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双葉ふたば
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2009年05月25日(月)







新宿に着く迄、毎朝
ひとつしかないけれど
渡りきるには
少しだけ間がある
鉄橋の上に電車が差し掛かると

満員の車内のうち
割りと多くの人たちが
顔を上げます
腕も足も、おそらくどんなにか重くても
視線だけは窓から遠く
投げ込むように
水の流れを眺めます

毎朝、ひとつしかないけれど
渡りきるまで、もう少しだけ
間がある鉄橋へと差し掛かったなら
















2009年05月18日(月)
気にするまで







「気にしなくていいぞ」と言われ
なら気にしなくてもいいのかとおもわれ
では気にしないぞとココロにきめ
と、わずか一行ほどの沈黙がそこには現れ

「や、ほんとに気にしなくてよいから」と言われ
「ほんとに」と、もういちど念をおされ
おされてしまうと困ったことに
やはり気にするべきか、と一行ほどの疑惑が持たれ

とはいえ「ほんとか」ともういちど訊くのもかえって
しつこいことのようにおもわれ
相手の顔でおしはかろうと見据え、そこで相手が
目を逸らしたかのように見え、空白が一行ほど生まれ

すわ話題を変えねばとおもわれ
笑顔で話しだしたのもまた、お互いで
「あのさ」と「そういえば」がこれまたかぶさったりなんかして
ここで無駄なゆずりあいが一行ほど起こって

ここらでいいかげん腹を割りたくなって
「あれは気にしないがそれでよいか」と怒るように尋ね
「だから気にするなと言っている」と怒るように返され
とうとう今度こそ、長い沈黙が訪れ














2009年05月11日(月)
長い裾







裾引きずったお婆さん
伸びた裾は長い、ながい

誰かせわしく踏んだあと
引っ張られもせず伸びた裾
改札通って階段降りても
先っぽはまだ駅の外

これはなにかと誰もがおもう
誰もがおもうが分からぬまま
無言の隙間を伸びる裾
伸びゆく隙間も長い、ながい

地下鉄に乗ったお婆さん
席に座って扉が閉まる
はさまり伸びるの止めた裾
出発進行、電車は走るが

電車が走れば裾も走る
裾を踏んでた人達が
一斉にすっ転ぶのを見送って
手を振るようにたなびく裾











2009年05月04日(月)
行ってらっしゃい









悪戯好きなつんでれ魔女に
ブログ更新用の原稿を奪われてしまったふたば。

取り戻すには南の絶海の孤島の断崖に咲く
虹の花を手に入れ、炎の塔の最上階、黄金の扉の魔法を解かねばならぬ。
大急ぎで身支度を整え、横浜港から
ボートを漕ぎ出してはみたものの
次の更新までは僅かに一週間。
果たして無事に荒れ狂う海を渡り指輪の誘惑にも打ち勝って
西の国の軍隊を動かし竜を眠らせ
原稿を取り戻すことができるのか。

続きは、うぇぶで。