日記帳




2006年09月18日(月) 老兵は死なず

誰かが早送りボタンでも押したんじゃないかと疑ってしまうのですが、しかしそれは濡れ衣というものでして、ただ単に私がサボタージュしていただけなのです。
……ただいま、戻りました。

先日、友人に「アナタには秋か冬のイメージがあるのよね」と言われたのですが、長年の付き合いだけあってなかなか鋭い指摘、だと思います。人々が活動的になる(気がする)夏は、元来低活性な私にはどうにも居心地が悪いようです。これからが、私の季節さ……! とめっきり穏やかになった日差しににんまりしているとか、いないとか。

沈黙している間に、長年の相棒だったポータブルMDプレーヤーが、ついにご臨終なさったのです。振ってみても叩いてみても、ディスクを入れ替えても電池を交換しても、うんともすんとも仰らない。
私の日常は音楽がなくとも支障がありませんが、しかし通勤電車の中では必需品なのです。なにせ電車というものは喧しいもので……などと言い出すと愚痴になるので止めまして(咳払い)……これは困ったと慌ててみるも、折悪しく日々ばたばたしていたもので、新しい相棒を電気屋さんに探しに行く時間がなかなか取れません。何か当面を乗り切る良い手は部屋をぐるり見渡してみれば、ほら。居るじゃあないですか。

年季の入ったウォークマン(カセットテープ式)が。

どれほど旧式かと申しますと、オートリバース機能がついていないのでA面B面は手動で入れ替えなければいけません。ホールド機能なんざも勿論(当然の如く)あるわけがないので、与り知らぬところでボリュームが最大限まで上がっていて飛び上がるほど驚くことにもなります。
あけれども、問題はそんな些細なことではありません。
本体はあれど、再生すべきカセットテープが残っていない。
MDに切り換えた時、思い切って処分したもんなあと溜息を吐きつつ、それでもなんとか見つけ出したのは、もう何年も前に録音しておいたラジオ番組のテープでした。大好きだった番組終了時の、カウントダウン放送三回分。
これは永久保存だと録音したものの、以来一度も聞いたことはありませんでした。放送日時を確かめてみれば、なんと1999年。20世紀末です。前世紀です。……そう書くと、なにやら凄まじいですね。

なぜ聞き直さなかったのかといえば、放送当時に号泣した甘酸っぱい記憶があったからなのですが、しかし時は流れ、切なさは甦るもののもう涙までは流れません。少し目頭は熱くなりましたが。
巻き戻し・早送りだとか、電波の加減で突然「みよーん」と(というか「むにゅーん」というか、まあ表現は何でもいいですが)歪む音だとか、クロスオーバーイレブンだとか、なにもかもが何年ぶりだろうか懐かしいぜ……! と束の間感傷に浸る日々は数日間続いたのでした。

その後、無事に「デジタルメモリオーディオプレーヤー」なるものを入手し、旧き良きウォークマンは再び穏やかな眠りに就いたのであります。
次に再会するのは、新米の相棒が引退する時でしょうか。そして、きっとその時にも現役で働いてくれるに違いないのです。古強者は、頼りになります。

さて、次回は京都の話と東京の話をしようかと思います。






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