた私には

大安売りのように 聞こえなくもない。w







彼に対する信頼は

彼の言葉が運んでくる事を

わたしは彼の電話の声色で確信する。














2009年01月08日(木)
初日 最新 目次 MAIL


My追加