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2010年02月22日(月)
だれもしあわせに






だれもしあわせになってはならない
あたしよりもしあわせになってはならない
そこんところだれもが熟知してなくっちゃ
だれもあたしをおいていってはならない

もしもいいことがあったときには黙して
ひた隠しにしてくれなくてはならない
それで悪いことがあったときには
笑い話にして耳打ちしてくれればいい
あたしが泣いていればみんなして
なにをさしおいても寄ってたかって
なぐさめにかけつけてくれなくちゃいけない
5分とかけずに笑わせてくれなくては、だめ

だれもしあわせになってはならない
まずあたしがしあわせでなくてはならない
その為にみんながあたしを囲み
よかったね、よかったねってそれはそれはこころからね
やさしく笑ってくれなくちゃならない
それで、あたしのそばにいるひとたちが
万が一にでも悲しい顔してせっかくの
しあわせな雰囲気をこわしてはならないのだ、から

だれもがしあわせでなくてはならない















2010年02月15日(月)
また春なんですね








雑誌をめくってグラビアを
まんじり、焼酎をくぴりと
そういった夜なんである、言葉と
自分のことなんぞ
考えてたりするのも

何の役にもたたないんである
こんなもん、僕にもとうとう
生活ってのがあって
あるはずで
しなきゃいけないことがあって

こんなことばかり
書いてる暇があるのなら
もっと、役にたつことをしろ
役にたつ
よいことをさ

あ、そうそう少し暖かくなった
こんな夜なんである、けれども
よい言葉、というものをおもうと
その響きや拡がりをおもったりすると
胸がぎゅーっと
ぎゅーーっとなるのであって
涙が滲めば、つーんと焼酎も
鼻の奥に滲んで
目を閉じてしまうもので
しばらくして
また開いて

ああ、このひとは胸がおっきいなあ
美人だなあ















2010年02月08日(月)
じゃぶじゃぶ








ひきずりおろしてやるんだ
空き箱のうえに胸をはって
立っているじぶんをちからまかせに
ひきずりおろしてやるんだ
そのまま地面に叩きふせてやるんだ

服をひきちぎってやるんだ
すっ裸にみっともなくしてやるんだ
暴れるようなら踏んでやるんだ
手荒におとなしくさせたあと
脳みそを取り出してやるんだ
文句言う暇など与えないんだ
素早くやるんだ

蛇口はありったけひねっておくんだ
冷たい水でじゃぶじゃぶと
脳みそをさっぱり洗ってやるんだ
なんたって長く
使ってきたものなんだから
あちこち汚れているのが
当たり前ってものなんだから

たいそうな御託を流してやるんだ
こんなに積みあげてきたんだってとことか
経験や、自信、誇りのあたりを
細かいところにこびりついた
逃げ道になるような言い訳のとこまで
指でこすって
さっぱりきれいに

つるつるのこどもみたいに戻してやるんだ
そしたらやっと
まっさら新しい服を着れるってもんだ
最後にやわらかなタオルを
ばっさばっさとぶつけてやるんだ
その隙間から顔だけだして
ごめんなさいって言えるってもんだ















2010年02月01日(月)
窓につぶやく








こちらの部屋の
窓はとってもおおきい窓
壁いちめんが
窓といってもいいくらいの窓
開放的で景色が良くて
けれどもその風景ごとが
一枚のおおきな
写真が貼られて出来ている窓

あちらの部屋の
窓はとってもちいさい窓
手のひらひとつで
容易く塞がってしまうくらいの窓
けれどもその覗ける景色は
ほんものな世界
遠く夕暮れを
鳥が横切っていくのが見える窓

どちらの部屋に住みたいかといえば
窮屈に感じても
リアルな世界を感じられるほうが
いいかなあと、まず
おもってみたりするけれど

もしも、そのおっきな風景写真を
世界中のひとがみんなして
窓に貼っているとするなら、なんだか
安心するからね
おっきな窓の部屋を
選ぶかもしれないな、と迷ってみている

泡のスプレーをかけて
せっせせっせ、拭きながら