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2009年07月27日(月)
ふうせん、ふたつ








とうさんのせなか
ゆられるうちに
いきている子が
てわたしたふうせんを

うまれなかった子が
うけとって、うれしそう
そらを
はしっていきました














は行のひらがな

ふたつ

浮かんだ











2009年07月20日(月)
おちたよ







なにかおちたよ
おちる音がしたよ
かわいたみじかい音がしたよ
なにかおちたよ
みえなかったっていうひとがいたよ
みたみたっておおきな声のひとも
そうなるのではとおもってたのですっていうひとも

なにかおちたよ
少しずつかたむいていたのかもしれないし
棒がはずれたのかもしれないよ
こわれてたのかもしれないし
それははじめからだったかもしれないよ
どんなふうでも、それは
おちたあとのことだけれど

なにかおちたけれど
おちる音がしたけれど
とても簡単なふうだったよ
簡単なことはなかなか起きないものだけど
起きたらきっとあんなふうでしょう
あぶないなっておもうのか
それともあんしんしたりするのか
ごめんねってみんなおもうのか
おもわないのか

なにかおちたよ
おちる音なんてしなかったよ
なにがおちたのかはわからないけど
だれかだったのかもしれないよ
きっとまだそのへんに
ころがっているよ












2009年07月13日(月)
解釈







『・』




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−





 
 点、中点、小数点、指示点、ピリオド、球体、種子、惑星、毛玉、
 ほくろ、人体の頭部、はずれてしまった釦、目印、卵、伏せ文字、
 雨あがり直前の最後の一滴、沁み、ティスプレイに付いた汚れ、
 もしくは虫、約29日毎に現る新月、最も短い手紙、謎を解く鍵、
 文字化け、インクの擦れてしまった地図記号、一筒牌、敗戦歴、
 フラミンゴの羽根を休めた痕跡、音(休)符の1/2の長さを加える
 付点、もしくは全音符、垂直な直線を上から見た図、名や苗字や
 ミドルネームの区切れ間、体も尾も影も真っ白な猫が片方だけ開
 いてみせた瞳、白紙の反対側から刺し抜かれた針穴、剥がれ落
 ちた記憶の一片、誰にも知られる事なく漏らしたため息、ぽつり、
 完璧な味付けの為に振るわれたスパイスの最後の一粒、の後の
 余計な一粒、恋人が垣間見せたおおよそ1/3の逡巡、ありふれ
 た日常がとある絶望によって転じた風景、結局これはなにか?と
 いう一文字の疑問クエスティオのオ(尾)、時計の針が追い越す事
 のない箇所、始発、同時に終着、病巣、と同義の希望、全方位へ
 茫洋と拡がる永遠の中心に於いて存在を指し示す為の動かざる
 一点、one、これら無作為無際限無遠慮にしておそらく無駄に拡
 大羅列させてみた意味や解釈を表象する文字列全体の縮小図
                                        
                                         』















2009年07月06日(月)
いわゆるなにか





お金が有るからこそ犯す罪
は、勿論
お金が無くて犯す罪に関しても

ワタクシは是までの人生に於いて
一度としてなく
いかほど貧乏だからといって
ゴミ収集場に捨ててあったハンガーを
10本ほど失敬して
ほっほーっと喜んだことはあったとしても(買うと結構高い)

どんなにか粗食が続いても
人様のものに手を出したことなど無いのであって

そんなの当たり前じゃあないか、という世間の声は
この際、無視して
毎日じぶんのアタマを
撫でてやっているのであれば

はて、この左手に持っているモノはなんであろうか?
このボルビックの水とチョコレートは?

高円寺に着いて、ライブ当日のリハーサルに向かう前に
まだ時間あるなー、と余裕顔で
まずコンビニに寄ったわけであって

チョコはこの銘柄に決めてあるから良しとして
さて、エビアンとボルビックは果たしてどうちがうのだろうか、と
おもい悩んでいたところに
メンバーさんからメールがはいったわけであって

―もう、リハはじめますが?
おお、これはいかん!と急いでライブハウスに
向かわねばならなかったのであって

急ぎ足で店を出て走り出そうとしたワタクシが
左手にもったままの
この水のボトルとチョコレートは、はたしてなんであろうか?

商店街の真ん中で立ち止まって考えてみる
会計した覚えのない、水とチョコレート、これはつまり、
慌てて後ろを振り返ってみる、特に追われてはいないようだ、いやだがしかし、
ここで店員に見つかって釈明したところで、ちょっと事務所まで、なんてことになれば
当然リハには間に合わない

人間としてのじぶん、か
表現者としてのじぶん、なのか
どっちだ、おまえはどっちを優先するんだ、と

一瞬間の逡巡のあと
ライブハウスへ駆け出してしまったわたくしの行為は、つまり
いわゆる、万……なにか











(注※ライブ終演後、お店の方には説明と会計を済ませてまいりました)